僕たちの酒vol.1
僕たちの酒2019-2020BY(R1BY)(注1)ではvol.6からスタートです。もう6本目まで来ました。さて僕たちの酒とはなんでしょう。1年目で造ったvol.1の説明と共に書きたいと思います。
注1)BY・・・Brewery Yearの略 日本語言えば醸造年度です。毎年7/1から翌年の6/30までを言います。
一言で言えば、
蔵人の研究発表
です。
うちの酒蔵はポジティブに自分の夢に向かって卒業していくメンバーも多いです。なので、彼らからしたら、卒業制作になります。
なぜ僕たちの酒を造るに至ったのか、そして僕たちの酒とはどういう立ち位置の商品群なのかまで書こうと思います。
なぜ僕たちの酒を造ったのか
遡ること3年前H29BY。僕が入社したH26BYからの3年間とと大きく変わったことがありました。それは
若い蔵人が複数人入社したこと、しかも3人。
普通の会社では当たり前な出来事なのですが、キャッシュも体力もない、労働時間も長ければ、設備が古いから体力勝負!!みたいな会社からするとありえない出来事だったんです。
当社この出来事を機に客観的に見ても搾った酒を飲んでも、29BY以降で酒質の向上の仕方がぐんと上がったと思ってます。もちろん設備を毎年投資した結果もあるかもしれませんが、この3人の蔵人が複数入ったことがとても大きなターニングポイントでありました。そして彼らは下にも記載しますが、酒造りの探究心がとても旺盛で、彼らに何か還元できないかと思っていました。
そんな矢先に蔵人の一人が
生酛を造りたい
その一言から全てが始まりました。
若い蔵人達はとにかく創作意欲が強いメンバーで住み込みの時に発酵食品を作り出したりと蔵の外でも発酵に取り憑かれてました。
現に彼らのおかげで、その年のお酒は前年度までとは比べ物にならないくらい美味しい酒が出来上がり、いつもよりも早くお酒が売れてました。
就職もありその年でけ抜けるメンバーもいるし、やっぱり蔵から彼らに何か恩返しができないか、、、そう考えてできたお酒が
僕たちの酒です
通常は僕たちはチームで仕事をしています。
原料処理→米麹造り→酒母(シュボ)造り→醪(発酵)
製造の後半に行けば行くほど、判断しなければいけないことが増えるイメージです。
つまり、1番上の醪(発酵)管理の人間は、麹も酒母も原料処理も理解していないと判断ができないということです。(とは言っても元の原料処理が失敗すると他も失敗する可能性が高いので、どこのポジションも大事ではありますが、、)
普段はこのポジションを僕が行っています。
ですが
僕たちの酒は全ての工程を全ての人間が行います。完全に全員野球状態です。
みんなで麹造りを悩み考え、醪管理も悩み考え、、、、
当然僕が責任者だったらこうだよな、ああだよなと言いたいこともありますが、ぐっと我慢し、僕自身も蔵人の一人となって作業を行います。
だから蔵人もこのお酒仕込む時は1年間を振り返る訳です。
そして、
めちゃくちゃ真剣に仕込む!!
びっくりするくらい真剣に仕込む!!
あべシリーズ仕込む時以上に真剣に仕込んでるかもしれません(笑)
それだけめちゃくちゃ自分ごとで酒造りをするわけです。
だから完成した時もみんな自分の宝のように大切にお酒を飲んでます。
そんな蔵人の想いがたっぷりなお酒です!!
記念すべき僕たちの酒vol.1
僕たちの酒を仕込む時は最初にみんなでテーマを決めます。
一発目のテーマは“生酛”(注2)と決まりました。
これは決まったというよりみんながやってみたかったとだったので。
(と簡単に書いてますが、実はもう第一弾は僕と当時蔵人であった、Wakaze フランスの製造責任者の今井さんとの中で決まってましたw)
僕と今井さんは秋田の酒蔵様で研修中に知り合いました。
Wakazeでは自分で何から何までやらないといけないので、当蔵のように全員野球の蔵で少しだけでも働いて、家族経営の酒蔵の地獄を一緒に味わうという名の元当蔵に来ることはわかっていたので、その時に生酛はやりましょうね、と話していたんです。
注2)生酛(キモト)・・育て酛ともいい、乳酸菌の生成する乳酸を酒母中に集積することによって雑菌の増殖を抑制させ、酵母の培養を行う酛。
なんのことだかさっぱりの方は
昔ながらの酵母の培養方法で現代の酵母の培養方法に比べて倍の時間がかかる大変手間のかかる方法くらいで覚えておいてください。
生酛の解説はいろんな方がしているので検索してね。
そして、完成したのがこちら
ラベル完成
酒もみんなで造ったんだからラベルもみんなの顔載せたほうが楽しいし、蔵人の思い出になるだろうと作りました。
<スペック>
僕たちの酒vol.1
Alc 15度
原材料名 米(新潟県産)、米こうじ(新潟県産米)
精米歩合:60%
酒母:生酛造り
酸度:非公開
ここから阿部酒造の生酛ワールドにのめり込み、生酛は2019-2020BY(R1BY)の酒母のうち、実に20%の割合にまで増えてきました。(生酛の魅力はまたの機会に書きたいと思います。)
そんなこんなで始まった僕たちの酒。次はvol.2の解説です。