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神社の作り方

「神社を作りたいんだけどどうしたらいいの?」という質問を受けたことがあります。

神社を作るとはこれまた大層な、と思うんですが、よくよく考えてみれば一昔前までは特別なことではなかったように思います。

神社=神様がお住まいになる建物

であれば、なにも昔からその場所にずーっと建っている「神の社」だけが「神社」ではありません。

会社の屋上などにあるお稲荷さんも立派な神社ですし、山の中にひっそりとある祠も神社。ご自宅にある神棚も「神の社」である以上立派な「神社」なんです。

なので、Amazonとかで売っているこういうもの

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も、中に神さまがお住まいになればあっという間に「神社」になるわけです。

ここまで読んで、ああそうか、そりゃそうだよねと思った方。

大変柔軟なお考えをお持ちの方です。


一方で、いやそうなんだけどなんか釈然としないよね、と思った方。

その疑問はある意味とても正しいと思います。

なぜなら、その疑問の答えこそが「神様のチカラ」の正体だからです。

例えば。

今日、早速Amazonでお宮を買ってそこにお札を入れて「神社」を家の中に置いたけど、家の近くにある「〇〇神社」と比べるとどーも同じ神社だとは思えない。

なぜなのか。

この疑問の答えは

神社が信仰されてきた時間の長さ

です。

ネット販売のお宮を準備して1日間お祀りされた「神社」と
多くの人々が関与し、何百年もの膨大な時間を経て今日まで継承された「神社」では、同じ神社でも、神さまのチカラである「ご神徳」はそれはそれは異なると思います。

ですので、「神社」を作ることはだれにでもすぐにできますが、強いチカラを持つ神さまが住まう「神社」を作ることはなかなか難しいのです。


先日、そのことを強く実感する出来事が起きました。

この前、とある会社の庭の中にある、大きな木のふもとに鎮座する小さなお稲荷さんのお祭りを行ってきました。
このお稲荷さんはトップの写真のお宮よりもかなり小さく、小さい棟札がようやく一つ入るくらいの大変小規模なお稲荷さんでした。

しかし、このお稲荷さんの周りはとてもきれいに掃き清められており、多くの従業員の方々に親しまれていました。

お祭り開始の定刻となり、いつものようにお祓いの言葉を奏上しました。

するとどうでしょう。
いつも唱えている祝詞のはずなのに、たった少しの呼吸でとても通る声で祝詞を奏上することが出来たのです。
一見、なんの変哲もない変化かと思われると思いますが、この心地よい違和感は神職を16年間努めてきて初めての経験です。

神職の私がこう言ってしまうのは何なんですが、私は割とリアリストです。
宗教家ではありますが、オカルトだったり、得体の知れない霊的なものを盲信することはありませんし、何か特別なものを可視化できる能力もありません。また、そういった能力についても懐疑的なスタンスですらあります。

※ただし、説明のつかない現象を科学で証明できるとも思っていませんし、霊視等が出来る能力者は一定数存在するとは思っています。スピリチュアル的なものを全否定または全肯定するものではありません。

この日のこの変化だってたまたま体調が良かったのかもしれません。

しかし…

社長さんにお話を聞くといろんなことが判明しました。
・このお稲荷さんは約200年前に建立された。
・その間、代が変わっても大切にお祭りしてきた。
・自分はお宮の創立者と強い関わりがあると思う。
・お宮の創立者と類似点が多い。

なるほど、社長さんだから商売繁盛のお稲荷さんを大切にされてきたのか、と安易に思いました。

が、

この会社、実はかなり大きい会社で、海外とも取引があり、商売がとてもお上手な企業さんとの評判です。社屋も大変立派で、なんとなく成功してるなーって感じで。。。

しかしながら、こちらの社長さんは大変気さくで、お祭りの準備中も従業員の方々には低姿勢で指示を出していました。そのせいか、従業員の方々とも終始和気あいあいとした雰囲気でした。また自ら荷物を運んだりされて、僅かな時間でしたが大変謙虚な方だと感じました。
そして何より、かなり信心深く、玉串拝礼もとてもご丁寧に祈願されていました。

こういう方って、たった数年でこのような振る舞いを出来るようにはならないのではないでしょうか。
人は一旦成功すると、驕り高ぶり、例え気を付けていても傲慢な態度をとるようになってしまう。少なくとも自分のような未熟者はいとも簡単にそうなっちゃう自信があります(笑)

おそらくですが、この家の方々は、お父さん、おじいさん、曾おじいさん、それまたおじいさんのご先祖さまたちが大切にしてきたことを、脈々と受け継いでこられたのだと思います。

こうやって長い年月を経て、多くの人が関与して出来た「神社」に宿る強いチカラこそが「神様のチカラ」の正体です。

長い間大切にされてきたお稲荷さんには、とても強いチカラ、強いご神徳が備わりました。そしてたまたま、先日のお祭りの際に私はその一端に触れることが出来たのだと思います。


建物としての「神社」を作ることはそんなに難しいことではありません。
現代であれば、規模の差はあれ、思い立った日にでも神社を作ることができます。

しかし、本当に神さまのチカラが宿る神社を作るには、多くの人が関与し、とても長い年月が必要です。

そして神社と作る上で最も大切なこと。

時間や人も大切ですが、最も大切なことは、

作った神社に想いを込めることです。

その想いとは自身の願望や今の世のための願いにあらず。

遠い未来の子孫や関わる人が健やかに暮らせますようにと、祈りを込めて作られた神社はとても強い。

現代人の我々は、知ってか知らずかその恩恵を少なからず享受しているはずです。
遠い祖先の「思いやり」を受け取っているはずです。

今の我々が、満開の桜の下でお花見をすることができるのは、遠い昔のだれかが「ここが桜で埋め尽くされて、みんなが楽しく酒盛りできればいいね」と思って小さい桜の木を植えたはずです。

神社を作るって、そういうことなんじゃないかなー。きっと。


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