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安全管理への道🌈#1


私は消防士になって、これまでたくさんの現場経験を積んできました。
火災、交通事故、水難事故、工事現場事故、山岳事故、自殺現場など。
そんな現場活動には危険が付き物。
そのあらゆる危険を予測して、安全に任務をこなすのが消防士のお仕事です。
消防の世界には「家に帰るまでが仕事」という言葉があるくらい、自分の身を守ることの重要性が強く根付いています。

安全に事故なく活動を終えて帰る、そのために就職後すぐ入る消防学校で安全管理をみっちり学びます。
その手法の一つが
KYT(危険予知トレーニング)
です。

KYTの具体例👇

今回は消防学校で使用する教本から抜粋した初歩のトレーニングをご紹介します。
こちらの画像をご覧ください。

(引用元:消防教科書「安全管理」)


トレーニング方法は簡単です。
1.絵を見て、危険だなと思う点(危険要因)をひたすら挙げる
2.挙げた危険要因のうち、重要だと思われるものをピックアップする
3.ピックアップした危険要因を解決するための対策を考える

以上です!
これを様々なシーンで行うことにより、危険を察知する能力が養われるというものです。

実際に私がこのイラストでトレーニングをするとこんな感じになります👇

手順1.2
・焦って起き上がった際にバランスを崩して転落①
・立ち上がった際に天井に頭部をぶつける
・暗闇かつ寝起きのため2段ベッドから降りる際に足を踏み外し転落する②
・はしごの接続が緩んでいると降りる際に外れる
・暗闇のため降りた際に足を捻る③
・はしごを降りる途中、布団に足を引っ掛け転倒
・靴を履き忘れたまま出ていき、足裏を負傷
(文末に数字がついているものが発生リスク及び危険度が高いためピックアップしたものです)

手順3
①について
・出動時に、まず手すりを掴めるように左向きの姿勢で仮眠に入る
・バランスを崩しても転落しないように壁側によって仮眠を取る

②について
・出動時には、まず電気を点けるように徹底する
・はしごに滑り止めをつける
・確実に手すりをとはしごを掴み、一歩ずつ降りる

③について
・降りる際には着地側の足に一気に全体重をかけるのではなく、足元に危険がないか触れてから体重をかける
・急いで降りることなく一歩ずつ確実に降りていく

このように、どんどんリストアップし、解決策を出していくのです。
もちろん、解決策を挙げた3つ以外の危険要因についても考察してOKです!
より質の高いトレーニングになります。

消防学校では…

本来は5人ほどでチームを編成した上で、それぞれが危険要因を挙げ、そこからチームで重要危険を絞り、解決策をたて、実践するための行動目標を設定するというのが正しいトレーニングですが、
個人でイラストの危険要因を考え、解決策を考察するだけでもトレーニングとしては十分効果があります。

消防学校ではこのトレーニングを現場活動のシーン別でディスカッションを行い、全員で同じレベルの危機察知能力を共有していきます。
初めの頃は、考えつく量も少なければ、考えつくのに時間がかかってしまうのが普通です。

繰り返しトレーニングを積み重ねることで、量も質もスピードも上昇していき、最終的にはイラストをパッと見ただけで、複数の危険要因を想定し、その中で最も危険度の高いものに対する解決策を設定することができるようになります。

この訓練を突き詰めた結果、私は普段の街中でも、危険要因が自然と目につくようになり、予め危険を回避する行動を取るようになりました。
特に、よく感じるのは頭上への意識です。建物に近付くときには落下し得るものがないか確認するという対策を身体で覚えているので、自然と頭上を見上げるようになりました。消防士になっていなければ、このような行動は身に付いていなかったと感じています。

今後について…


今回挙げたのは私が培ってきた安全管理における最も基本となるトレーニングです。
これをやったからといってすぐに習得できるものでもないのが安全管理の難しいところです😓

今後もイラストを挙げてトレーニングを共有していきたいと考えていますし、他にも安全管理に繋がるものはたくさんありますので、随時発信していきたいと思います!

これをきっかけに安全管理に対する意識を少しでも持っていただける方が増えると幸いです。
ひとりひとりが安全管理能力を向上することで、事故の少ない未来が待っていると信じています。

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