見出し画像

ぷちえっち・ぶちえっち29 息子の彼女と初対面

この連載はちょっと笑えるちょっとエッチなエッセイです。今回は「ぶちえっち」編。かなり際どいお話です。


 僕には子どもが3人いる。長女、長男、次男である。それは次男・真二郎が大学1年生の時であった。


 真二郎は生まれてから19年間、一度も彼女はいなかった。顔もまあ十人並みだし、背は185センチ、性格も悪くない。親から見ると、人並みに彼女の一人ぐらいいても良さそうなものなのになあ、と思っていた。


 長男は当時大学4年生。家にはとっかえひっかえ女の子が来て、部屋のドアを閉め切って、よからぬこと(たぶん)をしていた。同じ兄弟でもずいぶんちがうものである。


 当時僕は仕事がめちゃめちゃ忙しく、家に帰るのは大体午前2時くらいであった。その日は珍しく早く終わり、3カ月ぶりに午後10時くらいに家に帰ってきた。


 次男の真二郎にちょっとした用事があり、僕は家に帰ると着替えもそこそこに真二郎の部屋のドアを勢いよく開けた。

そこで事件は起きた。


 「おい、しん……」
 名前を呼びかけて僕は凍り付いた。部屋の中は暗かったが、廊下の明かりで中の様子はよく見えた。なんと、真っ裸の女の子が真正面にいたのである。


 布団に寝転がった真二郎の頭がドアの方向にあり、その真二郎の上に馬乗りになる形で女の子が乗っかっていた。騎乗位での一戦のまっただ中だったのである。僕は19年間彼女なしの真二郎に急に彼女が出来たなんてつゆ知らず、真二郎もまさか僕がこんなに早く帰ってくるとは思いもしなかったに違いない。不幸な事故であった。


 女の子は知らない子だったが、バッチリ目が合ってしまった。まあ、一番かわいそうなのは父親との初対面が真っ裸でその最中、となってしまった彼女であろう。これほど最悪の出会いはない。


 普通は、「キャーッ」と言って慌てて体を丸めて隠したりしそうなモノだが、彼女の反応は違った。無言で両手で顔を覆って隠したのである。おっぱいは丸見えであったが、顔だけは見られたくない、死守する、ととっさに判断したのだろう。


 と長々と書いてきたが、実際は一瞬の出来事であった。僕は


「……じろう」。といいながら、扉を慌てて閉めた。


 真二郎はそれから彼女とはずいぶん長く付き合い、僕と真二郎と彼女の3人でよくごはんを食べたりした。僕たちの間では、暗黙の了解で、
「あの日の出来事はなかったんですよ。そうですよ」。
ということになっていた。


 だが、時々彼女の僕に対する態度が冷たい時があるのである。僕はおやじギャグを連発するのが趣味?だが、何を言っても彼女は、
「あまり面白くないですね」。
とか言うのである。

普通は彼の父親なので、気を使ってちょっとぐらい笑ってくれてもいいだろう。僕のギャグが本当につまらなかったのか、彼女がもともとはっきりしすぎる性格なのか、それとも最初の出会いをまだ根に持っているのか、僕にはわからずじまいであった。


 真二郎が24歳の社会人になり、その彼女と別れて3カ月ぐらいたったときのことである。悲劇は繰り返したのだ。


 家を出て一人暮らしをしている娘が、半年ぶりに突然実家に帰ってきた。僕は自分の部屋で寝ていて、まったく気づいていなかった。


 後で娘に聞いた話によると、久々に真二郎の顔を見ようと思って、部屋のドアを勢いよく開けたそうである。


 「しん……」。
 真二郎は新しくできた彼女と布団の中で抱き合っていたそうである。今回は布団にくるまっており、真っ裸ではなかったのが不幸中の幸いであった。

「……じろう」。娘も何も言わずにドアを閉めてなかったことにした。


 「布団から足が4本も出ていたのでほんとびっくりした。あれ誰なの」。


 娘にそう言われたが僕にもわからない。まだその新しい彼女とは会っていなかった。あの事件以来、僕は子どもたちの部屋を開ける時は、声をかけて向こうから扉を開けるまで待つのが習慣になっていた。


 しかし、真二郎の運のなさよ。一番見られたくない場面を、父親にも、姉にも目撃されるとはなんたることであろうか。真二郎よ、あの事件を教訓に部屋に鍵を付けるくらいのことは出来なかったものか。それとも、オープン過ぎる僕の家のスタイルが悪かったのであろうか。


 二度あることは三度ある、という。次回僕はどんな形で真二郎の新しい彼女と初対面となるのか、ちょっと楽しみでもある。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?