第25回 NHK全国俳句大会観覧メモ
第25回 NHK全国俳句大会に行ってきた。昨年に続き2回目だ。
この大会は基本的には、先生方の選評と受賞者のコメントを聞く会である。単にそれだけなのだが、3万句以上の句から先生方が選んだ一句だけあって、笑って泣ける人間ドラマが生まれる。その感動を味わうのが、この大会の一番の醍醐味だと思う。
なのだが、俳句論や作句の話にももちろん立ち入るので、その部分をメモしておく。
併せて、午前中に開催されたNHK学園の「プレミアム俳句講座」にも参加して、句会形式で木暮陶句郎先生、西村麒麟先生の話も伺えた。そのパートも含めて、印象的だった話をまとめてみる。
プレミアム俳句講座
句会について
句会の選はバラける方がいい。その方が句を読む目が多くなっていると言える
「もっと取りたい」って思えるのがいい句会
全国から参加者が集まる句会は、東京だと見れない句が見れるのがいい
選者は褒められることがない。たまには褒められたい 笑
俳句について
「俳」とは常識を覆すこと。それでいて、自分に引き寄せるのが俳句
俳句はマイナスな内容のことも、季語でプラスにできる。季語で前向きにできる
句作について
意味が重複する部分があると、答えが出てしまったように感じてしまう。そこは省略するといい
忌日季語の距離感は難しい。先生方にも答えがない。「近くないと忌日の意味がない」という先生もいれば、「近づけるな」という先生もいる。「自由にやればいい」と言いたいが、指導上、そうも言えないのが悩ましい
読み手に負担がかかる句は、それだけで取ってもらえないことがあるのでもったいない(メモ:そういう場合、たまたまイメージがついたら取ってもらえるのだろうが、読み手をかなり選ぶのだろう。読者に託す部分を安易に大きくするのは危険)
情報量を減らした方が、読者の想像の負担が減るケースがある
実世界でいい人であるべきでも、俳句の中でいい人である必要はない。そこは別
困ったら語順をひっくり返してみるとよい
魅力的なフレーズには、世界で一つだけの季語を持ってこないといけない。季語を推敲するときは、1つの句だけを見ていてもわからない。数日見ずに寝かせたり、季節が変わるまで置いておくのも有効
セオリーとして、フレーズにこだわりすぎない方がいいが、うまく行くとカッコよく決まるケースもある
推敲について
ひとの句の推敲案は一瞬で思いつく。俳句は即興が大事、推敲においても最初に読んだ時の感動を大事にする
全国俳句大会
季語
「ふきのたう」という季語で平凡が肯定される。平凡だけど、唯一無二であることが肯定される。俳句は平凡を肯定する詩
スケールの大きな風景を、季語を通じて体で感じている
心境や行動の様式が、自然と無縁ではないことを教えてくれた
季語を通じて、文字に書かれていない状況が全部立ってくる
表現
試行錯誤をまったく感じさせない。そうなると、作者の感動がそのまま伝わってくる
ひらがなの中に詠み込みの「平」があることで、「平」の字が効いている
S音だけでなく、濁音も響き合っている
視覚と聴覚を合わせる技術。そこに鎮魂の思いを込めたのが良い
見えないものを実体化させるのは難しい。そういうものを、個性的に上手く訴えて言えてる句は、飛びついて取りたくなる
吾子でなく稚児と客観的になっているのが良い
人名を2つ並べることで、常識を乗り越えた
言ってのけたことに驚きがある
この口語は、本音が出てる感じがしていい
段々気持ちを盛り上げて「かな」で押さえる。そうすると季語に響きが生まれてくる
瞬間を言い留めることが俳句の力の1つ
俳句は瞬間を詠むが、それは長い時間が前提となっているから。これだけの情報でも、それまでの親子の苦しい時間や、それぞれの人生が想像できる
「こうあってほしい」という願いを俳句なら本当のことにできる。それが言葉の力
鑑賞
言葉にすることで限定、固定されてしまうものがある。こういう句は黙ってじっと鑑賞すればよい。じっと味わいたい、大好きな句です
俳句の1つはロマンが裏にあるかどうか。この句は省略が効いていて、夕虹という言葉だけが浮かんでくる。他の言葉が消えて夕虹だけが残る
作者の意図とは違っても、受け取る方が一句から世界を立ち上げてもいい。それだけの力がある句
肉眼の実体験を追体験できるのが俳句のいいところ
今日、先生方も「好き」という言葉をよく仰っていた。全国大会の壇上でそういう言葉が飛び交う俳句という文芸は、素晴らしいなと思う。
来年の大会とプレミアム講座も楽しみです。先生方、運営の皆さま、素晴らしい俳句を作ってくださった皆さま、ありがとうございました!
(おまけ)過去大会のメモ
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