見出し画像

人間関係性を回復したくなる『優秀病棟 素通り科』

舞台の配信を観た。家内がいとうあさこさんのファンで、チケットを買ってくれた。うちでは毎週土曜日に「ラジオのあさこ」が流れている。

楽しい舞台だった。

主役2人の生活場面を面白おかしく再現しながら、感想戦が繰り広げられる。そして「生きるに値する人生とは」という問いが徹頭徹尾、掲げられている。

問いに対する最終的な答えは、そこまで明瞭ではない。勢いで押し切っていると言えるかもしれない。

けれど、それは別に気にならない。僕にとっては、場面場面の味わい深さと、笑いへの昇華のさせ方が、この舞台の一番の魅力だった。

人生のワンシーンを多角的に捉えて、交流することの素晴らしさが全編通じて実演される。僕はこの1年間、ほぼリモートで働き続けているから、「そういやこういうの懐かしいな、いいよなあ」という思いが募った。

コロナ以前の話だけど、後輩に対して「コミュニーションを諦めるな」とフィードバックすることが、この2,3年多かった。

先週、映画『天気の子』を観たときも、映像や音楽の素晴らしさに感嘆しつつも、ストーリーに対しては「大人たちがそれなりに手を差し伸べているのに、子供たちにコミュニケーションを諦めさせないでくれよ」と思った。

コロナ禍に関する僕の懸念の1つは、対面での繋がりが遮断されやすくなることだ。対面で人と接触する機会が減ると、どうしても、自分と異なる視座に触れにくくなる。

結果、コミュニケーション不全に陥る場面が増えるのではないかと危惧している。精神的な孤独感が高まると、アンハッピーな事象が発生しやすい。やっぱり我々には、肉弾戦が必要だと思う。

ということを、この舞台を観ながら考えた。

大学時代、舞台に関する評論とかで「人間性を回復する」みたいな言葉があった。その言葉の意味を当時実感を持って理解することはできなかった。けれど、僕にとって今回の舞台は「コロナ禍で失われる人間関係性を回復したくなる」効果があった。

それくらい観客を作品に引きこむ熟達の演技を見せてくださった役者の皆さま、および緊急事態宣言下にも関わらず準備を積み重ねてくださった劇団の皆さま、ありがとうございました。

こういっちゃなんだけども一番感動したのは、スタンディングオベーションをしている観客さんを観たときだった。

こういう時代こそ、演劇の必要性や力は大きいのかもしれない。
家内任せではなく、自分でも演目を探してみよう。

サポートされた者たちから受け継いだものはさらに『先』に進めなくてはならない!!