アナログバイリンガル【ショートショートnote杯】(2周目)
「感情」の数値化に成功した私は一躍時の人となり、対応に追われ、いつ睡眠や食事をとったのかさえわからない毎日を過ごしていた。
そして気が付けば病院のベッドにいた。過労で倒れたのだ。
妻に懇願された事もあり、しばらく休みをとることにした。
これを機に猫を飼おうという事になり、保護猫の里親になる事に決めた。
そうして我が家にアライグマ似の猫がやってきた。
「アライグマバイリンガル」と駄洒落を云うと、
「ラスカルでしょ」と妻が訂正した。
「バイリンガルってイイ名前だと思う」と半ば冗談で云うと、
「絶対変よ」と妻が反対した。
試しに本人にどちらの名前がいいか聞いてみよう、となった。
「どっちが嬉しいのか数値化できる?」
「このコの場合、尻尾でわかるよ」餌を貰う時に尻尾がわかり易く感情の動きを表していた。
「著名な博士がずいぶんアナログね」と妻が笑う。
「ラスカル?」
「バイリンガル?」
互いに呼びかけてみたが猫の尻尾は微動だにしなかった。
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