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「鉄の骨」嶋野シーン特集

アイドル誌でも「鉄の骨」の話題が出てき始めた。
せっかくなので、ここに、橋本良亮演じる嶋野一郎登場シーンをざっとまとめてみる。
前後のつながり無視、とりあえずセリフだけ集めてみた。

まずは前半から2つのシーン。
基本的に検事が動くのは後半なので、原作では前半は少なめ。

初登場

緊張した面持ちで黒塗りのバンのハンドルを握るのは新米検事の嶋野一郎。

あちゃあ、という嶋野の声がした。
「これでは本物の売り上げや仕入れと混ざってしまって、見分けがつかないですね」
「それが狙いなのかもな」北原はいった。
「しかし、北原さん。三島企画は売り上げ四十億円近いまっとうな会社じゃないですか、そんな会社が城山の裏金作りに協力なんかしますかね」
「する」北原は断じた。

「なるほど」
嶋野は、腑に落ちない顔で何枚にも分かれた書類を眺めたが、どこに目を付ければいいのか見当がつかないようだった。

「少なくとも、三島企画から城山と名の付く個人、会社などへ金が流れた形跡はこの書類を見る限り一切、ありません。さらに、トキワ土建が振り込んだ三百万円がそのまんま、どこかに支払われた痕もない。実際の売り上げに上乗せするとか、そういう巧妙な手段で金を流しているのかも知れません」

「どうします、北原さん」
書類の山の向こうから嶋野がきいた。今年二十七歳になる嶋野は検事になって三年目。大学卒業と同時に司法試験に合格した優秀な男だが、捜査に必要な粘りにはやや欠ける一面がある。
「どうするって、そんなもん続けるに決まってるじゃないか」
そういうと、書類の向こう側から、嶋野の顔がにゅっと出てきた。
「このルート、まだやるんですか」
「当たり前だ」
手許の資料をデスクに叩き付けた北原は、同僚検事を睨み付ける。
「信じる者は救われるってやつだといいんですが」
嘆息まじりに嶋野から出てきた言葉は、徒労感に溢れている。「昨日、新宿駅でそんな聖書の文句を流してたのがいましてね。私も改宗しようかな」

活躍

「いよいよですね」
手ぐすねひいて、嶋野がいう。

「もうワンクッション、パイプ役の会社が挟まっているのかも知れません。もし、このルートが正しいとすればですが」

「これ、ちょっと気になりませんか。回数は少ないんですが、一回数千万円単位の送金がありますよ。ほら--」

「牧場ですよ、これ」
「はあ?」
さすがの北原も素っ頓狂な声を上げた。「牧場? それに何千万円も払っているっていうのかよ」
「馬ですね」
嶋野がモニタを眺めながら、呟くようにいった。「この十勝ファームっていうのは牧場で、競走馬を生産してるんですよ。ここに振り込まれた金は、馬を買う資金です、たぶん」
「呑気に馬主かよ」
北原は呆れ、頭の後ろで手を組んだ。
「総研コンサルタントの社長は競馬が趣味だそうです。ホームページに書いてある」
さっそく調べたことを嶋野が口にした。
「ちきしょう!」
北原が吐き捨てたとき、嶋野がくくっと笑いながらいった。
「シロヤマイチバンなんて馬がいたりして」
「ゼネコンマネーとかな」
北原もヤケクソだ。自分でいっておきながら、ばかばかしくなって、北原は大きなため息をついた。

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