見出し画像

木枯らしも悩んでいる

生まれてこなければよかった人なんてひとりもいないよ、と
冬の高い空みたいに美しく虚ろな綺麗事
必要とされていないことは自分がいちばん分かっている
それでいて僕のかわりはいないってどこかで信じてる

目に見えない痛み抱えている人ばっかりで
そのうちの幾何(いくばく)が僕のせいならばとてもこわい

誰かの命をあたためたい 大丈夫だって包みたい 少しでも力になりたい
それなのに
斬り刻まれそうに冷たい 木枯らしが今日も吹き荒れる このままじゃ何も変わらない
頬に透ける紅(あか)に手を伸ばす


中途半端に寒いだけの日々なんてみんな好きじゃないよ
雪もすぐ解けてしまうし「ずっと一緒」なんて絵空事
忘れられてしまうくらいなら出逢わない方がよかった、と
そう思ってしまう心ごとそもそもなければよかったのに

傷付けた事実は言い訳する余地などなくて
眠れず青い星のおんなじところをぐるぐるする

誰かの未来に寄り添いたい 幸せになると伝えたい できるなら傍で笑いたい
願っても
前後左右から野蛮な 木枯らしが今日も吹き荒れる 永遠に何も変わらない
視界がぼやけては凍りつく


誰かの命をあたためたい 大丈夫だって包みたい 少しでも力になりたい
それなのに
終わりの刹那にふさわしい 木枯らしが今日も吹き荒れる 悩む資格さえもない僕の
かじかんだ爪が宙をうがつ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?