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innocent と言い切るつよさ(ポジティブで語れ)

朝、電車に乗って「うーむ、今日も代わり映えしない混み混みの電車であるな」と思っていたら、目の端に鮮やかな色が飛び込んできた。(正確には、ちょっと目の端あたりをチラチラしてきたというのが本当。ちょっと誇大
表現しちゃいましたすみません。)見渡すと、1車両全部がフルーツと野菜の載った広告でジャックされている。

本来、不穏な感じのオドロオドロした内容の記事で埋め尽くされたり、綺麗なお姉さんが朝から扇情的に微笑んでたりする雑誌の広告があるあたりに、極めて健康的な「カゴに入ったフルーツ達」がプラプラ揺れている。カゴも紙できちんと網網(そんな表現あるのか)になっていて、バスケットに採れたての野菜と果物入ってます!みたいな演出をしている。

それを目撃して、「あら!朝からフレッシュな感じでなんてステキなの〜」と私は幸せな気持ちになったか。否。私のドス黒さがそこでじわじわと出てきたのであります。「きっとまた『現代人にはこれがたりません』『野菜と果物のこの栄養素が○mg入ったサプリメントを飲みましょう!』みたいな、余計なお世話・ありがた迷惑・不安に陥れて購入を煽る戦略のいずれかなんでしょ」と思ったのであります。

そんなうがった見方で、首を動かせる範囲で広告をジロジロ精査(笑)していくと、「いや、ちょっと待てこれは何だか違うみたい……」となった。
だって、「イノセントのスムージーに入っているのはこれだけ。おいしそうでしょう」と、果物たちが並んでいたり、ちっこい野菜と果物がハシゴを登って瓶に突入していく写真の横には「ハシゴは入ってません」とか書いて
ある。「これって……私の大好物なテイストの可能性がある!」と頭の中のセンサーがピコピコ光りだした。さらなる情報を求めてじーーーっと見ていると、やっぱり。イギリスの会社だそうだ。にやにや。

つり革1つ1つにも一言メッセージが書いてある。私のやつは「結構握力、強いんですね」ちょっと!いや、意外と間違ってないけど。隣のおじさんのは「素敵な髪型ですね、今日はお出かけですか」後ろのお姉さんのには「イノセントのスムージーに入っていないもの。はじらい」と。そして、座席の背後にもイギリスのユーモアの「魔の手」は及んでおり、ちょうど人が座るであろう辺りに矢印が「↓」て書いてあって「スマイルシンデレラ専用」「アイディアマンになれる席」とか書いてある!その日のスマイルシンデレラはすんごく尖った茶色い靴を履いた、シュッとしたサラリーマンの男性でした。にっこり笑ってほしい。

車内のモニターでもそのイノセントという会社のスムージーを宣伝していて、スムージーのクイズなるものも脱力度27%くらいでやっている。その中で、バナナの模型みたいのを持って「もしもし」の姿勢を保っているヒゲの外国人のお兄さんの映像が流れた。「え?スムージーの会社だからって、
そんな律儀にバナナまで使って面白くしなくても」と思っていたら、私の
反対側のおじさんのつり革に目を疑う文字が。

バナナフォンにお気軽に電話ください(恋愛相談も可)

バナナフォン?バナナ?フォン?電話?何じゃそりゃ。これは、気になりすぎて出勤するなり、いの一番にPCで検索した結果判明したことだが、どうやらこの会社のいわゆるお客様用フリーダイヤルは「バナナフォン」と呼ばれているらしく、それのイギリス本社のバナナフォンはホントにバナナの形をしているらしい(写真によると)。会社のことは会社、ではなくフルーツ
ガーデンと呼び、東京にできたイノセントジャパン(いやガーデン)には
遊びに行けるとか書いてある。驚愕。通常、新しい物事に躊躇しがちな私であるが、HPを見た瞬間に「好きだ!」と思い、「会社(いやガーデン)に遊びに行く!」と決断したのであります。そのあと、ちゃんと仕事しました。でもHPの感じがツボすぎて、「ひゃっひゃひゃ」と変な笑い方をしている
ところを出勤してきた上司に「だ、大丈夫?どうしたの?」と心配されましたが気にしない。

この会社の広告がいいな〜と思うのは、まず会社の名前がinnocentという
直球ストレートすぎる名前なところだ。いくら100%果物と野菜しか使ってないとはいえ、ある程度大人になると「いや、そんなinnocentだなんて、
わたくしそんな柄じゃないですし、えへへ」と逃げ腰になってしまいそうなものだ。それをinnocent。潔い。

以前、Spring is just around the cornerという言葉が好きということを書いたのだけれど、イギリスの言葉の使い方ってしゃれてるなぁとか、素敵だなぁて思うことが結構ありまして。これは書いたかどうか忘れましたが、スコットランドのエディンバラにある、子供時代博物館というところが好きで。

https://www.edinburghmuseums.org.uk/venue/museum-childhood

以前、ガイドブックを読んだ時には「子供嫌いの当時の市長が作った」と
書いてあったように記憶していて、その事実も「ウヒャヒャ」と大爆笑して大好きだったのですが。その博物館に行った時に、ある展示が準備中だったのであります。3段くらいのガラスのショーケースの中に、茶色いクマの
ぬいぐるみが一体ポツンと置かれていて。ショーケースの上部にコピー用紙がぺらっと貼ってあって。

Please bear until new exhibition will open.
(クマ、と「我慢して待つ」という意味のベアーがかかっている)

だったと思うのだが、そんな言葉がかかっていて。「おおー」と低い声で
唸った記憶がある。そのさりげなさすぎるセンス、ずるい。

もっとも好きだったのは市内のパブの前に掲げられていた立て看板で。

Well behaved (だったかtrainedだったか) children welcome.

まあ、これも内容に賛否あるであろうということは重々承知しているが、
「小さいお子様はお断りします」というネガティブな言い方で断るより
ずっとしゃれていていいじゃないか!!と私なんぞは思うわけなのであるが。逆に変に迎合もしてないし。というか、この文章に対して「ヒャハハ」と笑える余裕を私は無くしたくない。

おバカなことを全力でやる(これは最上級の賛辞です)イギリスの素敵さを
私は非常に愛しているが、イノセントと言い、市井の中でふと目にする言葉って本当に大切だよな〜と思う。と言っても力任せに素敵なことだけを
ワーワー言われると私のような人間はげんなりしてしまうので、「素敵なことを言ってみました。でもそんな自分をちょっと恥ずかしくも思っちゃってます。てへ」くらいのはじらいと自虐がそこはかとなく漂っていてほしい。
わがまま。

最後に、誰も得しない情報:私は来週、イノセントジャパン(いやフルーツ
ガーデン)に遊びに行くのです。バナナフォンあるかな。

2020年1月に追記:HPもさることながら、innocent japanのtwitterも
静かに抱腹絶倒なので、読んで欲しいのであります。


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