見出し画像

まじめなバナナ(innocentの名の下に)

さて、前回予告(?)していた通り、私はinnocent japanの「フルーツ
ガーデン」に潜入してきました。そう、本当に行ったのだ。すごいだろう。しかし、「絶対にバナナフォンとの写真を撮るぞ!」と意気込んでいた私に神は余りにも無慈悲であった。その日は朝から我がiphoneちゃんのご機嫌がすこぶる悪く、「このままでは写真が撮れない!」と危惧した私はinnocentに潜入する前に、apple storeに潜入(というかうなだれながら入店)する
ことに……。心が折れる……。優しいappleの方が(そういえばappleもりんごですね、フルーツつながり。無理矢理?)genius barの予約を入れてくれたが、「フルーツガーデンに行く間の数時間で直ったりして?」という甘い
考えは2秒で打ち砕かれ、夕方遅い時間の予約となった。ありがとう・・
でも悲しい・・写真が・・(涙)。

極度の緊張しいな私は、どうしてもお昼を食べることができず、フルーツ
ガーデンがある場所のすぐそばに行ってからも「どうしよ、あと数十歩
行ったら着いちゃう・・ううぅ。」ともじもじして、電信柱の陰から
フルーツガーデンの建物をチラチラ見たりしていた。単なる不審者である。

意を決して建物に近づくと、入り口に黒板が立っていて「Welcome○○
さん」とチョークで、しかも私の大好きな緑色で!私の名前が書かれて
いて、お花や雲や太陽やフラッグも描かれていた。きゃー。嬉しくて
「ぐわはぁっ」という謎の声を発しながらドアを開けたのであります。
目線の先の壁には「こんにちは」という文字が、白いデイジーの花で作られていて。床には作り物だけれど芝生が敷いてあって、まごうことなき
「ガーデン」である。

予約をするときから対応してくれたTさんという女性が気付いて案内して
くれる。面会室みたいなところに通されるのではなくて、芝生のど真ん中、ソファーが置かれている(周囲ではみなさんがお仕事の真っ最中)ところに!うぅ。緊張する。座ったところで、スムージーを勧めて下さる。私は「グリーン」の味が大好きなのでそれをもらった。緊張のせいで、一口飲むたびに律儀に蓋を締め直す私。Tさんと少しお話をした後で、ガーデン内を案内して下さるというので是非にとお願いした。ついにバナナフォンに
会えるのね!と気持ちが高まる。以下、ちょっと長くなるので、箇条書き
気味にお送りします。実際に行って人それぞれ見るポイントやら、感じる
ことは違うでしょうから、あくまでも私一個人の感想、ということで
よろしくどうぞ。

-受付のカウンターにはWall of Loveという素敵な名前の壁が設けられて
いる。そこは、innocentのスムージーが好きだというファンからのお手紙や絵が飾られていて。几帳面で丁寧な縦書きのお葉書を送ってきてくれた方は、なんとフルーツガーデンを訪問した後に「やはり人間好きなことを
やらなくちゃですね」と言って、お仕事を退職されたらしい。一人のひとの人生も変えちゃうイノセント。

-通常、お偉いさん(幹部)はboard memberと呼ばれるが、本国イギリスのイノセント(フルーツタワーというらしいです)ではbored memberと命名されている。

-日本のフルーツガーデンの社長の愛犬バムさんは、社内で一番の権力者。役職はCFO→Chief “Fluffy” Officer(代表”フワフワ”役)。とても幸運なことに、私が見学させてもらった日にCFOはご在席で、よく眠っていらっしゃった。頭をちょっとなでなでさせて頂き(通常の企業で会長職に相当する方の頭を撫でている、と考えると愉快)「こんにちは〜」とご挨拶する。

-中庭があって、4人がけの木のベンチと机が置いてある。それを取り囲む
フェンスにもグリーンを育てているそうだが、向かって左側は植物が全滅
してフェンスがむき出しになっていて、右側だけなぜかもさもさ生えて
いる。日当たりの関係らしい。イギリス人の社員Rさん(だったかな)は
ここがお気に入りすぎて、雨の日でもフードをかぶってここでご飯を食べたりしているらしい。イギリス人の庭愛たるや。

-フルーツガーデンは、入り口のそばに3つの入口表示がある。1つはhuman向け。1つはsheep向け。そしてもう1つはthief向け(笑)。どうしてsheepなのかな?と思っていたら、本国のフルーツタワーには、sheepさん(置き物)が本当にいるそうな。見学に行った際それを気に入った日本の代表が「ぜひ!」と持って帰ろうとしたのだが誰のスーツケースにも空きがなかったので泣く泣く諦め、「いつか本当に来た時のために」とsheepさん用の
入口だけは作ってお待ちしているんだとか。

-壁には働いている人たち全員の赤ちゃんの頃の写真が飾ってある。肩書きなどに左右されず、フラットな関係性で働こうという社の理念を表しているのだそう。赤ちゃんの頃というのは、上も下もない。みんなが同じ。その頃のことを思いながら、よい関係性で働こうという考え方の象徴。所々白黒の写真が混ざっていて、「時代がバレちゃう人もいます」とTさん。

-中庭のグリーンのお世話を担当しているKさんは、ガーデンのあちこちに
ポジティブなメッセージをこっそり貼るということもしているらしい。
キッチンの引き出しに潜んでいるのを1つ見せてもらったが、社員の机に
こっそり貼られていることもあって、気が抜けないらしい。全部を見つけた人はまだいない。

-2つある会議室にも名前がそれぞれついている。1部屋目は「いちばん
いちご」これは、本国の社長(ちなみに本国の取締役は、Chief Squeeze Officer→代表取「絞り」役)だったか、英国人のRさんだったかが一番初めに覚えた日本語が「いちばん」だったから。それにフルーツのいちごと
「一期一会」の「いちご」がかかっている深い意味があるんだそう。
2部屋目は「John Lemmon」。えーと、説明は不要かと。こじんまりした
部屋で、初めの頃は卓球台を打ち合わせテーブル(ping pong “table”ゆえに)にしていたそう。

-ヤ○ト運輸の方が集荷にやってくる。何人かでイノセントを担当しているそうで、やってくると、社員の方に「冷蔵庫から好きなスムージー持ってってください!」と言われるのを楽しみにしているらしい。ちなみに、私が
いた間に来たお兄さんが選んだのはイチゴ。その日、荷物はなかったけど、ニコニコしながら帰って行った。

-働いている人たちは、それぞれユニークな肩書きを持っている。ボトルに書いてあるメッセージや、電車の広告のユーモアのセンスが好きだったので、それを担当している方に会えたのはとても幸せ。その方の肩書きはstory teller。きゃー。ステキ。

-フルーツガーデンの壁にイノセント(本国)設立から2019年までの歩みが年表にして貼られている。それを見ながらTさんに解説をしてもらったのだが、日本での第1号スムージーはマンゴー。工場で出来上がったばかりの
ボトルを持って、さながら手タレのように写っているのはRさん。彼は
通常、私のように説明を受けているドリンカーさん(イノセントでは消費者のことをこう呼ぶそうです)がいると「これ、俺の手!同じ感じに持ってるところ写真撮る?」と言って、わざわざマンゴーのボトルを持って近づいてくるらしい。残念ながら今回は会えず。

-冬になると、ボトルにニットで編んだ帽子をかぶせるBig knitというプロ
ジェクトを行う。本国イギリスでは、ボランティアの方々、特にばあちゃんたちにお願いすると、異様な(いや、もちろんいい意味です)プロ精神を
発揮して、高度で複雑な図柄のものをどしどし作ってくれる。それをかぶせたボトルを通常より少し高めの値段設定にして、出た利益をチャリテイーに
回しているんだとか。自分の編んだ大量のknit編みぐるみに埋もれている
ばあちゃんの誇らしげな顔の写真が飾ってあった。その内、自分まで編み
こまないことを祈る。

<少しまじめな話など>

そして遂に私の憧れのバナナフォンとご対面!あはは〜。ホントにバナナの形してる〜。なんとTさんはバナナフォンの担当だそうで、根掘り葉掘り
これまで以上の食いつきでお話を伺う。

バナナフォンにかけてくる人は意外に男性が多いらしい。そうよね〜
やっぱり、かけてみたいわよね〜。でも私は一応女性なんですけど、めちゃくちゃかけてみたい(というか、実物を見たい方か……)のはナゼなの。

1) 大学生で就活中→周りもがんばっているから弱音を吐けない。親には心配をかけてしまうから言えない。

2) 高校生(これは女子だったかも?)→好きな子に声をかけて仲良くなり
たいけどチャンスがない。好きな趣味の話も少しジャンルが違うから言い
にくいし……。

3) スムージーを気に入ったおじいちゃん→老人クラブでもらって飲んだら
美味しかったんだけど、どこで買えるのかなぁ?

商品の問い合わせなどだけでなく、なかなかに「深い」「踏み込んだ」内容が多いということに驚く。バナナフォン、とっても大事な役割を果たして
いるんじゃないだろうか?今や、誰とでも繋がっているし、言ったら世界の人も簡単に繋がれる。でも「物理的に」つながるってことと、「精神的に」つながるってことは必ずしもイコールじゃない。数え切れない人や、親しい友人と「ほとんど常に繋がっている」かに見える人たちが、「相談できる
相手」がバナナフォンだけだなんて。

でも、これまでにも何度か書いているけれど、今って、男性たちが何だか
苦しそうに生きているような気がしてならない。もちろん、女性たちだってお仕事して、お家のことやって、子供を育てて、とがんばっている。それは本当。でもなんだろう、思ってることや感じていることを言葉にして外に
出すことがどちらかというと得意な女性に対して、男性たちはどちらかと
いうと「我慢してしまう」「自分の中にしまってしまう」気がしていて。
特に最近は。

混んでいる電車でゲームとかしている男性を見ると「今やらなくてもいいんじゃないかな〜」て思うのだけれど、そういう息抜きの仕方しかできないのだとすると、とても気の毒だ。だからきっとバナナフォンは、そんな男性
たちの味方になるんじゃないだろうか。自分のことを知らない人(この場合は果物)でないと言えないことってきっと誰にでもある。Tさんの話を
聞いている限り、マニュアルに固定された四角四面の回答はしていない。「個」としてお話を聞いているし、お返事しているのだろうなって感じる。

そうそう、笑ってしまったのだけれど、ある社員さんの旦那さんが
イノセントの大ファンらしくて。「こう言う味のスムージーあったらいいな〜」という提案を色々考えてくれるんだとか。それを奥さんに伝えるのかと思いきや「いや、バナナフォンに電話するわ」っていうんだそうな。
わはは。直接奥さんに言ったほうが早いのに!かけたいんですよね。

でも救いがあるとすると、バナナフォンにかけてくるということは、どこかで広告やらSNSを見ているってことで。ずっと下を向いて電車に揺られて
いるだけじゃないんだなあって。それはよかった。バナナフォンに目が
留まるアンテナがぴん!て立っていて。

<もう1つのまじめな話>

Tさんによると、ここのところの何度かの台風と川の氾濫で、果物農家さんにも被害がたくさん出ているのだという。あるりんご農家さんからもらったという、完全には育ちきってない状態のりんごがバスケットに幾つか入っていて。木そのものがダメになっているから「長野のりんご」と地域の名前をつけたりんごを今後売ることができなくなるかもしれないと聞かされたの
だとか。イノセントとしても何かできることがないか、これから考えていくそうだ。全てのことはどこかできっと繋がっているんだな。

通勤の電車でたまたま目にした広告で、「会社に行ってみよ」と後先考えずに訪問した私だったがたくさん発見があった。ユーモアを維持しつつ
ちゃんと「やることやって」ないと、旬があって、こうやって自然に大きく左右される果物を安定して入手することなんてできないし、ドリンカー達に届けることだって到底できない。愉快さってまじめさだし、大人の真剣さ
・本気度なんだと思う。

我がiphoneちゃんは完全にヘソを曲げて私の勇姿withバナナフォンを収めるつもりは全くないみたいだったので、Tさんにお願いして撮ってもらった。夢が叶ったぞ。次は「バナナフォンをかける人」になってみたい。

でも問題が1つあって。目下、相談したい悩みがないのだ。仕方ないので
「こんな味のスムージー飲みたい!」を妄想して「もしもしバナナさん?」とかけることにする。Tさんには声がバレているので、声音を変える練習から始めなくては。

ちょっとした余談:フルーツガーデン訪問は、事前にバナナフォンに予約を入れたほうが確実かもしれません。もちろんメールでもいいでしょうけど。私は実は2度空気を読まない突撃をしてしまい、危うくthief entranceから
入った人みたいになりかけるところだったので。


もしサポート頂けたら、ユニークな人々と出会うべくあちこち出歩きます。そうしてまたnoteでご紹介します。