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見る ことと 見える こと ①

Dialogue in the Darkに参加したこと・思い出すイギリスでのこと
(書き終わらないまま2020年に突入しちゃいましたので、文中、ちょっと
あれ?なところもありますがお許しを)


無事に2019年の仕事を納め、「ふひ〜やれやれ」と安堵した私は、
そのままゴロゴロ生活に突入!というのがこれまでの年末の一連の流れで
ありましたが、今年はちょっと毛色が違ったのであった。仕事納めの次の日にも「年末年始の片付け・準備」以外のことで外に出る、という快挙すぎる
行動に出たのでありました。あー、めずらし。まだ2019年は終わらない。

それは12月29日。殺気立っているであろうデパート地下のお菓子売り場
(ほら、帰省する方がご実家やらご親戚やらに配るらしいお菓子を買い求めて鬼の形相になるあの場所)おせち関連、スーパーのあちこちには一切
近づきたくない、年の瀬っていうやつでした。

メインの用事は夕方からなのだが、お昼に、以前から行ってみたかった
古民家一軒家のご飯屋さんにいそいそと出かけていく。その日がちょうど
こちらも年内最後の営業ということで、大変賑わっている。しかし、周りの人の話し声が「ぽわぽわぽわぽわーん」と古い梁の間に消えていくので全く気にならない。ああ、なんたる居心地の良さ。

こじんまりした桐(だったか)のお重に乗せられたお膳は丁寧に作られた
味がして気分がよくなりすぎた私は「もうここに住んでいる気分」と
のたまい、向かい側に座る友人も「もう気持ちは住んでるでしょ。
後は物理的にどう住むかの問題だけ」とお店の人にとったら不可解極まり
ない妄想(でもないもん)の話をしながら楽しく食べる。

ご飯を食べている時に、お日さまがぽかぽか照っている縁側を丸っこい
おしりが歩いて行った。そのおしりは、縁側の隅っこに設けられている
らしい「ごはんここですよ、どうぞ」エリアにのっこのっこと歩いて
行って、数分間我々にその宇宙的に完全な曲線を見せ続けていた。ちなみに、そのおしりの主は茶色と焦げ茶色、白のシマシマな動物で、又の名を
「ねこ」という。
非常にいい。よすぎるお昼時間である。

しあわせなお昼の説明が長くなったが、いよいよDialogue in the Dark
潜入する。これは、ドイツで始まった試みで、光が一切入らない全くの
暗闇の中を、暗闇が「日常」である視覚障害を持った方がガイドしてくれて
室内を探索するというもの。数年前から存在は知っていて興味はあったのだが、これまでは開催期間が決められていていつもチャンスを逃していたのだ。常設の会場が国立競技場の前にできたので「今度こそ!」と意を決して
年末に突入することにしたのである。うー、緊張とわくわくと。

実際に体験して自分が感じることが全てだと思うので、内容については殆ど
書かないことにします。でも、なんというか、面白すぎたのであります。

1日の内に数回プログラムが組まれていて、事前にいずれかの回を選んで予約
しておきます。1回に8人までが登録でき、グループ単位で申し込んでいない場合は、別の数人(自分が2名で申し込んだ場合は他の6名)とは当日の集合時間に初めてご対面、となるのです。「わたし人見知りだし〜」とか言っている場合ではありません。

暗闇の中、確かにガイドとして付いて下さるスタッフはいますが、出口に
たどり着くまで(イメージとしてはいくつかの種類の異なる部屋をめぐって出口に到達する、迷わせることが目的ではない緩やかな迷路のような)
同じグループの人達と声をかけあい、協力しあって幾多の困難を(ちょっとドラマチックに書きすぎ)乗り越えなくてはならないのです。

出発前、各々に白杖が渡される。へぇ〜、これってこんなに軽いものだったのか。持ち方をレクチャーされて、暗闇で何か物を発見した時はそのまま
手を突き出すのではなくて、手の「甲で」撫でて確認すると怪我したり
しにくいです、と教えてもらう。ほほほ〜う。なるほど。担当のガイドの
Kさんがつけているアナログの時計は、蓋がぱかっと開く。
指先でそうっと針の位置を確認して今が何時かを知るんだそう。
ほほほ〜う。すごい。

ツアーが終わると、徐々に明るさに目を慣らすための小部屋でそれぞれ一言ずつ感想などを言い合う。暗いからすごく慎重になる、という意見と共に、全くの暗闇(目をつぶっても開けても暗い。当たり前だが)で私が手に
入れたのは、意外にも「完全なる自由」だった。

もちろん何が待ち受けているかわからんので、若干の不安はあったのです。
しかし、白杖を自分の少し前に持って、物がないかカツカツ確認しながら
こわごわ進んでいるうちに、杖に何かが当たったのを「何かある!怖い」
ではなくて、「何かある!何だろうこれ!」とがつがついくようになった
自分に気づいたのです。予想よりも大きなものに遭遇したらそれに抱きつき
「あっはー」と笑う。

ゴワゴワした手触りを確認し、自分の足元にあるカサコソ音を立てるものをしゃくしゃく踏みしめて。ちょっと広い空間に出たな?と思ったら、もはや杖を使わずに「ここがまっすぐ」と信じた方向をひたすら進むのみ。
「ん?ここになんか枯葉かな?カサコソしたのがあるぞー」
(暗闇なので、何かを発見した時にもグループの他の人に声をかけて
情報共有するのです)と伝えたら、ガイドのKさんに「えーと、それはね、ちょっとさっき片付けたやつだから……」と言われる始末。
どうやらのびのび進みすぎた模様。あはは。

イギリスで遭遇した、私の考え方を根底から覆した経験についても
書こうと思ったのですが、長くなりすぎるので、次号(?)に
つづく〜。

もしサポート頂けたら、ユニークな人々と出会うべくあちこち出歩きます。そうしてまたnoteでご紹介します。