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やわらかいうさぎはおどるのか

先日観た映画「ジョジョ・ラビット」のことを綴ります。ジョジョ!
(もしこれからご覧になる予定がある方は少々ご注意ください)

ジョジョ・ラビットは強烈に私のことを呼んでいた。

変な誤解を招きたくないのだが書くと、私は昔からヒトラーやらナチズム
というものに関する映画・本・コラムなどなどに遭遇すると、
「なんでこんなことになってしまうのだ」とか「人間の心理って……」と
思ってしまい、どうしても見ないで通り過ぎることができない。

怖いもの見たさ、というのともちょっと違う。不気味なこと、怖いこと
理解不能な難しいことは、その対象物にジリジリ近寄って行って
「どゆこと?」と解明・理解したいという気持ちになってしまうのである。
だから、普通、人は「あの人きらい」とか「あの人、なんかやな感じ」
みたいなことがあると、距離を置いたり交流を絶ったりするものだと思うが
私は「何なんだ?」となって、ずずいと近寄って観察・分析しようとしては
バッサリ斬り落とされたりしている。しかし改善されない、この性質。
ま、もう仕方ないっすわ。ということで、気になることがあったらこれからもどんどん「ずずい〜」と近接していくのであります。という宣言。

さて、無駄な前置きが長くなったが、ジョジョ・ラビット。ジョジョという10歳の少年が、ヒトラーを崇拝する盲目的な青少年を養成するための団体
「ヒトラー・ユーゲント」に入隊することから始まる。本来、彼は心優しい
フツーの少年なのだが、かっちょいいこと=マッチョな思想を持つことと
思い込んでいる。しかし、本来の優しさ=弱さであると嘲笑する先輩将校
から「強さを示すために、このうさぎを殺せ」と言われたのに一瞬の躊躇を見せたことから「ジョジョ・ラビット」という屈辱的な(いや可愛いけど)
名前を頂戴してしまう。彼はそんな自分の弱さが許せない。その心を
勇気付け「鼓舞」(実際は混乱させ、悪魔のささやきをする)しようとする
アドルフ(言うまでもなく、あのヒトラーの分身。監督自らが演じているが
ちょっと面長であるものの、そっくりすぎて怖い)に焚き付けられ、
みんなの前で手榴弾を投げるという「かっこいい」ところを見せようと
して、それが暴発し、顔に跡の残る傷を負ってしまう。

その怪我が元で「前線」で訓練を受けることができなくなったジョジョは
「事務作業」の仕事を手にすることになる。「かっちょいい」ものではない
(彼が思うところの「国にダイレクトに貢献している」という意味で)仕事
をなんとなくこなしていくジョジョだが、彼の家の隠し部屋にはなんと、
彼が最も忌み嫌っている(そう信じ込まされている)ユダヤ人の女の子が
匿われて(しかも彼が大好きな自分のママによって秘密裏に)いたのだ。

その秘密に気づいた彼は、当然ながら混乱する。しかし、咄嗟にゲシュタポに彼女を突き出すことはしなかった(彼の深層での逡巡か?)。それどころか、日々その女の子と、ママに内緒で交流していく内に(その目的はユダヤ人の情報を聞きだして壊滅させるため、ではあるのだが)淡い気持ちまで
生まれ始めてしまう。

この物語はもちろん、「寛容」やら「違いを違いのままに受け入れることの必要性」やらといった大事なメッセージが込められているのだと思う。
今の世界のあちこちで漂っているなんだかギスギスした潮流に
「ほんとにそれでいいのかよ?」という疑問を投げかけているとも言える。ユーモアという、最高に笑えるそして最も高度な方法で。

でも私はもっともっと純粋に、

・自分以外の誰かのために走り始めた時、人は星になる
・生を終えるその最後の瞬間に初めて「本当にいい人」かどうかはわかる

という感想を抱いた。ユダヤ人の少女エルサを励まそうとジョジョが書く
彼女の婚約者からの創作の手紙、上手に結べないからといつも甘えて
ママに結んでもらっていた靴ひもを、ママのためにぎこちない手で必死に
結ぼうとするジョジョ。嘘だと知りつつもジョジョの優しさが嬉しくて
その手紙に喜ぶ「フリ」をしてあげるエルサ。

クレンツェンドルフ大尉には心底、ぐっっっっっ(っが多いけど、それだけ
強い気持ちだってことなのだ)ときた。「ライフ・イズ・ビューティフル」の最後、父さん役のロベルト・ベニーニが息子との約束事を守り通して
滑稽な身振り手振りで笑顔で去っていく、あの場面にも匹敵する彼の最期。
いや、あのですね。普段ヘラヘラしてたっていいんです。いつも職務に忠実でニッコリ笑顔がサイキョーーーーに怖い(涙)ディエルツ大尉みたいじゃ
ない、クレンツェンドルフ大尉の方が何億倍も好きだ。普段はお酒飲んで
制服は着崩し、だらしないけども。

ナウシカの最後の場面で、ナウシカが死んでしまったと
泣きじゃくる風の谷の子供達に向けてババ様が呟くでしょう。
「あの子は谷を守ったのじゃ」って。
それと同じ感じ。
「クレンツェンドルフ大尉はジョジョを(あと彼のママの名誉も)
守ったのじゃ」て。あの場面にグッとこない人とはお友達になれません。

いろいろと書きなぐってきましたが、最後にひとつだけ。

ヨーキー(ジョジョの親友)もサイコー❤︎

ぽっちゃり男子好きとしては、「監督!わかってはる!」とふがふが言ってましたもんね。観ながら。彼はぽんやりしているようで、世界のことを
ちゃんと多面的に(本人はおそらく無自覚のまま)見ているのである。
アメリカが侵攻してくるってなって、ドイツの街が混乱している時、
ジョジョはボロボロの軍服で戦っているヨーキーに再会します。
彼は「ママに会いたいよ。ハグしてもらいたい」ていうのです。
10歳半のぽっちゃりした男子の当たり前の感想。やっぱりハグは
素晴らしいのであります。

あと3回はみよーーーっと。

もしサポート頂けたら、ユニークな人々と出会うべくあちこち出歩きます。そうしてまたnoteでご紹介します。