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ギャラリー,イベントで出逢った作品

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偶然の出逢いも含めた、ギャラリーやイベントで出逢った作品たちを紹介した記事をまとめたマガジンです。
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#芸術

深い青色,画面から広がる宇宙 -伊藤咲穂[BEGINNING of WORSHIP ‒ First Beheld the Blue ‒]

 伊藤 咲穂 個展「BEGINNING of WORSHIP ‒ First Beheld the Blue ‒」@ Tokyo International Gallery(天王洲)(-2024.5.18) 「青色」の世界へ  作品はすべて青色。白い空間に、青い窓が開いているようにも見える。   距離、角度、光で表情を変える  「⾃⾝で研究を重ねた独⾃の漉き⽅によって⽣まれる錆和紙により、⾃然を想起させる⾊鮮やかな作品を制作する」と、さきの説明にあった。その制作手法

ぬくもりの残る抽象 -[ブランクーシ 本質を象る]@アーティゾン美術館

 コンスタンティン・ブランクーシの「創作活動の全体を美術館で紹介する、日本で初めての」展覧会@アーティゾン美術館。  わたしのなかでブランクーシといえば、アーティゾン美術館に常設されている「接吻」。  年パスがあることもあって、すでに何度か訪れた。 形成期、すべらかな彫刻  展覧会は7つのキーワードで展開していく。まず、若き時代の作品。 「接吻」のあたたかさ  若い頃の作品から、鑑賞していて癒されるような、やさしい雰囲気を感じていた。それは、直彫りに制作手法が変わ

ラ・フォル・ジュルネ初日 -熱狂の祭典,音の表情

「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」5/3-5/5、その初日。 ピアノバーの衝撃 生音が聴きたくて  このイベントのことは、友人から聞いて知った。きっかけは、赤坂のピアノバーだ。  あるきっかけで、グランドピアノが置いてあり、客が自由に弾くことのでできるピアノバーで仲間たちと夜を過ごした。わたしは楽器は全くできないのだけど、耳コピで何でも弾ける才を持つ人と、クラシックピアノに優れた2人のピアニストが交互に演奏し…ピアノの目の前のカウンターで聴いていたわたしは、生音の魅力

エネルギー,脱皮 -宮本果林 作陶展 [con anima]@銀座 蔦屋書店

 銀座 蔦屋書店で出会った、笠間焼の動物たち。  目を引かれるのは、まるで亀裂のような、その表面だ。 陶の動物に感じる生命、躍動感  彼らのポーズと相まって、非常に大きなエネルギーを内部に得た犀と牡牛が、自らの皮を破り、大きく成長していくような躍動を感じる。  どのように制作されたものなのか? 興味が抑えられなくなってくる。 “心、魂を込めて、生き生きと”  作家による、ステートメント。  “裂文”という手法は、はじめて知った。  最後のところで作家は手を放し

アートによる刺激の面白さ -荒木由香里[Talkative happy colors]@銀座 蔦屋書店

 日曜日の銀座、歩行者天国。 荒木由香里 個展「Talkative happy colors」@銀座 蔦屋書店 インフォメーションカウンター前 (- 02/16) へ。  展示の中で特に目を引いたのは、3足並んだ赤いハイヒール。  近寄って覗き込んでみれば、  そこにはさまざまな物たちが、挿し込まれている。 作家のステートメント  後になってステートメントを読み「なるほど」となったのだけど、わたしが連想したのはこんなことだ。 思わず靴を擬人化して  ハイヒ

即興,インスタレーション -田中泯×名和晃平 初コラボ[彼岸より]@YCC県民文化ホール

 1月11日、甲府駅。  彫刻家の名和晃平、舞踏家の田中泯との初のコラボレーション舞台が、YCC県民文化ホール(山梨県民文化ホール)で開催されると知り、チケットを入手して心待ちにしていた。 名和晃平×田中泯、初のコラボ タイトルは、『彼岸より』。 舞踏?インスタレーション? 一切の予備知識なくして、まずは鑑賞することにしていた。  舞台構成は、かなりシンプルだ。舞台向かって左手に、一本のポールのようなもの(山?山と横向きの人間を象った何か? にも見えたりする)が置かれ

"物語"の続き -[第八次椿会 あたらしい世界“ただ,いま,ここ”]@資生堂ギャラリー 銀座

「第八次椿会 あたらしい世界“ただ、いま、ここ”」@資生堂ギャラリー 銀座。  まず「椿会」とは、ということから。 シーズン3からの”ドラマ” afterコロナの「あたらしい世界」についての3年目の展示ということで、あたかも連続ドラマのシーズン1と2は概要だけ読み、シーズン3を観てみました、という状態になった。  とても練り込まれた企画展、ということは(たぶん)感じることはできつつも、理解がほぼ追いついていない。  資料は、公式サイトで公開されている「展示作品について

Ecology: Dialogue on Circulations Dialogue 1 [La Vita Nuova]崔在銀 展@GINZA MAISON HERMÈS

 11月某日、銀座。  GINZA MAISON HERMÈSで開催の展覧会へ。  インスタレーション作品を中心に、紹介していきたい。 大地からの返信 コンセプトありきの作品なので、説明文を先に。  埋め続けることによって生まれる「対話」。 White Death 次の展示室に入れば、  展示室に敷き詰められた、今は生命を失った珊瑚。  文脈は全く異なるのだけど、この展示は、森美術館で開催中の展覧会にある、帆立貝が一面に敷き詰められた空間を思い起こさせる。(本作

数の迷宮を彷徨う -宮島達男[Life Face on Gold]@AkioNagasawaGalleryGinza

 アーティスト宮島達男作品といえば、忘れえない直島の「家プロジェクト」。デジタルカウンターが時を刻み続ける、静寂の世界。  銀座で、一味違った宮島作品の展示が行われていると知り、足を運んだ。  実は、行ってみた日は残念ながらタイミングが合わず、  日を改めて再び。  訊ねた時間にはほかの鑑賞者はおらず、撮影OKとのことだったので、ゆっくりと鑑賞し、撮影し、という贅沢な時間を過ごさせていただいた。 「動かない」宮島作品  Life Face on Gold@ Aki

ただ力強く美しく-飯沼英樹 新作展[VR/XR]@銀座 蔦屋書店

 飯沼英樹 新作展「VR/XR」@銀座 蔦屋書店 (- 11/24)。 Vision Proにインスパイアされて  新作のシリーズを観ていく。  アーティストのステートメントを。  なにしろ、作品は「木彫り」なのだ。それも、(おそらくあえて?)粗く仕上げている部分がある。ステートメントのなかの「アンチテーゼ」という言葉と、ひょいと繋がってくる感覚もある。  高さは50㎝程度、価格は35~45万円というところだ。非常に心が動いてドキドキする作品があったが、やはり売約

壮大な絵巻物の中で [西田俊英ー不死鳥]@武蔵野美術大学 美術館・図書館(11/19)

「西田俊英ー不死鳥」@武蔵野美術大学 美術館・図書館(11/19)。 「観にいかなければ」  本展のことを知ったのは、ACKの会場だったと思う。  アートの展覧会やイベントには、たいていほかの展覧会の案内が置かれているコーナーがあって、貴重な情報源なのだけど、  フライヤーの絵の佇まいから、ただならぬものを感じた。  観ないと後悔するだろうから「11/19までに武蔵美に行く」とだけ覚えて、それ以上の情報を入れないことにした。  本作が「完成すれば70m」にもなる日

本歌取りの世界を覗く -杉本博司[本歌取り 東下り]@松涛美術館(-11/12)

 杉本博司の展覧会「本歌取り 東下り」が松涛美術館で開かれる(9/16-11/12)を知ったのは、丸亀市の猪熊弦一郎美術館でのことだ。  杉本作品についての「先生」は、瀬戸内海の直島だ。  そこに至るまでの現代アート関連の大先生は、六本木の森美術館。  だから、杉本博司の「本歌取り」といえば、「ああ、あんな感じ」とまでは思い浮かぶ。  しかし、その「本歌」の知識の部分がどのみちあやふやなので、今回も難しくて絶対モヤモヤするのだろうと知りつつも、これは絶対に行かなければ

静の中の動 -山口歴 個展@銀座 蔦屋書店(-10/17)+西武渋谷(2020)

 アーティスト・山口歴 個展「UNIVERSAL TRUTH@銀座 蔦屋書店(9/23-10/17) 一瞬の筆致を永遠に ここで、展覧会概要を。 2020年、渋谷での印象的な出逢い アーティスト山口歴の作品を、2020年、渋谷で鑑賞した。  街を歩いていて、渋谷西武のこのウィンドウを見て、吸い込まれるように会場に足を運んだ。  もちろんカメラなど持っておらず、古い型のiPhoneで思わず撮ったのみ。  グッズも販売されていた。  作品の前で足を止めて、というのでは

硬さとぬくもり -鈴木由衣[琥珀ロープ]@OIL by 美術手帖ギャラリー(渋谷PARCO)-11/6

鈴木由衣「琥珀ロープ」@OIL by 美術手帖ギャラリー(渋谷PARCO) -11/6  絵画、  スペース中央には大きめの陶芸作品、  壁に作り付けられた棚には、掌に乗るサイズの陶芸、が並ぶ。 絵画。生命と人の営み 自然のなかの小さな生命たち。食物連鎖? 強さと弱さの序列。そのなかで生きる人間と、人魚のような物語世界の登場人物。もしかしたら作家の世界では、すべてが共存しているのかもしれないけれど。  1枚の絵の中に物語が入れ子のように入っていて、じっと見たならば、