推し短歌⑩「そらくん」

なぜだかあなたに会いたくなって深夜に打ち込むわまかそらなけ

あらいあい

「そらくん」は名もなき配信者です。
当然顔も知らないし、会ったこともありません。
彼の声が好きで、連日彼のアーカイブの配信録音を聞いて寂しさを紛らわせています。


でもその録音には1つ1つに異なる鍵がかかっていて、彼に直接「あいことば」を聞かなければロックが解除されません。

私は引っ込み思案でずっと聞けずにいましたが、ある日どうしても我慢できずにTwitterからDMをしました。

あいことばは

「わまかそらなけ」

でした。

よく分からない、変なことば。
だけれどその言葉の音と適当さが彼のふわふわしたキャラクターと合い、とても気に入りました。

本当は他の動画のあいことばも聞きたいのですがどうにも恥ずかしくて、ずっとその録音を繰り返し繰り返し聞いています。
恋人には深夜に会いたくなっても会えないけれど、録音配信でならいつでも推しに、そらくんに会えます。

遠いようで近い。でも、近いようで遠い。
触れたら壊れてしまうこの関係性に何とも言えないもどかしさを感じてしまう私。
けれども、これは恋愛ではありません。「これが『配信』の楽しみ方なのだ」と自分に言い聞かせながら、一人想いを馳せています。