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サラリーマンでも行ける‼ ヨーロッパ1週間旅 モンテネグロ・セルビアの旅①

 どうやら「働き方改革」とやらが我が社にもやって来たらしい。急に社長が「有給休暇をもっと取得するように」と言い出した。それまで「有給休暇?何それ?美味しいの?」と言うほど休暇には縁がないサラリーマン生活を送ってきたが、ただでくれるという物を拒否する程無欲な人間ではないのでありがた使わせてもらう。
 有給を使えば旅先の選択肢もずっと広がる。フランスやイタリアなどのメジャーどころをじっくり旅してもいいが、折角なら、これまで乗り継ぎの不便さなどから3泊5日で行くのを諦めていた国がいい。そこで候補に上がったのが旧ユーゴスラヴィアの一員だったモンテネグロである。
 日本では殆ど知られていない国だが、ヨーロッパではビーチリゾート地として人気だ。地図をみればわかるが「アドリア海の真珠」と呼ばれ、今では日本からも観光客が大挙して押し寄せるクロアチアのドブロブニクとは指呼の距離にある。約1000年前の街並みが残っているコトルという魅力的な町もある。

 しかし、日本からのアクセスは悪い。モンテネグロの首都はポドゴリッツアだが、日本からの直行便は飛んでいない。まあそれは想定範囲なのだが、人口わずか60万人の小国とあって、乗り入れる航空会社自体が少なく、いいスケジュールが組めない。国土は福島県ぐらいの広さしかないのだが、ポドゴリッツアは内陸にあり、海沿いのリゾート地まではバスか鉄道利用になる。ここの部分のダイヤがどうにもわからず、到着時間が全く読めない。ポドゴリッツアに1泊して、翌朝に向かってもいいのだが、ここは観光地としての見どころは全く無い都市のようで、できればスルーしたい。
 困り果てていると、海岸近くに「ティバト」という空港があるのを発見した。普段は貨物専用なのだが、夏だけチャーター機などの旅客扱いをするという。ここを拠点にして乗り継ぎを考えた結果「成田—モスクワ―セルビアのベオグラード(1泊)—ティバト」というスケジュールとなった。お世辞にも出来がいいとは言えないが2国滞在できるのはありがたい。モンテネグロではヘルツェグ・ノビィという町に2泊し、帰路にベオグラードで2泊することにした。

 アエロフロートでのモスクワ乗り継ぎは幾度も経験しているのだが、今回は成田のチェックインカウンターで「モスクワ―ベオグラードのチケットはここでは発券できませんので、モスクワでお願いします」と言われた。はじめてのケースだ。
 モスクワで乗り継ぎカウンターに並ぶ。バウチャーを見せるとカウンター嬢に「あなたたちは、ここではチェックインできないので、こちらで…」といって別のターミナルに行くように指示される。
 モスクワのシェレメチェボ空港は、近年新ターミナルを次々に作っていてやたらと広くなっている。指示されたターミナルはかなり遠い。カウンターに並ぶだけで20分以上を要しており、乗り継ぎ時間にも不安があったため、急ぎ足で指定されたターミナルへ向かう。しかし、そこのチェックインカウンターでも男性スタッフは「君らのチケットはそこのドアを開けた部屋で発券するので…」と右手のドアを指さす。しかし、そこのドアには何も書いておらず、スタッフのバックヤードか何かとしか思えない。ドアの前で「え?ここ?」といった表情をしてカウンター氏を見ると、こっくりと頷く。
 ドアの中はやはりバックヤードかスタッフの休憩室としか思えない雑然とした空間だ。机が一つあって、失礼ながらどう見ても清掃員の中年女性が座っている。彼女にバウチャーを見せると「30分後にまた来て」という。本当に大丈夫だろうか。
 カフェで時間を潰して、再び小部屋を訪れると、私たちのチケットは出来上がっていた。座席番号も書いてあるので、大丈夫だろう。しかし、彼女がチェックイン・発券業務を行えるスタッフなら、なぜ外のカウンターにいないのだろうか?なぜ今回だけこんな扱いのチケットになったのか、いくら考えてもわからなかった。
 ベオグラードに向かうアエロフロート機内でCAに「日本人?」と日本語で話かけられる。ほんの少しだけ日本で働いていたことがあるそうだ。単語の羅列程度だが日本語も話せる。着陸態勢に入る少し前に「オミヤゲ」といってチョコレートを渡された。

 明日の朝には再びベオグラードを発つので空港近くにホテルがあればそこに泊まりたかったのだが、調べたところではホテルは近くになく、地図でみて街中のホテルの中でもわずかに空港に近い場所にあるところを予約しておいた。到着ロビーのタクシーカウンターでホテル名を告げると即座にクーポンが発券される。
 ホテルは住宅街の一角にポツンとあった。いったいどんなニーズを見込んで建てられたのかと不思議に思う。設備なんかは全く気にせず、空港からの距離だけで決めたホテルだったが、質としてはまあまあの感じだ。荷物を置く頃には夕暮れが迫ってきていた。ベオグラードまでの便で軽い機内食は出たのだが、せっかく街にいるので夕飯を食べたい。
 ホテルにはレストランが併設されており、一応客もいたが、妻の希望で街に出る。しかし住宅街なので食事が出来そうな店はポツリポツリ程度にしかない。それも何が食べられるのか全く見当もつかない店ばかりだ。英語のメニューなんて置いてないだろう。
 結局、若い男性がやっているカウンター形式の店でケバブのようなものを挟んだサンドイッチで夕食を済ます。飲兵衛の妻はビールを希望したが「無い」とのこと。先客の男性2人を見ると、どうも中東系のようだ。飲酒がご法度のイスラム教徒用の店らしい。店員が「旅行かい?セルビアはどうだい?」と聞いてくるが、まだ到着して2時間しかたっていないので感想も何もない。でも危険な目にもトラブルにもぼったくりにも会ってないので「ベリーグッド」と答える。間違いではないだろう。

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