次女

はじめて会ったのは
2019年11月
よく晴れた午後

転居先の区の生涯学習センターで開かれた譲渡会。
わたしたち夫婦にとって2つ目の譲渡会だった。

長女が2歳の女の子だったから
次は2歳未満の男の子がいいかな

ネットでかき集めた多頭飼育の知識に頼って
そんな話をしていた。

「男の子を検討しているんです」

確かに譲渡会でそう言ったはずだ。

だけど、
男の子がほかのお客さんに抱かれていて、
手持無沙汰になったわたしたちのところに
ボランティアさんが1匹の黒猫を連れてきた。

まだ生後3か月半のやせっぽっち。

ボランティアさんによると、
食欲は旺盛、人見知りや恐怖よりも食欲が勝つとのこと。

わたしたちに甘えてくれなくても
食欲があって、ご飯を食べてくれる子ならそれで十分だと思っていたから
この子なら安心だなと思った。

抱っこさせてもらった。

細くて小さな体は長女の子どもの頃とは違って
少し心細くなるくらいだった。

わたしの脇に顔を突っ込んでおとなしく私に抱かれていた。

いくらでも逃げようと思えば逃げられるのに、
いつまでもわたしの腕の中でおとなしくしていた。

旦那が「かわいい子だね。真っ黒」と言った。

「本当は男の子がいいかなって思ってたんだけど、この子でもいいかな?」

この子をうちで引き取りたい、
第六感みたいなものがわたしにそう言わせていた。

12月末に引越しが終わる予定であったので
ボランティアさんにその旨を伝えて
里親の希望を出した。

ご縁があれば、うちの子になるし
なければ他所で可愛がってもらえる。

引越しが終わるのを待ってもらう必要があったので
うちで引き取れなくても仕方ない、と期待しないようにしていた。

その日の帰り道、旦那と一緒に名前を考えた。

「とのにしよう」

女の子だけど、お殿様っぽい顔だったから、
そう言った。

意外と旦那も「うん、いいね」と賛成してくれた。


2019年12月28日土曜日。

保護主さんとボランティアさんに連れられて
とのが我が家(新居)にやってきた。

ボランティアさんによると、
とのの引き受けを希望したご家族がほかにもいたそうだ。
しかし、譲渡会で里親希望者と実際に会ったボランティアさんが
この家のほうが黒猫は幸せになれる気がする、と
わたしたちのトライアルを優先してくれたらしい。

リフォーム済みの我が家には
簡素だけれどキャットウォークがある。

保護主さんやボランティアさんは実際に我が家を見て
「ここなら猫ちゃんは幸せに暮らせるわね!」
と喜んでくれた。

とのは、道路の側溝に落ちて抜けられなくなり、
鳴いていたところを発見されて
レスキュー隊に救出してもらった子だ。

これからはそんな辛い思いを忘れるくらい
(おそらく本人はもうすっかり忘れていると思うが)
幸せで安心できる生活を送らせると決意した。

とのは寂しがり屋で毎朝目が覚めると鳴いてわたしたちを起こすし、
ちょっとわたしがリビングを離れただけで鳴いて呼びつける。

ソファに座ればちょこんと横で丸くなり、
気が付けばへそ天で伸びている。

なんて無防備なんだ。
可愛いやつめ。

我が家に来た頃は2.9㎏だった子猫ちゃんも
いまでは3.4㎏の子猫ちゃんになった。

むきむき度合いも長女を超えたし、
足の長さはとっくに長女を超えている。

猫パンチを交わせば次女のパンチだけが届くし
(長女は足が短めなので空振りに終わる)
横たわる姿には貫禄がある。

雑種魂で長生きしてね

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