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012【WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす】を読んで


書籍情報

書籍名:「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす
著:カール・ローズ
訳:庭田よう子
解説:中野剛志
発行日:2023年4月

内容判定

●読みにくさレベル……【3.5】
●参考文献……注付き、巻末に50Pほどの参考文献一覧あり
●内容の偏り……右派左派への批判と富裕層への批判
●内容ページ数……約300P

概要

 タイトルでもある「意識高い系(=ウォーク)」資本主義という概念を説明している。「ウォーク」という言葉の変遷、近年注目されたウォークな事例をいくつか紹介し、保守的な右派からの立場、リベラル的な左派からの立場からの意見、そして「意識高い系(=ウォーク)」資本主義の問題点を解説している。

どういう人が読むべきか

 私もよく「意識が高い」という言葉を使うが、スマホにどっぷりと浸かりつつある現代社会においては、こういった書籍を手に取り、実際に読み切る…というのは右派にしろ左派にしろ、そういった明確な立ち位置でない人にしろ、何かを学ぶぞという、意識の高さがなければ行えないだろう。ここに「意識高い系」と「系」という言葉を付け加えると、ある種の侮蔑的なニュアンス、つまりは意識が高い「ような」感じではあるが実際には中身がない、という意味合いになるようである。この本で使われているのもそうしたニュアンスに近い。つまりは、元々の資本主義から進歩したように見せかける意識高い資本主義ではあるが、それは実態が伴ってなく、よく吟味すると問題点が多い。…これはもしかすると読んでいる人の中にもギクリとする人がいるかもしれない。そしてこの本の中でも紹介されている事例はおそらくは一度目にしたことがあるだろうし、社会への問題提起という点ではもっともらしく見えることから頷いた人もいるだろう。しかし問題はその中身や実態である。
 近年問題とされている格差に対して多くの〇〇資本主義という解決するための概念が生まれてきたが、そこから一歩引いた視点から問題を深く読み込んでいる。そういう意味では、あれこれ本を読んできた人にはぜひ読んでほしい1冊で、いわゆる意識の高そうな考えの問題点を指摘している本書は面白く読めると思う。

キーワード

・ウォーク資本主義
・社会的責任
・ブランドアクティビズム
・人種的資本主義
・MeToo運動
・プルトクラシ―

以下、感想

 まず注意したいのは「意識高い系」は本文中では英語「woke」をそれっぽく翻訳したものであり、翻訳せずに「ウォーク」として文中で使われている場合が多い。このような注意書きをするのは、本の初っ端から「ウォーク」という普段見慣れない言葉が頻出し、その言葉が海外の皮肉っぽい表現と混じることで良い意味で使われているのか悪い意味で使われているのかが判別しづらいところにある。また、主にはアメリカの右派と左派から見た視点が混じり、右派から見ればこれはリベラルによるマーケティングや企業への汚染としか考えられず、左派から見ればこれは時代に合った称賛すべき運動の一環であるとされ、この本を読む層を考えるとやや左側に傾いているだろうからなんとも主張が飲み込みづらい。また、左派に対する右派の意見が書かれてはいるものの、右派の意見が正しく、素晴らしいものだと説明しているわけでもないというのが違和感の正体であろうと思われる。
 じゃあ「ウォーク資本主義」ってなんなのさ?と言われれば、その真意は

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