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021【世界をダメにした10の経済学 ケインズからピケティまで】を読んで


書籍情報

書籍名:世界をダメにした10の経済学 ケインズからピケティまで
著:ビョルン・ヴァフルロース
訳:関美和
発行日:2019年4月


内容判定

●読みにくさレベル……【3.5】経済学の基本的な知識は必要
●参考文献……注付き、巻末に30Pほどの参考文献一覧あり
●内容の偏り……自由放任主義の視点から
●内容ページ数……約360P


概要

 タイトルの通りに受け取ると、経済を悪くしている10の理論に対して解説している…かのように思うかもしれないが、著者の言うところによれば、自由放任主義を批判する10の原則と理論を取りあげた…という内容になっている。この本の目次を見ればどのような内容かはすぐに把握できるが、簡単に紹介すると、緊縮財政、資本主義による搾取、増税、格差の是正、インフレ、市場の効率性の是非、マイナス金利、自由市場の有無、バブルや恐慌は資本主義の宿命なのか、インフレの対処に関して、といった10のトピックから経済学を批評している。


どういう人が読むべきか

 パッとタイトルを見ると、とてもわかりやすく面白そうでつい手に取ってしまいたくなるような1冊だが内容は難しい。単純に専門的な話が多いというのもあるがこの本の立ち位置がトレンドとは真逆の場所にあるからだ。金融危機以降、そしてコロナ禍を経て新自由主義的な考えは批判される傾向にあり、より大きな政府が、格差是正のための再分配を、という主義主張が目立つ中で、問題視されていることを10のトピックから「反論」している。これらの点からもある程度の経済と金融の知識を求められる。さらに理解を深めるためにはトレンドを知っておく必要もある。周辺の背景や知識を有していることでトレンドとは別の考え方としての本書の面白さも理解できる。


キーワード

・格差
・緊縮財政
・スティグリッツ
・創造的破壊
・ネットワーク効果
・アベノミクス
・テイラールール


以下、感想

 この本を読んでわかることは経済学の党派性である。この本を2024年から見ても、主要な経済学のトレンドとは相反している内容も多い。もちろんこれは一般的な読者からすると戸惑いを覚えるかもしれない。同時期に書かれた経済学の本で言ってることがなんだか違うような気がする…というのはどちらかが単に間違っているのか、醜い派閥争いをしているのか、なんて勘ぐりたくもなる。いくつかの経済学の本を読み漁っている私がこの戸惑いに一定の理解を示すならば、それはあくまで条件や仮定の違いである。まず残念なことに経済学は

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