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【IVS2023 LAUNCHPAD】優勝から一年経つ今、当時を振り返ってみた

こんにちは!  株式会社abaの宇井です。

2023年6月に行われた、日本最大級のスタートアップピッチコンテスト「IVS2023 LAUNCHPAD」に登壇させていただきました。

大変ありがたい事に「スタートアップ京都国際賞(=優勝)」と「オーディエンス審査員賞」をダブル受賞させていただきました!

今回のnoteでは、優勝を目指して私がどのような準備をしてきたのか、そして優勝後、私自身やabaに対してどのような変化が起きたかお伝えできればと思います。

介護現場の救世主!においでわかる排泄センサー「ヘルプパッド2」┃IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO

優勝に至るまでの紆余曲折と準備

IVS LAUNCHPAD2023では、過去最大となる約400社の応募があり、その中から予選を勝ち抜いた14社の決勝進出者が各6分間のプレゼンテーションを行いました。

多くの方々にご評価いただいたピッチでしたが、実は本番を迎えるまでは決して順風満帆とは言えない状況でした。むしろ、精神的にも体力的にも、かなり追い詰められていました。

もっとも予備審査を通過し、最終審査を受けた段階では、かなりのんきに構えていました。あとになって振り返れば、驕りでしかないのですが、これまで何度も排泄センサー「Helppad」に関するピッチを重ねてきたのだから、今回も”いつも通りやればいい”と能天気に考えていたのです。

結果は、惨憺たるものでした。まず、規定時間にきっちり終えられなかったという初歩的なミスに始まり、内容も「これでは伝わらない」と審査員の方に厳しい指摘をいただきました。

さまざまなピッチコンテストで優勝し、資金調達にも成功したことで、自分でも気づかないうちに伸びてしまっていた鼻を叩き折られた瞬間でした。審査員の方々が気づいていたか分かりませんが、私はパソコンのこちら側で少し泣いていました。

でも、言われてみれば、どのご指摘も納得のいくものばかりです。自分のふがいなさが情けなく、穴があったら入りたい気持ちでいっぱいになりました。審査結果の発表を待たずに、準備に関わってくれた人や、IVSに推薦してくれたi nest captitalさんに「ごめんなさい、ダメでした」と先んじて謝っていたほどでした。

「スタートアップにはかっこよくあってほしい」という願い

想像に反して決勝に進出させていただけることになったとき、喜びと同時に強烈な焦りが押し寄せてきました。

最終ピッチに向けて、IVSを運営するLAUNCHPAD FUND代表の川村達也さんがメンターを務めてくださることになり、その初回面談が迫っているにも関わらず、一向にプレゼンのストーリーが固まりません。

「このままではなんの結果も持ち帰れないまま、プレゼンの舞台に立つことになる」

不安と焦りでオロオロする私に、川村さんはIVSに賭ける意気込みを語ってくれました。

「やはり、スタートアップにはカッコよくあってほしい」

川村さんの熱い思いを聞きながら、強く強く共感し、心を揺さぶられました。私自身も常日頃、介護業界に対して、介護職さんに対して同じように願っていたためです。

介護の仕事は間違いなく重要な仕事です。あらゆる人のために、残さなくてはいけない職業で、そのために我々エンジニアが最高のクオリティのケアテックを生み出し、役に立ちたいとも考えています。

自分がリスペクトする人達のために、自分の全力を、惜しみなく賭ける。迷ったり、悩んだりしている場合ではないと腹をくくることができたのは、川村さんをはじめとする、IVSに携わるみなさんの圧倒的な熱意に触れたおかげです。

介護業界で積んだ15年間の経験をすべて注ぎこむ。そんな思いで本番までの一か月を過ごしました。

徹底リサーチと”真似大作戦”でストーリーラインを再構築

どうすれば、聴衆・審査員の方々に伝わるストーリーラインを構築できるのか。川村さんからもさまざまな助言をいただきながら、いちから考え直しました。

審査員の方々の経歴や投資実績、やられている事業、関心があることなど、調べられることはとことん調べ尽くしました。

一方、過去の優勝者であるアダコテックの河邑さん、SHEの福田さん、PETOKOTOの大久保さんのプレゼンも徹底的に見直しました。特に河邑さんに関しては、河邑さんのプレゼンスクリプトを書き出し、成功要因を分析しています。

左側に河邑さんのスクリプトを書き出して、右側に自分のスクリプトを書き出す。
各セリフが何秒かかるかも測定した。

ストーリーライン作りの迷走から脱却できたのは、まさにこの真似大作戦のおかげです。この作業のおかげで、「この掴みうまいな!」「abaだったらこう表現しようかな」と、ストーリーラインを考える上での弾みがつきました。

プレゼンでのキーポイントはやはり「臨場感」

IVSの聴衆・審査員の方々は、介護現場に縁遠い方も多いので、どうやって介護現場の臨場感を持ち込むかを考えました。

環境問題や途上国の貧困問題もそうですが、そこに社会課題があるとわかっていても、イメージがわかないとどこか他人事になってしまう。そこでプレゼンの冒頭では30年前の老人病院の写真を使うなどして、”排泄ケア”について具体的に想像をふくらませてもらえるよう、工夫しました。

檀上に介護ベッドを持ち込み、デモンストレーションを実現したのも臨場感を演出するためです。abaの技術メンバーに協力してもらい、「Helppad2が排泄のにおいをどのように検知しているのか」がわかる動画も作成しました。

本番を迎えるまでメンターである川村さんはもちろん、abaに投資している投資家の方々や、スタートアップ経営者仲間などに作りこんでいる最中のプレゼン資料を送り、ブラッシュアップを重ねました。

プレゼンテーションにおいて当たり前のことですが、この小さな積み重ねが優勝に繋がったと感じています

たくさんの変化をもたらしたIVS優勝。そして新たな挑戦が始まる

今回のプレゼンには、私たちabaが歩んできた15年間のすべてを詰め込みました。その棚卸し作業にはすさまじく時間と労力がかかり、私にとってはつらく苦しい時間でした。

新製品発売前の大切な時期に、社長である私がこんなにもプレゼン準備に時間を費やしていいのか。abaのメンバーに申し訳なく、いたたまれない思いにもなりました。でも、
「もっと多くの方にHelppadを知ってほしい」
「もっともっと遠くまでHelppadを届けたい」
その一心でなんとか踏みとどまり、最後まで走りぬくことができました。

IVS優勝は私たちabaにたくさんの変化をもたらしてくれました。昨年の優勝以来、数えきれない人に「IVSのプレゼン見ましたよ」と声をかけてもらっています。

スタートアップコミュニティにいらっしゃる方々はもちろん、介護業界の方からも声をかけられます。スタートアップ業界でも、介護業界でもない方から「介護職さんへの思いに胸を打たれた」「介護経験はまだないけれど励まされた」と言っていただくこともあります。

IVS優勝は私たちabaに、たくさんのものをもたらしてくれました。でも私にとって何よりうれしいのは、介護に普段まったく接点がない人たちと、介護業界をつなぐきっかけにもなっているということです。

それはまさに、ヘルプパッドのロゴに込められた「架け橋になりたい」という願いそのものでもあります。

私は「世界で9億人いるとされる介護者をテクノロジーで支えたい」と本気で考えています。同時に、どうすれば残りの世界72億人にとって、介護が「したくなるもの」に代わっていくのだろうとも考え続けています。

はっきりとした答えはまだありません。でも、誰かと誰かをつなぐ、その第一歩となるようなプレゼンができたのかなという手ごたえはあります。

IVS優勝は15年間、必死に走り続けてきたからこそ、見ることができた景色でした。でも、私たちabaの挑戦はまだ始まったばかりです。

もっと多くの方に、Helppadを知ってもらいたい。
もっともっと多くの方に、Helppadを届けたい。
そして、いろいろな意味でのつながりを生み出し、架け橋となっていく。

これからも全力で走り続けます!

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