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みちのく潮風トレイル冒険録9:猫まみれの島(鮎川→網地島→田代島→石巻駅)

 鮎川のキャンプ場に宿泊した昨日に引き続き、本日は鮎川港から船に乗り、石巻市に属する離島、網地島・田代島を渡って石巻に至る行程となる。島と島の間は網地島ラインという渡船に乗って移動することになるのだが、この船は天候によって欠航したり一部の港に寄港しなかったりする日が結構多いらしい。予定通りに島を歩くことができるかは天候次第という、ハイカー泣かせの区間である。

Day13①:林道内山線出口→鮎川港

2021年10月4日(月)
 まだ暗いうちから起きだして、お湯を沸かして朝食とする。キャンプの朝のホットココアは最高だ。そのうちにキャンプ場の対岸に見える金華山が、朝焼けに輝きだす。

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 テントを撤収して鮎川港を目指して歩いていく。本来であれば、昨日トレイル本線から外れた林道内山線出口地点まで一旦戻り、御番所公園を通るトレイル本線を進むべきなのだが、キャンプ場から標高差があり重い荷物を背負った身には来た道を引き返すのはキツいと判断して省略し、そのまま県道を進むことにした。平面距離ではほぼ同じくらいの距離を歩いている計算になるので、このくらいの妥協は勘弁願いたい。御番所公園の下でトレイル本線に合流し、鮎川港へ到着。

13.牡鹿半島②

 網地島へ渡る網地島ラインのチケット売り場は、ホエールタウンおしかという観光施設の中にある。網地島までのチケットを買い求めたところその後の旅程を尋ねられ、船を乗り継いで石巻まで向かうことを説明すると、網地島以降の船のチケットはその都度船内で買うよう教えられる。今日は天気が良く、船は予定通り運航されるようで一安心だ。
 鮎川は捕鯨の町として知られる(震災前、鯨料理を食べに家族で鮎川に訪れたことがある)。このホエールタウンおしかにも鯨料理の店が入居しているのだが、早朝なので営業していない。御番所公園とあわせ、いつか鮎川には再訪したいなと思う。

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 網地島への朝1番の船は、7:20に出発する。シーキャットという名の真新しい高速船の中は意外に乗客で混み合っていて、作業服姿の工事関係者風の人の姿が目に付く。鮎川に宿泊して、網地島でのお仕事に向かうのだろう。

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Day13②:網地島(長渡港→網地港)

 網地島の南端、長渡(ふたわたし)港に着くと、船の2階から降りるようアナウンスが流れる。港の岸壁が水面よりかなり高く、2階からしか乗り降りできない構造のようだ(荒天時に長渡港に寄港しないことが多いのは、この構造のせいだろう)。

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 長渡の集落には、ベーリング探検隊投錨地という看板が建っている。1739年、ロシア帝国のベーリング艦隊の分遣隊が網地島に訪れたそうだ。時は8代将軍徳川吉宗の治世、この事件を元文の黒船といい、江戸幕府がロシア帝国という国の存在を初めて認識した出来事だという。現代まで続く日露関係史はここ網地島から始まったのだ。
 長渡の集落の外れで、散歩をしている地元の老夫婦にどこから来たんだいと声をかけられる。大荷物を背負った旅姿で歩いていると、地元の人から温かく声をかけていただき旅をしている実感を得る機会が多い。
 トレイルは網地島を南北に縦断し、網地の集落に入る手前で未舗装路に入る。しかしこの区間の未舗装路は歩く人が少ないのか手入れがあまりされていないようで、草は伸び放題クモの巣は張り放題、今まで歩いてきたトレイルの中でも一番歩きにくい区間と感じた。
 網地の集落で、荒れ道を歩いて服に付着した植物の種子を払っていると、どこからともなく猫が寄ってくる。数年前に死んだ実家の猫によく似たトラネコだ。猫の島として有名なのは次の田代島だが、網地島にも猫はいる。

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 網地港の横には白浜という海水浴場があり、夏場は人で賑わうらしい。海と砂浜を眺めながら、田代島に渡る船が来るのを待った。

14.網地島

Day13③:田代島(仁斗田港→大泊港)

 網地港から再び船に乗り、田代島の南端、仁斗田港へ。

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 人よりも猫の数のほうが多いとも言われる田代島は、”猫の島”として人気の観光地になりつつあり、仙台都市圏からのアクセスが悪くないこともあって休日には船に乗り切れないほどの観光客が訪れることもあるという。しかしこの日は平日、観光客の姿もまばらで、港の周りに集まる猫たちを独占することができる。しばし、時間を忘れて猫たちと戯れる。

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 トレイルは、田代島の西側を半周していく。この道は人影もなく、猫の姿も見えない。荷物も重く、さすがに足に疲労が出始めて休憩を取りつつ歩みを進めていく。
 田代島の中ほどにある、美與利大明神、通称"猫神社"に参拝する。猫の安全と豊漁を願って祀られた神社だそうだ。猫神社のベンチには、神社のヌシのような貫禄のある猫が座っていた。

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 猫神社から田代島の北端の港、大泊港へ降りる。大泊港は仁斗田港と異なり人影が全くなく、猫の姿もまばらだ。帰りの船までの小一時間を、港の静寂を味わいながら読書をして過ごした。3度目のシーキャットに乗り込み、石巻港へ到達。石巻駅まで歩いて一泊二日にわたる大冒険は幕を閉じた。

15.田代島

 これで、福島県相馬市から宮城県女川町までの約290kmを、一本の道で歩き終えたことになる(必ずしも南から順にセクションを歩いたわけではないが…)。女川町から北側のセクションは踏破難易度が高いセクションとなり、旅程を立てるために相当頭を悩ませることになるのだが、それについては次回以降の記事で触れることにしよう。

 南側のセクションは↓

 北側のセクションは↓


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