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怪我から学ぶ

大学4年の1月に初めて手術を必要とする大怪我をした。それまでは大きな怪我をしたことは全く無かったし、自分は体が強いから怪我をすることは、これからも多分無いだろうと思い込んでいた。考えが甘かった。大学4年次に出場した世界選手権で優勝し、東京オリンピック出場に向けて勢いづいている時期の練習中の出来事だった。その日の乱取りが後半に差し掛かり、集中力が切れかけていた。いつもならあまり投げられることの無い選手に3回投げられ、ムキになり無理やり技に入ろうとした時、パキッと音がした。最初は関節音だろうと思い、あまり気にしていなかったが次の日の朝に立ち上がることができず、病院に行った。左膝半月板損傷。打ちひしがれた。目の前が真っ暗になった。

半月板とは膝のクッションになる軟骨組織であり、ここを損傷していると痛みだけでなく、ロッキング(半月板が引っかかり膝を動かすことができなくなる)が起こる場合がある。早急に手術が必要だった。半月板損傷の手術は大きく分けて2種類ある。半月板切除か半月板縫合である。前者は割れてしまった半月板の部分を切除し、ロッキングしたり痛みが出ないようにするもので復帰まで2ヶ月と早いが、半月板が無くなるので軟骨組織がすり減り痛みが出やすくなってしまう。後者は割れてしまった半月板を縫合するもので復帰まで半年と時間はかかるが、元々の半月板と近い状態に戻すことができる。目の前のことだけを考えれば切除をした方が復帰も早いし、すぐに試合をすることができる。そっちの方がいいのではないかという周りの意見もあったが、私は縫合を選んだ。切除を選んですぐに復帰して結果を残すことができても、1番大事な時期に体に負担がくる可能性が高い。そして私が目指しているのは目の前の試合で勝つことではなく2年後のオリンピックで優勝することだったからである。

手術を無事終え、1ヶ月間松葉杖での生活になった。トレーニングをしたい気持ちもあったが、それまで自分の体を追い込みすぎていたように感じたので、あえて何もしないようにした。何もしないでいると、怪我について考えることができた。怪我をするタイミングは大きく分けて2パターンある。練習が始まったばかりの体が温まっていない時にする怪我と、練習後半や週末の集中力が落ちたり、疲れてきた時にする怪我である。私の怪我は後者だった。怪我のリスクを下げるために前者では入念な準備運動やウォーミングアップが必要となり、後者では自分の体の状態を的確に把握し集中力が落ちたり疲れてきたと感じたら休息をとったり、トレーニングに切り替える必要がある。復帰した後はこのことを頭に入れ、日々の練習を行うと決めた。

柔道をしていると怪我はつきものだ。リスクを減らすことはできても0にすることは難しい。怪我をしてしまった時は、自分自身が目指してるところをもう一度思い返し、新しい道を作り直すことが必要だと、怪我をしたことにより知ることができた。

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