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友人への手紙 by A.I

《a full sale hole》, 2023, Maho Haruna

この手紙が届く頃には、きっと旅から帰ってきていることと思います。
解決するかわからないモヤモヤから遠ざかるために、飛行機に飛び乗ったあなたのことがとても気がかりでした。
向き合う準備は整ったでしょうか。

ちょうど先日、東京のギャラリーを巡ってきました。とある作品に出会いました。春名真歩という作家さんの「a full scale hole」という抽象画です。
ずっとあなたのモヤモヤを考えながら歩いていた先での出会いだったので、これは引き寄せられたなと感じました。
ブルーとベージュの世界に、いろいろな線が踊っている作品でした。1m×2mの大きな画面の中央にブルーグレーの楕円がはみ出すくらいの勢いで描かれていて、キャンバスの外にも空間が感じられるほどです。絵画、というと平面的な世界を想像すると思うのですが、春名さんの作品は画面に載せられた絵の具の質感も様々で、時には分厚く、時には緩く空気が流れるように使われているのが印象的で、逞しい彫刻作品の印象も持ち合わせています。
じっと対峙していると、穴の外にいるのか、中にいるのか。穴の中は光がとおっているのか。穴の世界は狭いのか、宇宙のような広がりがあるのかわからなくなってきます。自分と世界の境目が消えていく感覚もあります。そこを、描かれた逞しい物質感が、現実世界と碇のように繋ぎ止めてくれるようにも思います。

あなたは「帰ってきたらモヤモヤへの結論を見つけたい」と言っていましたが、春名さんの「穴」と出会って、モヤモヤを抱える自分を外から見ることもまた結論の一つかもしれないと感じました。終わらせることばかりが結論ではないのだと思います。
旅から帰ってきたあなたにぜひ見てほしい。
きっと結論へのヒントになりますから。
すっきりとした顔のあなたと会える日を楽しみにしています。

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