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苦境に立たされたヨヌーツ・ラドゥ、それでも貴方を愛せるか ~非インテリスタがボローニャ戦を見て思うこと~

「失望」

 たった一瞬の出来事。そのたった一瞬のうちに、全インテリスタの頭にこの二文字が浮かんだだろう。

 優勝を争っているチームのものとは思えない光景が流れるモニターの前に呆然と立ち尽くす私。別段インテルが好きなわけではない、そんな私の頭にも同じ二文字。濃く、はっきりと。

 なぜって?

 何を隠そう、私はヨヌーツ・ラドゥが大好きだから。

転がってきた絶好のアピールチャンス

 インテルのスタメン発表を見て胸が躍る久々の感覚。ボローニャ戦、背中の違和感を訴えベンチとなった守護神ハンダノビッチに代わって先発したのはヨヌーツ・ラドゥ。ルーマニアの未来を背負う男だ。

 とにかくイケメン。それに尽きるが、実力も申し分ない。キャプテンであるこの男の活躍なくして、ルーマニアの東京オリンピック出場は叶わなかっただろう。過去の成績が語る通り、プロビンチャであればスタメンを張っていてもおかしくない。

 ラドゥにとってはこれが今シーズンのリーグ戦初出場。カップ戦を合わせても2試合目なのだ。少ないね。ポジション柄出番の少ない彼にとっては、またとないチャンスだった。そう、”だった”。

悪夢の夜

 ほぼ見せ場もなく1-1の同点のまま迎えた81分。リバプール相手にルジがやらかさないかとひやひやしていたところだった。(動画2:06~)

ペリシッチのスローインを捌こうとしたラドゥが痛恨のキックミス。ボールはコロコロとゴールの方向へ。きっちり詰められて失点。しっかり追っていたサンソーネのプレスはお見事である。優勝争いも佳境を迎える中であってはならないミス。さすがに擁護の余地はない。(そもそも投げた場所とシュクリニアルのスルーが気にならないこともないが…)

 ここ最近でナポリのメレト(動画2:16〜)、パルマのブッフォン(動画0:49〜)と、ゴールキーパーの大ポカが連続していただけあって、特別感はない。この前のマンチェスター・シティのステッフェンなんかもそうだ。

 キーパーに求められることが増えれば増えるほど、今後もしばらくはこういったシーンを拝む機会が減らないだろうなと思うと少々気の毒だ。そのうち、「足元上手い」が標準装備の時代が来るんでしょうけど、それはそれで寂しいのかな、なんて。

遠すぎる絶対的な男の存在が招くべくして招いた大きな黒星

年齢を感じさせないオジサン

 もう10年近くインテルのゴールマウスにはサミル・ハンダノビッチがいる。この牙城は堅い。堅すぎる。あのダニエレ・パデッリをもってしても崩せなかった。ラドゥもまた然り、ハンダノビッチの陰に隠れてしまっている。齢37、寄る年波も何のその。一時期指摘されていた衰えも、今では全く感じさせない。”神”なんて呼ぶファンも多い。信じられないオジサンである。

 しかし、この男の存在とその起用法が今回の敗戦を招いたといっても過言ではないと言いたい。うん、言う。ラドゥがインテルに帰ってきてからというもの、ハンダノビッチが出ずっぱり。昨シーズンも、ラドゥの出場機会は優勝決定後の2試合のみ(先発も1試合だけのはず)。若い伸び盛りの選手がカップ戦にも出られないとなると、試合勘も鈍って当たり前。「そこを何とかするのがプロだろ」ってそりゃもっともな意見ですハイ。

 そもそもハンダノビッチ一本頼みの選手層には多くの声が寄せられていたはずだ。オナナがやってくるのを悠長に待っていられるはずもなく、ラドゥの代理人であるオスカル・ダミアーニはこの現状に苦言を呈していたようだ。

 「こっから試合多いのにもしハンダノビッチが怪我したらどうすんの?全然出てない子で対応しないといけない。理解できない。」と、まさにその通りになってしまったというお話。この辺がサッカーの難しいところ。

移籍先の候補は

 気になるのはラドゥの新天地。夏に名前が挙がったのは、レアル・ソシエダ。冬にはジェノア、サンテティエンヌ、ニースあたり。そして今のところ出ている話は、トリノのブレーメル獲得の取引に含まれるのではという噂程度。今回のミスが少なからず響きそうなのが心配なところだ。名誉挽回のチャンスがもらえることを祈るしかない。

ラドゥが描く夢の果て

 ラドゥには夢がある。いや、約束といったほうが正しいのか。彼は9歳の頃に姉のエマを亡くしている。そして今日に至るまで、彼は「世界中のスタジアムに連れていく」という幼い頃のエマとの約束を胸に戦っている。私が彼を応援する理由の一つがこれだ。ラドゥはプレーする際、ゴールポストのところにエマの写真をプリントしたTシャツを置いている。

 U-21EUROイングランド戦の後、Tシャツを掲げて涙するラドゥ。この姿に胸を打たれた。(動画3:00〜)

 残念ながら東京にはやってこなかったが(これもハンダノビッチが試合に出続けたのが悪い)、いつかはワールドカップやCLの舞台でこのTシャツを掲げてほしい。彼の約束が叶うことを、そしてその雄姿をこの目に焼き付けられることを願ってやまない。

言いたいこと

 今回の件で、インテリスタの皆様がお怒りなのは百も承知。これは優勝争いに直結する大きすぎる失態。でも、ラドゥは”ミラニスタ”でも”ミランのレジェンド”でもない。それは、普段の試合後の彼を見ている皆さんがよく知っているはず。彼は自ら心のクラブに留まることを決めた生粋のインテリスタ。誰よりも熱い男。あとイケメン。

 デュンフリースやコルダスをはじめ、試合後の選手たちの行動は嬉しかった。なんであろうと、チームとして本来あるべき姿だと思う。

ラドゥを慰める選手達

 だから一つだけお願いしたい。怒るのは構わないので、どうか心無い言葉を投げかけないでほしい。優しい言葉をかけてあげてほしい。最後まで見守ってあげてほしい。

 もちろん私だって、好きな選手の不甲斐ない姿を心底情けなく思う。期待が空回りし続けるのもしんどいもの。平手打ちして気合を入れ直してやりたいくらいだ。それでもやっぱり、自分の中で変わらないもの、再確認できるものってあるよねってことで。


ラドゥ様、世界で一番愛してまーす!!!


 感情のままに書いた駄文を最後までお読みくださりありがとうございました。

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