[恋愛小説]2002年の二人の妻達.../7. 7年間の清算
The Lost Ground in 2002
登場人物
福山雅春 :大手設計事務所 第1事業部 部長 46歳(1956)
石橋優香 :設備会社 庶務部人事担当 27歳(1975)
有村かす美 :福山雅春の元妻 40歳(1962)
有村 香 :雅弥の一人娘 17歳(1985)
斉藤修 :石橋優香の婚約者、大手電機会社営業27歳(1975)
石橋吾郎 :優香の父、常陸太田の造り酒屋社長 52歳(1950)
石橋桜 :優香の母 46歳(1956)
田口雅美 :福山雅弥の高校時代の友人 46歳(1956)
安西清志 :福山雅弥の大学時代の友人 45歳(1957)
萩谷健一 :弁護士、高校時代の友人 46歳(1956)
岡田真澄 :石橋優香の女子大時代の友人 27歳(1975)
東谷義賢 :大手設計事務所 会長
優香が別れを告げたとき、斉藤修は始め何を言われているのか、分からなかった。
暫くして、それが別れ話だと、漸く理解した。
理解はしたが、納得できる話では無い。
第一、 理由がよく分からなかった。確か優香はこういった。
「あなたとは、相性が悪いので、別れたいの。」
相性って、何だ?
「もう、連絡しないでください。電話も、Lineも」
連絡、するなって…。
「いままで、ありがとう。これまでの事は、二人の思い出にしましょう。」
思い出…何があった。
ここ3ヶ月、確かに優香との連絡は途切れがちだったし、会いたいと言っても、何か用事を理由に会えないと言われた。
「誰か、他に男が出来たのか?」
「そんなことは、あなたには関係ない話よ。」
「そうなんだな。」
「ここで、お別れします。」
「俺は、納得してないぞ。」
「それは、あなたの勝手。でも連絡してこないで。二度と。」
「だから、きちんと説明しろ!」
「…。」
「何とか、言えよ。」
「好きな人が出来たの…。」
「やっぱり...、どんな奴なんだ。」
「そんなこと、あなたには、関係ない話よ。」
「ふざけるな、俺たちの7年間をどう思っているんだ。」
「..もう、思い出よ..。」
「思い出..。それで、終わりか..。」
「これ以上、話しても無理だから..。」
「…。」
後味は悪かった。だが、それもしょうがないと、自分に言い聞かせた。
それよりも、雅春との夏休みはどうするか、そちらの方が、気になった。
一方、雅春は、一人娘の香との面会の日だった。
離婚協議の時に、面会については、毎月第1日曜日午後2時と決めていた。
ちょうど、それが今日だった。
そして、一昨日優香から斉藤修と別れたと、Lineがあった。
多分、それがこれからの雅春と優香のスタートなのだろうと思った。
少し早いが、それを香に話そうと思った。
「香、今日は話があるんだ。」
「何?パパ。深刻な話?」
雅春の顔色を見て言う。
「実は、パパ今真剣に付き合っている人が居てね。その人と、一緒になると思う」
「…」
「だからと、言って、香にもう会わないとか、そういうことじゃない」
「...」
「これからも、こうして会って欲しいし、香のことは大切に思っているから。」
「..でも、パパ。その人のことも、好きなんでしょ?」
「ああ、でもその事と、香は別だから..。」
「?どう別なの?その人と結婚するの?」
「ああ、そうなると思う。」
「それでも、又私と会うの?」
「嫌かい?」
「..。分からない..。」
「この事は、お母さんに、お父さんが話すから。君は話さなくて良い。」
「…。」
結局、この日の面会は、その話だけで終わった。
その晩、有村かす美に電話で伝えた。
元妻は、何も言わなかった。
それが、2003年8月3日の出来事だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?