気まぐれなフランス娘との生活 その1 起きない...。
こんなタイトルを読むと、まるで二回りも年の違う若い子と同棲生活をしていようだが、その子は先月からうちに来たフランス娘ならぬクルマなので、色っぽい話ではない。残念….。
でも、彼女(やはり女性称なのだが)には、時々驚かさせる。それまでの常識をひっくり返されるようなことが起きる。
とにかく気まぐれさを発揮したのは、行く先々でスタートしない。動かない。うんともすんとも言わない。
コストコのリフトの上で。スーパーの駐車場。自宅の車庫で。自動車屋のリフトの上で。…リフトの上が好きだな。
そのたびに、スタッフに
「このクルマ、スタートするのに何かコツがあるんですか?」と聞かれる。
「いやー、別にないんだけど。」
とその頃、あまり彼女を知らない自分は答えていた。実はコツがあったんだけど。
それまでの娘は、キーを捻る。スタートボタンを押す。それも一瞬。そう、一瞬でスターターは廻りはじめ、エンジンは初動を始める。
だが、この子は一瞬では何もしない。まずそれがびっくした。一瞬では何もしないのだ。
「掛かれー、掛かれー」と心の中で念じながら、スタートボタンを押し続けないと、それも1秒、2秒、3秒と….。そうすとおもむろに。思い出しようにキュルキュル…ゴゴゴゴゴ。…ちょほほ。
「エンジンが掛からないで、エラーマークが3つ出てるんです。」
とその車を売ったお店のスタッフに言うと。
「そのクルマは、普通のクルマと違い、暫くスタートボタンを押し続けないと…。」
と言われ、
「何をバカなことを。」と思っていた。
でも、やがてそれがどうもそうなんじゃないかと、自分でも思うようになった。
確かに、一瞬では始動しないが、そのまま押し続けると、やがて眠い目を擦りながら、満開のように点灯していた、色とりどりのエラーサインが徐々に消えていき、おもむろにゴゴゴゴゴ….。とエンジンが掛かりだす。
いやはや、これがフランス娘の気まぐれさか…。と最近、受け入れた自分がいる。ちょほほ。