見出し画像

短歌「読んで」みた 2021/05/14 No.1

びつしりと人間ひとを孕める太き胴梅雨の晴れ間の高空に光る
 志垣澄幸 第14歌集「鳥語降る」(本阿弥書店 2021年)

飛行機を見上げる。離陸を見送っているようだ。家族や知己が乗っているのかもしれない。満席かほぼそれに近いのだろう。その機体を「胴」ということは別に珍しくもないが、胴=腹部と捉えたことにより途端に生き物めいてくる。しかもびっしりと孕んでいる、と。ほぼ夏の日差しに機体をきらきらとさせながら空の高いところを飛んでいく。SF的な雰囲気を漂わせつつ、格調高くまとめられている。

 *  *

そうか、そうだったのか。孕んでは離陸し、着陸しては生む。そうか、私たちは乗るたびに生まれているのか。胎内回帰。そう思って、次は搭乗したい。到着地に降り立って、何を思うのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?