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2020年上半期読んだ本 ベスト6選 その他編

気のせいかもしれないが、今、振り返りを積極的にしている人が増えている気がする。

在宅時間が増えてきたからか。

変化の日々の中で、寄ってたつものを得るためか。

いずれにしろ(上記のどちらに当てはまらなくても)、すごいくいい傾向だと思う。

生きている間に、こんな劇的な変化は起きないかもしれない。辛い思いをしている方もいるかもしれないから一概には言えないけど、価値観が揺れ動くときだからこそ、自分(自身)のことはしっかり把握しておきたい。

「○○しかできなかった」でもいいのだ。

明日、少しでも改善できれば、報われるのだから。

というわけで、これまでは年間で振り返っていた「読んだ本ランキング」を半年verに変更してお届け。

※順位はつけづらいので、厳選して挙げる、という形を採ることにした。

今回はその他編。

『歴史小説』でも『ビジネス本』でもないジャンルたち。

上半期最も刺激を受けたのはこの雑多な集まりだったかもしれない。
嬉しい限り。

■ふだんづかいの論理学

何が正しくて何が間違っているのか。

コロナ以降、考えることが増えた。

よさげに聞こえる正論、ついつい聞いてしまう発言。SNSを見ればそんな話しばかりが乱立する世の中に、気がつけばなってしまっている。

だからこそ、その時々に流されず。

大事なこと・正しいこと・曖昧なところはどこなのか。きちんと分けて、評価して、結論づけていく必要性がある。

この本はそれらをわかりやすく解説。倫理学という固いイメージの学問を題材にした本だけど、とても柔らかくしっくりくる展開で、知ってるようでわかっていない理論を紹介してくれる(そしてたまに毒を吐く)。

タイトル見ると難しそうだが、読めば今最も必要な学問だということがわかる。近づきづらいイメージ払拭間違いなしの1冊だ。


■音楽の聴き方

「音楽の好みは感性だ。それを伝え合う努力の“洗練”を怠ってはならない」「音楽を聴くとは、未知なる他者を知ろうとする営みである」

今挙げた文章の“音楽”を読書や他の趣味に置き換えてみよう。

みんな当てはめられることにお気づきだろうか。

元々はクラシックを理解するための、音楽と人間との関係についての歴史を紹介する本。

今より体全体を使って音楽を聴き、理解しようとしてきた先代の努力。

言葉が無ければ、私達が心打たれる音楽は生まれてこなかった。

音楽の魅力を共有するために、感性や波長が合うことだけを相手に求めているのなら、今すぐ改めよう。

感覚が合う人だけで固まっては知る楽しさは得られない。

理解しようとする、わかり合うという姿勢の尊さを改めて知る1冊だ。


■廉太郎ノオト

若くしてこの世を去った音楽の子・滝廉太郎の生涯を綴った作品。

まるで廉太郎の走馬燈のような、さらっとした浮き世離れの描写が、次第に音楽によって彩られていく青春の日々へと続いていく。

豊かになっていく廉太郎の時間が愛おしく、訪れる悲劇と絶望に触れるのが怖くなって、少しずつ少しずつ読んだのが、今となってはいい思い出。

結局費やした時間は三ヶ月。読んでる時間がオンエア、次読むまでが幕間のような日々だった。

読み終えたとき、きっと生ききるってこういうことだ、と目の前が爽やかに開けたのが印象的な一冊。

■わかりあえないことから

8年近く前の本だけど、巷で言われている「コミュニケーション能力」の必要性が実態と乖離している状態はこのころから指摘されていて、今なお変わらないものだと痛感。

 “みんなちがって、みんないい” じゃなくて “みんなちがって、たいへんだ”

というところから始めないと、いつまでたってもつながりあえない。 

多様な人を受け入れられる居場所(コミュニティ)を作ることももちろん大事だけど、その根底に目を向けることも重要。

本書で紹介されている文脈を読む力や、演じることを楽しめる社会の必要性は、海外の方々との間だけではなく、日本人内でも求められる要素。

コロナで分断された僕たちがつながりあうには、物理的な距離以外の課題もクリアにしていかないといけないのかもしれない。

■戦国大名と分国法

戦国大名の象徴の一つとして挙げられることがある法律・分国法。

ところが家ごとにみると、形式も意味合いもバラバラ、かつ内容も法律なのか愚痴なのかわからないものも・・・

家臣から突きつけられた六角、法律としては当時の最高峰のものを作り上げた今川、そして滅亡直前までバージョンアップした武田など、法律から当時の価値観がみえてくる秀逸本。

清水さんのわかりやすくちょっと茶目っ気のある表現に知的好奇心かき立てられること間違いなし。織田や徳川、後北条などの有力大名に法がない理由にも触れている。目から鱗の結論を是非確かめて欲しい。


■世界の辺境とハードボイルド室町時代

知的好奇心かきたてられる対談第一作。

高野・清水両氏がお互いのプロフィールを話したり、大事にしていることや不思議に思っていることを共有しながら歴史の謎に光をあてていく。

世界と日本との共通点、言われて気付く日本の歴史の変なところや引っかかるところが、会話の中からどんどん生まれてくる。

そして、お二人だからこそ提示できる結論が新鮮なものばかり。

あてもない会話、だけど次第に核心に迫る楽しさ、これから、日本史をどうみていけばいいのかわかった気がする。

膨大な情報と知識を持つ二人だからこその濃厚な読書会を観客として堪能した気分。ちなみに次回作もめちゃくちゃおもしろい!

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