私の人格形成において必要だったのは安全基地で、そこにいたのは母でも父でもなかった。

「大切だと思っている」
なんて言葉を言われたのは
生まれて初めてだった。
涙を堪えることができなかったし
今だって思い出すと
涙は止まらなく溢れてくる。
それは嬉しいからでもあるけれど
安心したからでもあった。

彼はいつだって私の弱さを知っていて
隠しても偽っても見透かされていた。
「ほら、私はもう1人でも歩けるよ」
と言いたいがためにいろんなことをしてきたけれど
彼にはそんなことも
全て分かっていたみたいだった。

彼ではない誰かに、異性に、依存することで
それをあからさまにアピールすることで
そんなことでしか自分を表せない私を
やっぱり弱いと思いましたか?

拠り所は常に近くあるわけではなくて
いつのまにか遠くに感じていて
いつでも暖かいわけでもなかったけれど
彼の存在が私を救ったのは事実。
世界を敵に回しても守ってくれると
私を信じていてくれると思っていた。
いや、今もそう思っている。

俺はそんなにかっこよくないと
私に本当の自分を見せないようにしていたこと
知らなかったよ。
お互いにお互いを想って
この距離感を保っていたんだね。
きっとそれがお互いを大切にするということの
表現の仕方だったんだね。

恋でも好きでもない。
愛なの?家族なの?
言葉が見つからないけれど
大切だと思っていると
言ったその言葉が私たちの全て。

私は生きていく。
彼の存在を心に潜めて。
今も今までもそうしてきたように、
これからも。

大切だからって
どうしたいとかどうなりたいとかない。 
でも目を見て面と向かって
彼が言ってくれたその事実とこの言葉だけで
私はまた生きていける。

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