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野望No.26 行きつけの店をつくって「いつもの」と言う
きらびやかなバーカウンター。
映画やドラマで「いつもの」と言うシーン。
いつかは自分の行きつけの店で「いつもの」と言ってみたい。
そんなささやかな野望が叶いました。
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バーカウンターではなく、ペットショップで。
(※この先爬虫類等の写真があるので苦手な方はご注意ください。)
爬虫類を飼う気は毛頭なかった私が、なりゆきで約2年もヤモリを飼っている。
私は自分の仕事場で生き物が好きな子供のために、一時期昆虫を集めていた。すぐに逃がす予定で、期間限定で様々な生き物を飼っていた。
バッタ、カマキリ、メダカ、カブトムシの幼虫、カタツムリ、ドジョウ、マツモムシ…
そんなとき同僚に
「うちにいるカマキリ捕まえてきてあげるよ。」
と声を掛けてもらった。
「それでは是非お願いします。」と虫かごを手渡した次の日、同僚が手にしていた虫かごの中にはヤモリがいた。
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「カマキリはいなかったけどヤモリはいたよ。うちにいたヤモリ、よろしくね。」
カマキリを飼うつもりが、なりゆきでヤモリを飼うことになった。
ヤモリは"家守"と書くくらい、昔から日本では大切にされてきた生き物だ。ましてや同僚のお家の家守。他の生き物ももちろんそうだが、人様の家の守り主を絶対に死なすわけにはいかない。
ヤモリの飼い方が分からず爬虫類を扱うペットショップに駆け込んだ。
「これはニホンヤモリかな。警戒心が強いから乾燥させた餌をピンセットからは食べないね。餌ははコオロギ、活餌だね。」
そうして案内されたコオロギ販売スペース。
ここから私は週に1度、コオロギを求めてこのペットショップに通うことになる。
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初めての活餌は、半泣きになりながら与えることになった。
はじめは小さなコオロギがひしめき合う様子が気味悪く思えたし、丸呑みするヤモリの姿におぞましさを感じた。日々、街中で生活していては目にすることのない、生きるために生を食らう、野生の姿だった。田舎育ちとはいえ、久しぶりの光景に息を呑んだ。
しかし今ではすっかりその光景にもなれ、ヤモリが元気に健康で生きるために、命を頂いていると思えるようになった。
2年も通い詰めた結果、
私は「フタホシコオロギSサイズ20匹新聞なし」という言葉を毎週復唱することとなる。
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「アブラナシヤサイカラメマシニンニクスクナメ」二郎系ラーメン注文のコールのようである。
「フタホシコオロギエスサイズニジュッピキシンブンナシ」
そして同じ時間帯に決まって行く時が続くと、同じ店員さんに出会えたこともあいまって「いつものですね?」と聞かれるようになった。
そして「いつものです。」と答えると"フタホシコオロギSサイズ20匹新聞なし"がきっちり差し出された。
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私は、行きつけの店で「いつもの」と言う という野望を掲げた時は、お洒落なバーの常連さんになって、20代も後半、大人になった気分を味わうのだとばかり思っていた。
それがペットショップとは…
思いとは裏腹に、大人として憧れる「いつもの」とは少し違ったけれど、命を頂く瞬間に毎度立ち会い、生き物が生きる逞しさを感じる「いつもの」は私にとって特別なものとなった。
長い人生いつかはお洒落なバーで「いつもの」って言ってみたいな!
だけれど、しばらくは行きつけのペットショップで「いつもの」と言いながら、元気に長生きするヤモリを見守っていきたいと思う。
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