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大逆転裁判の音楽がよすぎる

よすぎる。

よすぎるので文字にする。

全体をとおして

逆転裁判シリーズはざっくり「調査パート」と「法廷パート」の往復、メインである法廷パートも「証人への尋問」と「矛盾の指摘」の繰り返しとなっており、基本的にはフォーマットに則ったゲーム展開になっている。

それでもぜんぜん退屈しない理由として、巧舟氏の脚本がさいこうというのは言うまでもないのだけど、音楽による盛り上げの演出がそれはそれはよいのだ〜ということも声をでっかくして言っていきたい。

とくに『大逆転裁判』は明治時代の日本とロンドンが舞台となっていて、西洋の文化を積極的に取り入れていた時代ということもあり作中の音楽は西洋楽器によるオーケストラサウンド(ときどき和楽器)、その重厚で豊かな音表現にゲーム中ずっと心に揺さぶりをかけられつづけていた(待った!)


ここからはどの曲のなにが良い!をつらつらとただ書く。ほんとうにただ書く。

尋問パート


大尋問〜モデラート

大尋問〜アレグロ

これらは証人に尋問をするときに流れる曲。

プレイヤーは証言を聞きながら「どこかに証拠品と矛盾している発言ないだろうか」と考えを巡らせるわけで、とくに《大尋問〜モデラート》は比較的単調めな曲展開かつシンプルな楽器構成が「考え中...」のような雰囲気をつくっている。

《大尋問〜アレグロ》もおなじく尋問の曲なのだが、なにか核心に迫りそうな情報を得てここからさらに真相に近づいていこうとする法廷パート中盤における尋問で流れる。

モデラートからテンポアップし、ブラス楽器やアコーディオンも加わって一段と厚みが増している。さらに曲後半、流れるような弦楽器とグロッケンが美しい新しいパートへ展開する。打って変わって動きのある進行がぐっと高揚感を煽り、物語も真相に向かって前進していることを実感して熱が高まる。

追求


追求 〜大逆転のとき

言うまでもないことを言うのだけど、大逆転裁判の追求はあまりにもよい。

逆転裁判シリーズでは決まって法定パートの最後、犯人を追い詰め切った場面で「追求」というテーマが流れ、ここぞとばかりに盛り上げてくる。この瞬間が逆転裁判の醍醐味といってもぜんぜん過言ではない。この「追求」はシリーズごとに異なっていてどれもカタルシスを感じさせる爽快な音楽なのだが、大逆転裁判の《追求〜大逆転のとき》はオーケストラな曲調も相まって壮大さが段違いになっている。(シリーズの中では新しい方の作品なので、技術的に容量の大きい音楽を内蔵できるようになったということももちろんありそう)

『大逆転裁判』の多くの楽曲はメインのベースラインをコントラバスが担当している印象(たぶん)だが、《追求〜大逆転のとき》ではチューバの力強い低音が曲の頭から入っていてその厚みにいきなり心を持っていかれる。そして後半ハーモニックリズムが倍になってからの、クライマックス感を煽りに煽るアコーディオン主体のメロディ、よすぎる...。ここでもチューバやティンパニの迫力ある低音がしっかりとした存在感で支えていて、全方向からくる音情報がひとかたまりのドラマチックを作り上げている、よすぎるってば!

追求への前奏曲

この楽曲は先の《追求〜大逆転のとき》のモチーフを織り交ぜながら、このさき追求に向かっていくであろう予感をばっちばちに感じさせてくれる。

そして実際にその予感をしっかり受け取って、《追求〜大逆転のとき》へと繋がっていく、まさしく前奏曲として位置付けられた曲になっている。

弦楽器とハープがいまにも燃えそうなくらいの熱をぐっと押し込めるかのように、荘厳に、アップテンポに演奏する。この予感の感じさせ方がほんとうにほんっとうに圧巻。


ところで、『大逆転裁判』は1と2が前後編のようになっており2作をとおして物語が完結するのだが、この《追求への前奏曲》は前編である1では一度も登場しない。

2も終盤に差し掛かり、法廷パートをすでになんども繰り返したここにきて(!)はじめて新しい盛り上げ展開として登場する。なんだなんだこの展開は!聞いてない!となるわけで、この登場のタイミングというのもつよいインパクトをのこす大きな要因になっている。

推理大戦


『大逆転裁判』には、シリーズほか作品にはない「推理パート」というものがある。これは探偵シャーロックホームズ氏による “真相を超えて行き過ぎてしまった迷推理” を、現場の情報をもとにこちら側にもどすというパート。(本作をプレイしたことがない人にとっては何のことを言っているかわからないかも...)

この推理パートにもいくつか専用の音楽が用意されているのだが、そのすべてが「7拍子」でつくられている。キャラクターとして一癖も二癖もあるホームズらしさが変拍子に込められているのかもしれない。

推理対戦・序

前編の最終章、あと一歩というところで証言が崩せず危機に陥ってしまうが、ホームズの登場で状況が一転、最後の尋問パートへと繋がっていく。

この場面で流れる楽曲が《推理対戦・序》。

弦楽器の神々しいイントロで冒頭一気に惹き込まれ、そこからは終始激しくリズムを刻むパーカッションに鼓舞される。ホームズからパスを受けて繋がった尋問パートということもあり、しっかりと7拍子の系譜も踏んでいる。

これまで尋問パートの音楽演出は《大尋問〜モデラート》→《大尋問〜アレグロ》という1つの型ができていると思っていたのに、その型をおもいっきり破ってはじまる最終局面、あつすぎる。

(ほんとうはこの曲がはじめて流れるのは第2章の推理パートかと思うが、最終章でのこの演出がとてもとても劇的で忘れられない)

そのほか細かいすきな曲をいっぱい書く

書く。

大追求〜成歩堂龍ノ介の覺悟

なんとなんと追求の上がある。《追求〜大逆転のとき》のリズムを受け継ぎつつ、調は1つ上にあがったことで明るさが加わり「追い詰め切ったほんとうのクライマックス」を感じて震えてしまう。

シリーズに共通するテーマ「意義あり!」のメロディがさらっと組み込まれているのもよいし、なによりこの曲が流れるのは作中で一度だけというのもよすぎる。

御琴羽寿沙都〜新世界に咲く花

成歩堂龍太郎〜意義あり!

《御琴羽寿沙都〜新世界に咲く花》は法廷パートが終わったあと、法務助手である寿沙都さんとの会話シーンなどで流れる。この曲はタイトルのとおり寿沙都さんのテーマになっており、主旋律を弾く琴の落ち着いた和の音色が安心感を誘う。

2の第一章では寿沙都さん扮する成歩堂龍太郎が弁護士として法廷に立つことになる。相手を追い詰めるここぞという場面で《成歩堂龍太郎〜意義あり!》が流れるのだが、これは1からずっと聴いてきた《御琴羽寿沙都〜新世界に咲く花》のメロディを引用し、和の雰囲気もそのままに、本家「意義あり!」のリズムを踏襲した勢いのある楽曲になっている。目を閉じたら桜吹雪が見えてしまう、これは。

最終弁論

陪審員の意見が有罪で一致するとその時点で判決がほぼ確定してしまう。このとき弁護側の最後の説得の機会として「最終弁論」があり、陪審員の発言から手がかりを引き出して矛盾をぶつけ、なんとしてでも過半数の意見をひっくり返しにいく、というパートである。

そこで流れる《最終弁論》、淡々と拍を弾く弦楽器は尋問パートのような雰囲気をつくりつつ、刻むカスタネットの音やハープシコードが尋問パートとは異なる緊迫感を足している

曲後半、弦楽器全体がリズミカルなフレーズで下がっていく展開の力強さ、とくに弓で弾くコントラバスの振動は、窮地に立たされながら逆転の一手を狙う戦意のように聞こえてとても奮い立つ。実はゲームプレイ中一番すきだったのはこの《最終弁論》。

終幕組曲【忘れじの旋律】

エンディング曲は組曲になっている。個々の音楽どれ1つをとってもすきなのだから、組曲があまりにさいこうだ!というのはそれはそうに決まっている、何度でも見たい聴きたいエンディング。

各曲どうしの繋ぎだったり、《大尋問〜アレグロ》なんかはけっこうアレンジが変わっているし《追求〜大逆転のとき》も調が変わっていたりするし、8分47秒間ずっといい。


結局書ききれないのだけど、おおげさではなくぜんぶいいほんとうに。北川さん前馬さん寺山さんありがとうございますありがとうございます。


おわり!

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