『孤独の音色』リファレンス
ボカコレ2023夏、今回も素敵な楽曲をたくさん聴けてよかったです。
4回目の参加になるのですが、あらためてこのお祭り期間はつくる人きく人問わず音楽がすきな人で溢れていて、それが幸せ空間でした。みんな音楽の話していてさいこうだ。
つくり手としては、言葉や表現をテーマに書いた曲で参加しました。
今回もこの楽曲をつくるにあたって影響を受けた作品たちをいくつか並べてみます。
[歌詞]陰る草に誘うは花の香揺らす波に伝う
大きな雲が太陽に被さって、庭の生き生きとした緑の草たちが雲の影に覆われていき、風が草を揺らしながら地面をなぞるその動きを眺める。
薄っすらとした花の香りでふと我に返ると、とおくから風に乗ってここまで届いたのだろうかと思いを馳せながらそこにある風に意識が向き、いま自分がいるこの部屋の空気をも動かしていることを肌で感じる。
みたいな、そんな情景を書いた歌詞ですが、この部分は新古今和歌集の以下の2つの歌から想起されたビジュアルイメージやその表現,言葉に強く影響を受けています。
1つ目は、夏の日差しに照らされて暑そうによじれていた野原一面の草が、雨が降りそうな雲に覆われていく様子を詠んでいます。
2つ目は春の目覚めです。庭から吹いて入ってきた風で目が覚めて、自分の袖からはその風が運んできたであろう桜の香りに気づく、そしてついさっきまで見ていた美しい春の夜の夢を想うような歌です。
どちらもたった31文字で、ダイナミックにあるいは繊細に美しく、空気の流れや振動、その感触、音、香りまでも鮮明に再現させる描写だ、すごすぎる、と衝撃を受けるとともにぐさぐさに刺さりました。
これらから受けた情景のイメージや表現を一部借りて書いた歌詞でした。
[トラック]タップダンスの音
楽曲内、特に中盤〜後半にかけてタップダンスの音を用いています。このタップダンスを曲に入れ込むという着想自体はJurassic5の『SwingSet』にあります。
思いっきりスウィングする曲調のなかでタップダンスパートが挟み込まれたり畳み掛けるようにDJのスクラッチパートがやってきたり、後半ブレイクビーツにあるようなリズムに切り替わったり、手法さまざまな音表現が盛り込まれているのが印象的な楽曲です。
『孤独の音色』内では、言葉に代わって自分自身表現する手法の1つという意味をタップダンスに持たせています。中盤の熱を込めた(つもりの)ピアノパートも同様です。
[構成]繰り返さない曲構成
最近のボカロ楽曲ではそこそこある印象ではあります。いわゆる1番が終わったあと同じパートを繰り返すのではなく、新しいパートに飛んだりキーが変わったりする構成のことを言っています。
今回の楽曲では、中盤の間奏のあとにキーを下げて主役の楽器も変えることで雰囲気をガラッと変えていたり、その後も登場していないパートを連続させています。
こういった構成はずっと真夜中でいいのに。の影響がすごく強く、いくつかの楽曲からその刺激を受けていますが特にはこの曲。
サビ以外ぜんぶちがくて、同じパートどころか似たパートすらないし、最後の最後まで息つく間なく次々やってくる新しい展開に畳み掛けられる。はじめて聴いたときはショックで転がりそうだったし、100回嘔吐氏ACAね氏尊敬しかないよの気持ちでした。
同じパートを繰り返す構成は、1回目と2回目に対比の意味を強く持つ点がすごく良いなと思い、一方で繰り返さない構成は展開の多さから「時間経過による変化」が際立つ点に魅力があるなと思います。
曲が進む中で考えや感情が深化したり気づきを得て心情が変化したりすることをより聴き手に伝えるように感じます。
ちなみに、こういった繰り返さない構成は今回の楽曲に限ったことではなく『文明と呼吸』や『夏の残量』でもそうで、特に夏の残量の方はこの楽曲にくらった衝撃の反動で作ったところも大きかったりします。
[トラック]ピアノの低音を叩く
1:59のピアノパートのはじまりで低音をガーンと鳴らしてます。
これは→Pia-no-jaC←『Paradiso』、1:49あたりで思いきりピアノを叩く演奏の影響です。
アップライトピアノを腕を振りかぶって肘から下で叩いているのですが、こんな雷のような音がピアノから出るのかという驚きと、ていうかピアノって叩いていいんだ(だめ)と、強く記憶に残りました。
表現することの熱を込めたいパートだったので、音の綺麗さより濁っていても力強い音を入れたく、作曲時は大きく手を開いてMIDI鍵を叩きました。テイク5くらいやりました。
[トラック]ピアノでベースを弾く
中盤で転調してからウッドベースがいなくなり、そのままベース不在で激しめのパートに進んでいきます。
はじめは1:42でベースを復活させていたのですが、ピアノに弾かせた方が力強さが強調されて曲に合うなと思って途中で変更しました。
ピアノでベースを弾くこと自体は別に珍しくないかと思いますが、バンドサウンドで楽器としてのベースがいる中で楽曲の一部においてのみピアノがベースを引き受ける展開は、花譜『モンタージュ』で良いなと思った影響な気がします。
終始疾走感がある曲調のなか落ちサビに入っていく2:49で、これまでのサビと同じベースをピアノが引き継ぐ展開、あつい。
(と、花譜さん声よすぎる、よすぎる〜)
おわりに
今回の歌詞のほぼ直訳みたいなものもここに書いています、もしよかったらですが読みながら聴いてみたりすると楽しいかもしれないです。
次回のボカコレ、まだなんにも思いついてない状態ですが良い曲つくるお約束はしますので、引き続きよろしくおねがいしますm
と、今回のボカコレでもたくさんいい曲に出会ったのですが、特に刺さった曲たち紹介してるので、こちらもきいてね。
読んでいただいてありがとうございました、またね〜〜
あそ
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