『孤独の音色』直訳

思ってもいない言葉というものが、あまりに世に溢れている。
僕の心から吐き出したほんとうの言葉も、この世界の中では偽りと区別できないのだ。

もし僕が王様なら、世界中の人々の言葉を買い占めて無くしてしまおうか。そうすれば、誰かが無意識に放った嘘の言葉に期待をしたり、疑ったりしたりしなくて済むのだろうな。


大きな雲が太陽に被さり、生き生きとした庭の草が影に覆われていく鮮やかな情景に息を呑む。

ふと、薄っすらとした花の香りで我に返る。どこか遠くから風に乗ってここまで届いたのか、その風は部屋の空気を動かす。僕のこのまばたきの音も手触りがあるかのようにここにあって、この空間を繊細に振動させながら君に届くのだろうか。


心を通わせることで人は真に分かり合えるのだとすると、言葉は所詮人間の表層でしかなく、心を乗せて届けるにはあまりに脆いのだ。

自分の内側にあるあらゆる感情から生まれる熱を、全身を使って表現し、音として皮膚の外側に発散する。震えるこの室内の空気はまるで自分の一部のようで、伸ばした手の指先のもっと先の届かないはずの壁や天井や、この空間すべてに触れられるほど鮮明に感じとれる。


言葉が君の声に乗って聞こえてくるけれど、そのどれだけがほんとうかは分からない。君のその喉のもっと奥に多分あるのだろうけど、君が何者かという答えにはたどり着けない。

例えば、波のない湖の数メートル深く、しんと静かだけど声は届かないその底で、僕を包む無数の水分子の動きと閉じた目蓋に透けて届く月の光の揺らぎから、君を感じることができるのかもしれない。

人間は本質的には孤独だ。誰とも本当の意味で分かり合うことはできない。
その孤独に意識を向け覗き込むと、底は深く暗く見えないが、静かで暖かく、それ自体が本当の僕自身であると実感する。
その感覚のもとでは、これまで生きる中で多くの人とたくさんの言葉を交わして形成されてきた僕という人物像はあまりに価値のないものにすら感じる。

まあ、そんなことを思って書くこの歌詞この文章だって、本当の意味では伝わらないのかもしれないね。たかが言葉なので。


取り繕えない飾ることのできない今この0.0秒の瞬間の連続のなかで、僕の体の内から表現する音で満たされたこの空間こそが、不安定で曖昧な僕自身に明確に境界を与えて確かな形をつくる。
これは見えるものを見るとか、聞こえるものを聞くとか、そういった陳腐で表面的な感覚で認識できるものを言っているのではなくて、時間的にも空間的にも、もっと高次元の視点からも、僕と世界を細かく細かく切り刻んで、一体化するのだ。


あそ / aso


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