あの子と僕らの7日間戦争

月曜日

「やっぱり転職しようと思う」
去年2月に一緒に入社したCに、いつものランチ場所サンマルクカフェで言われた。

Cよりも留学を決めている私の方が先に辞めると正直思っていたけど、やっと目が覚めたらしい。

Cは少し前に酷い目に遭っていたので、自分で逃げ出そうとしていることがすごく嬉しかったし、絶対に応援したいと思った。

--------------------------------------------------------
この2週間ほど前、Cがコロナにかかってしまったことが分かった。
熱も出てたし相当しんどそうだった。
なのに、会社の上層部からの「ワクチンを打たずにコロナになって皆に迷惑かけたんだから仕事しろ」という謎の圧力により、Cは在宅で仕事をせざるを得なかった。

Cが熱さまシートを貼ってZoomに現れたときにも、お大事に、の一言すら出てこなかった上層部の人間性を疑う社員は少なくなかった。

Cは、「部署の売上が上がってない中で、
休むという選択肢がないように感じたんだよね…」と申し訳なさそうに仕事をしていた。

--------------------------------------------------------
その日は、絶対に2人で退職しよう!と言ってオフィスに戻った。

火曜日

3月に入ってきた女の子が辞めていった。
今度の子は1ヶ月しかもたなかった。
厳しくしたからしょうがなかった、って上の人達は言うけど、指導についていけないのを本人の能力のせいにしてはいけない。

Cと2人会議室に呼び出されて、面倒見てくれてたのにごめん、とは言われたけど、しきりに中途採用者の学力を気にして話をしていたのが気になった。
どんな学校を出た人にでもきちんと教育できるようにしないと、社員は増えない。

学ばない組織だな、と思った。

水曜日

「明日辞めることを伝えようと思う」
帰りに寄ったカレーうどん屋さんでCに言われた。
思ったより早かったCの決断にびっくりしたけど、その勇気がすごくいいと思った。
少しだけお酒を飲んで、解散した。

木曜日

Cが本当に退職を伝えたらしい。
水曜の夜のうちに、上司にアポを取り付けたらしい。

昼前に私も会議室に呼び出される。
聞いてなかったフリをして、話せる範囲で話せることを伝えた。
引き金になったコロナのときの、休む選択肢がないように感じていたことも伝えた。

上の人達の言い分は
「そこまでさせるつもりはなかった。
大人なんだから、本当に辛かったから休ませてくれと言ってくるはずだ。」
だった。

私はよく言うよ、と思った。
休める雰囲気ではない、と思わせる要素なんて、入社してからごまんとあった。
売上上がってないのに帰りづらい、有給も取りづらい、後輩達からも少なからず不満が出ているのを聞いていた。
コロナになっても仕事しないといけない会社なんだ、という不信感も後輩に広がっていた。

結局ものすごく引き止めがあって、Cは一晩考えることになった。
上層部も〇〇しづらい、をなくしていきたいと本当か嘘か、言い始めた。

金曜日

結局Cは続けることになった。
ゴリゴリの営業会社出身の人間は怖いな。
外面だけはいい。

さらに、入社して半年経過していて、ある程度の成果を上げている人は基本的に在宅勤務でいいことになった。
急展開だ。
結果的に私も往復3時間の通勤時間から解放されて、自由に使える時間が増えた。
来週から来ないからね~と言った時の後輩たちの寂しそうな顔は、そんな風に思ってもらえてよかったな、ちゃんと清く正しい先輩をやれていたんだなという気持ちにさせてくれた。

月曜日をしんどく感じさせる要因も減らしたいそう。  

正直、この会社がちゃんと社員を増やすためには、珍しい制度や福利厚生ではなくて上層部の人間性を見直す必要があると思う。

機嫌が悪いのを表に出さないとか、皆がいる前で怒らないとか。
人としてどうなの、と思わせることを減らした方が人は残ると思う。

とか思いつつ、とりあえずはラヴィットを最後まで観れるようになった恩恵をありがたく受けよう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?