終着駅【上】
こんな馬鹿なことがあっていいのか。
がらんとした電車の中。終電の終着駅。誰もいない。扉は「早く出ろ」と言わんばかりに開いている。
無人駅なのか、外は暗く人はいない。いや、いくら無人駅といえど明かりくらいはついているものなのではないか?
俺は立ち上がると電車の中を突っ切る。
運転席には誰かいるだろう。
——しかし誰もいない。
いや、さっき電車は止まったばかりだ。
それに、きっと終電なのだから一通り電車の中を確認するはず。しかし、俺は誰にも起こされなかった。
背筋がぞくりとする。
ネットで有名な駅に関する怖い話を思い出した。せめて銀河鉄道の夜を思い出したいところだ。あれには確かカムパネルラとかいう友人も一緒にいたはずだが。俺は本当にひとりぼっちのジョバンニのようだ。
意を決して外に出るしかない。
俺は暗い駅構内に足を踏み出すのであった。
(続く)