花咲くカウントダウン【2】
【恋の病】
それから、それがニュースになるのはあっという間だった。
「お前のその手のやつ、ニュースで報道されてたやつだろ?」と、クラスメイトから声をかけられる。
「いや、そうだけどさ……」
僕はあからさまに不機嫌な顔をした。
左手から生える芽はどうやら僕だけの不思議現象ではないようだ。
頭の上から生える人、胸に生える人、生える場所はさまざまだが、今この謎の現象が各所で起きているらしい。
『原因不明の奇病?! 各地で混乱相次ぐ』
何ていうテロップが出ているが、当の僕は暢気なものだ。
一応、ニュースになった時に病院で一度検査はされたが、どの人も別に体に害があるわけではないとわかった。そのため、変な目で見られることはあるが特に気にすることもない。
ただ、「手品?」と聞いてきた名も知らないあの子の顔が浮かぶ。
ニュースになったということは、これが手品じゃないこともわかってしまっただろう。
文化祭までに本当に手品を練習しなければならない。
運のいいことに、僕はもともと手先が器用な方だ。だから、練習すればきっとどうにかなるだろう。と、高を括る。
左手の目はそこそこ成長したが、つぼみにもならなければ、ましてや花なんてまだ咲きそうにない。
僕は絶対にこの花は恋心に違いないと踏んでいるから、つぼみにすらならないことが悲しくなる。
まあ、本当はただの奇病なのかもしれないけれど、タイミングがタイミングだけに恋心だと信じたいのだろう。
この花が咲くころには、僕の恋も実るといい。
何というか、最後の葉っぱが散るころに私の命も終わるのだろう……とかいうやつを感傷的だと思っていたけれど、実際自分の身に起こると重ね合わせてしまう気持ちもわかる。
いや、自分の手に生えてるんだからあれとは状況が違うのか?
けれど、恋なんて原因不明の奇病なのかもしれないな、とか思ってしまう。
だって、僕はあの子の名前も知らないのに、恋に落ちてしまったんだ。
そんなの病気みたいなものだろう。それも、なんとも心地の良い病気だ。
恋の病とかよく言ったものだなと思う。
僕は左手の芽を右手でつつきながら、「早く咲いてくれよな」とひとり呟くのであった。
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