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カリブの女王 第14章 タミアワのラグーン⑥
「カイマンワニだ」
「あぁ! こっちに来ることにしたってわけか!」
「2、3匹いますね」モコが言った。
「俺たちのことが煩わしいのかな」カルモーが言った。
霧が晴れ、夜が明け始めたため、暗さが少し和らぎ、水路で起こっていることを見られるくらいになった。6メートルはあろうかという醜いカイマンワニが一匹、マングローブの茂みから離れ、海賊たちのいる小島にじりじりと向かって来ていた。ワニの背中はざらざらしていて、ちょっとした庭みたいだった。板状の骨が下に敷きつめられたうろこは泥だらけでうろこの間に沼地の草、そして葦も何本か生えていた。
ワニは人間たちを騙すつもりで頭を水中に沈め、息をするために時々鼻先を外に出すだけだった。しっぽも水中だったが、しっぽを揺らすと、音がしてあとに波が立った。それで、そこにいることはたやすく分かった。
「やつめ、俺たちを驚かすつもりだ」カルモーが言った。「だが、木の幹と間違うほど俺たちゃバカじゃないぞ。そうだろ、モコ?」
「もっと近寄らせるんだ。ワニをどう扱うかご覧あれ、だ」モコが答えた。
「銃は使わないのか?」
「無駄だよ、相棒。あの骨の板で銃弾は潰れちまうからな」
「それに、銃声がスペインのスパイに気づかれるかもしれない」黒い海賊がつけ加えた。
モコは、大木の枝を見つけると、それを手にした。ナイフで枝を掃(はら)って、水路をふさいでいたマングローブの中へ分け入った。
カルモーとバン・スティラーは水生植物のくねくねした枝の中に身を潜ませている。一方、黒い海賊はヤーラを木の幹の後ろに避難させた。
カイマンワニは、潟へと流れこむ緩やかな流れに身を任せ、ゆっくりと確実に進んでいた。海賊たちをうまく騙すために尾は動かさず、足を見せ過ぎないよう細心の注意でわずかに動かしていた。
小島まであとわずかの距離に迫った時のことだった。別のカイマンワニが突然姿を現わした。半分ほど水没した砂州に育っていた水生植物の茂みから出てきたのだ。
一瞬後には3匹目がざばっと水中から飛び出し、2匹の間に激しく身を投じた。
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