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カリブの女王  第14章 タミアワのラグーン⑦

「わあっ!」カルモーが驚いて叫んだ。「何が起ころうとしているんだ? あのワニどもは俺たちを嫌っているわけじゃなさそうだな」
「そうだな、相棒」モコが答えた。
 鋭い叫び声が、続けざまに2つ起こった。別のカイマンワニが2匹、しっぽで激しく水を打つと、水路の真ん中に身を躍らせた。1番小さいワニが身を引いて、島を囲むマングローブに寄り掛かった。残りの4匹はものすごい激しさで互いに飛びかかり、口を開き、恐ろしい歯を見せた。怒った雄牛のように鳴き、激しくしっぽを振って、波を泡立たせた。
 4匹のカイマンワニは互いに激しく襲い合い、相手のあごを砕こうとした。ものすごい声で鳴き、赤猿とホエザルたちを黙らせてしまった。
 水飛沫が四方八方から起こり、大波が小島のマングローブに激しく寄せては砕けた。
 水生植物の中で寝そべっていたカイマンワニが1匹、まるで自分には関係のないことのように恐ろしいワニたちの戦いをのんびりと眺めていた。しばらくすると4匹のカイマンワニの一匹が、恐らく一番弱かったのだろう、戦いから離脱した。驚異的なあごの力でそのワニと戦っていた敵はまず尻尾を、次に鼻先を噛みちぎってしまったのだった。
 体を切断されたかわいそうなワニは血だらけになって、マングローブのそばでなすすべもなく身をよじり、水を赤く染めた。
 数分後、2匹目が沈んだ。一時的に手を組んだ他の2匹に攻撃され、やっつけられたのだ。
 しかし、勝者とて哀れな姿になっていた。1匹はあごをくだかれ、もう1匹は前足を1本失っていた。それでも2匹の敵から解放されるなり、残った2匹は残忍な鳴き声を上げながら、疲れを見せずにぶつかり合った。
 あごをくだかれたワニは何度か噛みついたあと、海賊たちがいる小島へ逃げようとした。怪我のせいで敵にうまく襲いかかることができず、身を守るにはしっぽしかなかったのだ。
 ワニがやって来るのを見て、致命傷を与えようとモコは枝を握りしめた。だが、無駄な用心だった。というのも、敵がそのワニをやっつけようと追いかけてきたからだ。新たな戦いは、小島からほんの少しのところ、はしけ舟の近くで繰り広げられた。

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