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[第10回]シェリー樽のエンジェルズシェアとアウトターンの関係を計算してみた☆ウイスキーと科学と数字☆

こんばんは、A Whisky Studentでございます。
皆さんはシェリー樽熟成のウイスキーって好きですか?
私は大好きです。秋の夜長や冬の寒さとともに好きな映画や音楽や本と一緒にシェリー樽熟成のウイスキーを楽しむのは素晴らしいですよね。
(今回はちょっと引用参考文献は後出しになります。)

ひとくちにシェリー樽と言っても様々なものがあるようです。
ここでその種類(オロロソやPX、マンサニージャやアモンティリャードなどのシェリーのカテゴリではなく)を、私が読んだり聞いたり見たりしたことあるものだけを挙げてみますと、

①実際にシェリーのソレラシステムで使用されていた樽
⇒100年とか使うものだから材は堅い木、アメリカンホワイトオークや栗とかが使われたそうな。表面が黒く塗装されているのが標準です。

②実際にシェリーの輸出に使用された容器としての樽
⇒樽での輸出ができなくなる1980年代まで発生したそうな。材は手に入り易い木、スパニッシュオークなどのヨーロピアンオークが多かったとか。

③①②の樽を材までバラして組直したもの
⇒複数の樽の材のハイブリッドになる、①はヨーロッパ大陸、②はスペイサイドクーパレッジなどで作られた。蟻溝を切り直したり、長さのまちまちな側板の端を切って長さを整え、結果樽が少し小さくなることもあるようです。見た目では表面に塗装はなくむしろ塗装を削った跡が見え、側板のつなぎ目が凸凹しているのが特徴です。

④シェリー樽っぽい新樽にシェリーっぽい濃い酒を入れて蒸気で染み込ませた樽
⇒すでに廃れている技法のようですが。

⑤シェリー樽っぽい新樽にシェリーっぽい酒を入れて数か月~数年熟成ぽい感じのシーズニングを施した樽
⇒現在の主流はこれですよね。材もアメリカンやヨーロピアンなどとクライアントが指定できるようです。

規格ものでサイズが一様なバーボン樽とは異なり、シェリー樽は形も大きさも様々なものがあるわけです。⑤はサプライヤが一緒なら均一そうですが。
420Lを下回るシェリーバットもあれば、540Lを超えるシェリーバットもあるそうな。

前置きが長くなりましたが、ここから本題です。
初年度エンジェルズシェアが3%前後、以降2%前後として10年、20年、30年、40年と熟成した時のアウトターン(払い出しして瓶詰した本数)はどうなるのか。
ちょっと計算してみましょう。

エンジェルズシェアと樽容量を変えて計算したアウトターンマトリックス

樽容量、熟成年数、エンジェルズシェアと本来三次元になるものを無理やり二次元に落とし込んでいるので見づらいですが、この表の見方を例として1番左の列で説明します。
エンジェルズシェアが初年度2.5%で2年目以降1.5%としたときに、10年後には原酒がもとの85.1%(0.851)残り、それは樽容量500Lだったなら425.5Lでおよそ608本分ということを示しています。
樽容量450Lだったならそれは383.0Lでおよそ547本分、樽容量550Lだったならそれは468.1Lでおよそ669本分、ということになります。
伝わりましたでしょうか。
最もお伝えしたいところ、見て頂きたいところは太字部分です。40年熟成のときの、この表の最大と最小です。それを比較します。
樽容量550Lでエンジェルズシェアが初年度2.5%2年目以降1.5%なら
 40年後の残量は297.4Lでアウトターン425本
樽容量450Lでエンジェルズシェアが初年度3.5%2年目以降2.5%なら
 40年後の残量は161.8Lでアウトターン231本
じつに倍近い違いが出てきます。
この数字を見ると、40年熟成に近いバットで400本以上とれたからといってリラックだとは断定するのは難しいような気がするのです。


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