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リカちゃんの話②私の仕事

たくさんのドールの中で、私のどこか良かったのかおばさんに聞いたら、値段と髪型と靴が決め手になったんだって。ドレスメーカーになりたいおばさんには豪華なドレスは不要。以前は下着姿のリカちゃんが780円で売ってたらしいんだけど、今はなくて残念がってた。そして、いろんな服に合いそうな髪型と髪色で、何にでも合わせやすそうな黒い靴の私が選ばれた。個性のない髪型の私が、工場で黒い靴をはかされた時に運命が決まったのかもしれないわ。

おばさんが子どもの頃のリカちゃんは下着を履いていなかったんだって(驚きよね)。ドレスを脱いだら、私がショーツをつけててびっくりしてた。そしてピアスにも驚いてた。おばさんが子どもの頃は、小学生でピアスなんて不良中の不良のスケバンだったそうよ。だからつけ外しできるのかもわからなくて、しばらくはどんな服にもおんなじピンクのピアスで撮影してて、それってどうなの?って思ってたんだけど、検索でOKと見つけたらしく、さっそく新しい赤いピアスを作ってくれたわ。

仕事の方は…。何枚も角度を変えたり、ライトを変えて撮影して、結構モデル業は真面目にやってるの。おばさんも、画像にお店のロゴを入れたり、パソコンで商品アイテムの表を作ったり、熱心にやってて、大人のお店屋さんごっこって感じね。張り切って根を詰めてやってたけど…全然売れないの。なんかオバサンくさいのよね、…と思ってたけど言わなかった。一生懸命だったから、ちょっと可哀想かと思って。

値段を下げたり、付録を追加しても売れなくて、これって、このまま売れなかったら、おばさんお店をやめちゃって、私はモデル廃業!?また箱詰めに逆戻り!?と気づいて、正直、気が気じゃなかったの。おばさんのノートには一年分の簡単なアイデアが書いてあったから、一年は続けるかもだけど、その先、どうなるか心配で。ここに来て3ヶ月ほどだけど、子どものいない静かな家で、モデルをしながら暮らすの、案外気に入ってきたから。

そしたら、売れたのよ!おばさん、大よろこびで踊ってたわ。ひとセット売れて、受け取った同じお客さんが可愛いからってもう一つ買ってくれたらしいの。それって、ホントに気に入ったってことじゃない?へえ〜って思って、私の着こなしが良かったから、良いお客さんの目に止まったんじゃない?って、ちょっと誇らしい気になったのよね。そしたら、そのお客さんはリカちゃんオーナーじゃなくて、「リカちゃんより、うちの子の方が似合ってます」ってわざわざコメントして来たらしいの!ナニソレ!?失礼しちゃう。モデル魂に火がついたわ。

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