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【ライブレポート】2/20(月)THE ORAL CIGARETTES『2MAN VS TOUR「MORAL PANIC」』@KT Zepp Yokohama(Text by 蜂須賀ちなみ )

THE ORAL CIGARETTESの全国対バンツアー『2MAN VS TOUR「MORAL PANIC」』が2月20日、KT Zepp Yokohama公演よりスタートした。

全国7都市を巡る『2MAN VS TOUR「MORAL PANIC」』は、THE ORAL CIGARETTESにとって約3年ぶりの対バンツアー。2020年2~3月に予定していた『COUPLING TOUR「Tonight the silence kills me with your fire」』は新型コロナウイルスによる感染症拡大の影響で途中で中断、振替を試みるも残念ながら叶わず、最終的には中止になった。
そして今回、3年越しに対バンツアーが実現。さらに、コンサート開催におけるガイドラインが緩和されたことに伴い、このツアーから、不織布マスクを着用したうえで声出しが可能になった。ガイドラインを遵守しながら、ロックバンドとそのファンがライブ現場を守り続けた3年間がここに結実したと言えるだろう。開演前、ステージ袖から注意事項をアナウンスする山中拓也(Vo/Gt)は「声出してええよー!」と嬉しそうだ。オーディエンスが早速歓声で応える。

ライブハウスに最高の遊び場を作るため、また、ライブハウスシーンが着実に前進していることを外の世界に示すため、今回のツアーでは、かねてより親交があり、ライブバンドとして信頼している仲間とのガチンコツーマン形式を採った。このツアーを山中は「僕たちが楽しむだけのツアー」と語る。そしてツアーロゴに“LIVE LIKE ANIMALS”というフレーズが組み込まれているように、来場者に対しても、本能のままに楽しんでほしいと思っているのだろう。

本稿では、ROTTENGRAFFTYが出演したツアー初日公演をレポートする。
【※以下のテキストには、一部演奏曲や演出、MCに関する記載があります。あらかじめご理解の上お読みください】


“京都のロットン、奈良のオーラル”というイメージのある人も少なくないと思うが、THE ORAL CIGARETTESはROTTENGRAFFTY主催のフェス『ポルノ超特急』に2016年以降4度出演するなど、2組は共演経験も多い。ROTTENGRAFFTYのライブのオープニングからは早速2組の関係性がうかがえた。「ただいまより!」「京都からROTTENGRAFFTYです!」「Zepp Yokohama、かかってこんかい!」「始めたいと思います!」とオーラルのライブでおなじみの“4本打ち”をオマージュしたのだ。粋な演出で会場を一瞬で自分たちのものにすると、むせかえるような怒涛の高速メタル「ハレルヤ」へ突入。時にデスボイスを轟かせるNOBUYA(Vo)、N∀OKI(Vo)のツインボーカルも、大地が唸るような音を発しながら攻め入る侑威地(Ba)、HIROSHI(Dr)のリズム隊もかなり刺激的だ。最初の3曲で辺り一面ヘドバンの海と化す。


Photo by かわどう


曲の途中でジャンルもテンポも躊躇いなく変える変幻自在のミクスチャーロックを、フィジカル剥き出しのサウンドで以って爆走。オーディエンスへ熱い言葉を投げかけたり、メンバー同士の軽妙なやりとりを挟んだりしながら、シンガロングやコール&レスポンスを起こしては、自分たちもまた“余力など残すか”と言わんばかりに激しく燃焼する。この日7曲目に披露した「This World」では〈自分次第 おまえ次第〉と叫んだ。人は最終的に孤独だが、だからこそ、この場限りの音楽に熱量を込め、観客一人ひとりに託すのだろう。

MCでは、自分たちのツアーに初めてオーラルを呼んだ時、「ヤングなバンドが出てきた」「ここからまた切磋琢磨していくのかな」と思ったと振り返った。その後、「瞬く間に背中が見えなくなった」と付け加え、他にもいろいろなバンドの背中を見送ってきたと豪快に笑う姿から感じられたのは、“先輩”としての器の大きさ。「山あり谷あり23年。継続することが全て。諦めることを諦めて、ここに立っていることが全て」。そんなMCのあとに披露したのは、バンドの盤石さを感じさせるバラード「ハロー、ハロー」だ。23年続いたバンドの現在地と、コロナ禍の3年間、“諦めることを諦めた”からこそロックバンドとそのファンが取り戻せた喜びの光景が重なる様子が眩しい。観客が灯すスマホライトは希望の象徴だ。

Photo by かわどう

「何度でも言うぞ! “俺が今日生きてんだ”って声、聴かせてくれ! 明日でも昨日でもない! 今、でっかい声を聴かせてくれ!」。ラストは「金色グラフティー」。誰もが認めるキラーチューンだ。NOBUYAとN∀OKIはワンフレーズ歌う度にフロアにマイクを向け、観客はもちろん、特大のシンガロングで返した。「俺たちが世界一素行の悪いロックバンド、京都からやってきました、ROTTENGRAFFTYでした!」というキメ台詞とともに、堂々たるフィナーレ。THE ORAL CIGARETTESのあきらかにあきら(Ba/Cho)は、後にこのライブを「彼らの背中、すごい大きい。偉大な先輩です」と振り返った。ハートをたきつけられたオーラル4人は、果たしてどんなライブを見せてくれるのか。

THE ORAL CIGARETTESのライブは、本家“4本打ち”からスタート。「なんかロットンにマネされましたね(笑)」と嬉しそうにレスポンスするのは山中で、こういうやりとりも対バンの醍醐味だろう。ロットンのライブに刺激を受けた4人は、前のめりな気持ちを早速プレイにも反映させていた。鈴木重伸(Gt)は早い段階から前線に立ってギターを弾き倒しているし、中西雅哉(Dr)は要塞のようなドラムセットが揺れるほど思いきりプレイしている。

Photo by Satoshi Hata

フロアから湧き上がる力強い声に、嬉しそうな顔で反応する4人。今回のセットリストは、みんなで歌えるような曲を中心に組んだそうだ。かねてから親しまれてきたライブ定番曲が観客のコール&レスポンスやシンガロングにより再び彩られるようになったのも大きいが、例えば「MACHINEGUN」など、2020年以降にリリースされた曲たちにも本来の姿を取り戻したような感慨がある。フロアの光景はなかなか戻らないが、だからこそ、ライブで活きるアグレッシブなアッパーチューンにロックバンドとしての証明を刻みたい――。そんな想いの下、コロナ禍で制作された楽曲に新たな命が吹き込まれた瞬間だった。しかし、オーディエンスの声は、彼らにどれほどの力を与えるのだろう。リスナーである私たちはその答えを想像するしかできないが、この日のライブでは、メンバーの感覚の一端に触れられたシーンがあった。ある曲を演奏する直前、山中が想いを語ったシーンだ。彼いわく、しんどい時に書いた曲でも、ライブで演奏し、そこに歌声の渦が生まれれば、「幸せだな」と思えるとのこと。ライブ会場で得られる“この喜びを知っていれば、私はこの先もきっと頑張れる”という感覚は、リスナーもバンドマンも共通なのかもしれない。

Photo by Satoshi Hata
Photo by Satoshi Hata

MCに入るため、一旦暗転すると、ステージ上から「最高!」「あっつい!」「疲れたー(笑)」といったメンバーの声が聴こえてくる。ファンがメンバーの名前を呼べるのも久々だ。フロアからも様々な声が飛ぶが、既に声がガラガラになってしまっている人もいるのが微笑ましい。最初のMCでは山中が自身のツアーで初となる声出し解禁に触れ、「大きな一歩かなと思ってます」「(久々だけど)やってみたら“みんな全然声出るやん!”って感じで、めちゃめちゃテンション上がってます」と語り、「各地で思いっきり声を出して遊んでいきたいです」と意気込んだ。そして前向きな予感や逸る気持ちは、最新曲「Enchant」でも表現される。コロナ禍でずっと抱えていたモヤモヤとした気持ちを、疾走感溢れるサウンドが晴らしてくれるようだ。また、オーラルといえば、山中によるメロディアスなボーカルも持ち味の一つだが、その武器をあえて手離したようなアプローチも新鮮だ。大胆にボーカルを抜いたサビの後半部では、あきら、鈴木、中西が壮絶なプレイを見せる。そこに言葉はないが、言葉なんて要らないと思えるほど、強烈な説得力が音に宿っている。

Photo by Satoshi Hata
Photo by Satoshi Hata

なお、山中いわく、「このツアー、ユルい曲は1個もやりません。全飛ばしでいきます!」とのこと。「このツアーで5キロ痩せましょう」なんて言葉も飛び出すほどハイカロリーなセットリストだが、なかでも天井知らずの盛り上がりを見せたのは「BLACK MEMORY」だ。この瞬間を心待ちにしていた人も多かったのだろう、「全員声出せ!」と山中がフロアにマイクを向けると、〈Get it up〉と特大のシンガロングが返ってきた。ギリギリまで前に出てきて、嬉しそうにフロアを眺めていた鈴木は、その場に寝そべりながらギターソロに臨み、喜びを表現する。それを見て指差しながら嬉しそうにしていたのは山中。その後自分も寝そべりながら演奏し、鈴木の視界を体験して笑っていたのはあきら。しかしここがピークではない。「全然終わらせへん! まだまだ続くで!」(山中)と、中西のタイトなビートをきっかけに次の曲が始まっていく。タイトルコールだけで歓声が上がるほど、ファンに愛されているあの曲だ。盛り上がらないわけはない。

Photo by Satoshi Hata

自分たち4人もみんなと同じように、遊びに来るような感覚でライブハウスに来ているんだと語ったラストのMC、「それが最近の俺らの何よりの幸せです」という山中の発言からはバンドの充実感が読み取れた。「一緒に汗だくになりたい人は全員また遊びに来てください」と初日公演に幕を下ろし、新しいツアーに出発したTHE ORAL CIGARETTES。『2MAN VS TOUR「MORAL PANIC」』は3月23日、HEY-SMITHとのZepp Haneda(TOKYO)公演まで続く。

Photo by Satoshi Hata

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