第3章 豊臣、進軍の決断
徳川家康が発した鎖国の命令は、国内の全大名に対し異国との関わりを断ち切り、日本の独立と秩序を守るための策であった。豊臣家もまた、この命令に従うように通告を受けていたが、オランダとの密かな取引を通じて新たな武器を得ていた豊臣家にとって、この命令はその勢力拡大の道を閉ざされる意味を持っていた。
オランダの使者との密談
豊臣秀頼は、この徳川の命令を前に苦悩していたが、ある日、大坂城にオランダの総督ヤン・ファン・デル・ハーグの使者を名乗る者が訪れ、秀頼に秘密裏に会うよう申し出てきた。
総督ヤン・ファン・デル・ハーグは通訳を通じてこう語った。
「徳川が鎖国を命じたことで、あなたの力が国内に封じられることをお嘆きでしょう。我々オランダは、豊臣家のさらなる栄光を望んでおります。今こそ徳川に対抗し、再びあなた方が日本の中心となるべき時です」
秀頼は慎重な表情を保ちながらも、その言葉に興味を引かれた。「我々の力を求めるのか。だが、徳川の勢力は未だに強く、我らが正面から抗うには難しい」
総督は、穏やかな笑みを浮かべて答えた。「我々は豊臣家の力を信じております。加えて、あなた方が我々と手を結ぶならば、新たな武器と兵を提供しましょう。さらに、京都を攻略し、天皇陛下を通じてあなたの権威を取り戻すための手助けもいたします」
その言葉に秀頼はしばし黙考した。
秀頼と家臣たちの議論
総督の提案に対し、秀頼の側近たちも激しい議論を始めた。老臣の一人、片桐且元が慎重な表情で口を開いた。
「秀頼様、我々が異国の力を借りるというのは、重大な選択です。オランダの言葉に従えば、豊臣家が再び徳川を凌駕することはできましょう。しかし、異国の勢力に頼ることは、いずれ我々の独立を失う道へとつながりかねません」
一方で、若い家臣の一人、真田信繁は反論した。「それは分かります、且元様。しかし、今のまま徳川の命に従えば、豊臣家は確実に力を失い、ただの一大名として生き延びるだけです。オランダが我々に力を貸してくれるというのなら、今こそ彼らの力を借り、再び天下に名を轟かせる時だと思います」
秀頼は深く息を吐きながら、二人の意見を聞いていた。彼の胸には、かつての豊臣家の栄光と父・秀吉の夢があり、家康の下に屈服することには耐えがたい思いがあった。
「且元、もし我々がオランダの支援を受け入れるならば、どのような危険が考えられるのか?」
片桐且元は重々しい口調で答えた。「オランダは確かに我々を助けてくれるでしょう。しかし、彼らは自らの利益のために行動しているだけです。我々が勝利すれば、彼らは日本に対し一層の要求をしてくるでしょう。いずれ日本全土が彼らの掌中にあるかのごとく振る舞う可能性もあります」
秀頼は、オランダと手を結ぶことで徳川を討つ機会がある一方で、その代償も大きいことを理解していた。しかし、若い信繁の意見に耳を傾けると、自らの名誉と豊臣の栄光を取り戻す誘惑が彼の心に生まれていた。
「…分かった。ならば我らは進軍を決めよう。オランダの助けを借りて、我が豊臣家が再び日本の中心に立つために」
秀頼の決断により、豊臣はついにオランダと手を結び、徳川の鎖国政策に反旗を翻すこととなった。
京都への進軍
その後、大坂から出発した豊臣軍は、オランダが提供した新式の武器と異国の兵士たちを従え、京都へと進軍を開始した。豊臣の旗印のもと、異国の軍勢が加わった光景は日本国内に衝撃をもたらし、多くの民衆がその威圧的な進軍を見守った。
そして、豊臣軍は京都の南に位置する伏見で、徳川軍との大規模な衝突に至る。両軍が対峙し、戦闘が始まると、オランダの提供した大砲が轟音を響かせ、徳川軍の陣地に次々と弾幕が降り注いだ。これまでに見たことのない異国の火器の威力に、徳川の兵士たちは一瞬動揺しつつも、家康の命令により強固な防衛を築いて応戦し始めた。
一方、秀頼も前線で兵士たちを激励しながら、自らの決断が正しいものであったかどうかを自問せざるを得なかった。彼の決断は、豊臣家の復権をかけた一大決戦であり、同時に日本の未来を大きく揺るがす戦いの幕開けでもあった。