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沈黙とアップデートと

「僕たちは明日以降で本気出す」を視聴した。

今回の配信は今までの中でもかなり長くて、質問内容も御三方のお答えも、今まで以上に真剣なものが多かったように思う。

これまでの配信では、特にしんどい境遇、辛い現実に直面しているかたがたの気持ちを御三方が受け止めて、同じ目線に立ちながらそれぞれの思いを話すという場面をたくさん拝見してきた。どんな質問にも丁寧に向き合い、笑いを交えつつも親身になって応えてくださる御三方の姿を見て、心が温かくなったり力が湧くような気持ちになる人はきっと少なくないのだと思う。そんな場面をもっと見たい、この気持ちをまた味わいたいという視聴者の思いを受け止めてくださり、10回の配信へと繋いで下さったことは一視聴者としてただただありがたい。

今回はそんな今までの配信の温かさに真剣さや厳しさが加わり、愛を更に感じる配信となった。

個別の質問、ご相談内容に対する御三方とゲストの皆さんの回答は、目から鱗のものもあれば大きく頷かされるものもあったのは言うに及ばずなのでここでは触れないが、今回特にそれ以外で気づいたこと、受け取ったことを書いてみたいと思う。

テキストだけでは感じ取れないもの

本編を通して、かなり印象に残っている場面がある。始まって43分過ぎ、トモノフさんのご相談にみなさんが応える場面で、ひろのぶさんが幡野さんの展覧会で感じたことを話している途中で突如おとずれた10秒近くの沈黙。
その沈黙はひろのぶさんがまた徐ろに話し出して途切れたのだけど、私の目には(少し変に聞こえるかもしれないが)、幡野さんを含む4人が同じ水の中に沈んで静かに相手の温度を、相手の鼓動を、水を伝わってくるそれを、じっと感じている…そんな風に見えた。

誰かとの会話の中で急に話が途切れて沈黙がやってくると、居心地が悪く感じることがあるが、それが未熟な関係性だと尚更だ。けれどもしかすると、沈黙が相手との関係を育むきっかけになるのかもしれない。
沈黙は、相手の次の言葉を待つ時間でもあり、自分が相手に次に伝えたい言葉を探す時間でもある。互いにそう思えた時、そこに信頼が生まれて関係性が膨らみ成長していくのではないか。

そしてこの沈黙は、書いた文字のやり取りには存在しない。書いた文字のやり取りでは、行間や言外に隠された相手の意図は自分一人で見つけるしかない。一方で、会話は即時的だし一度出した言葉は引っ込めることが出来ず相手の記憶に刻まれてしまうけれど、だからこそ大切にしたい関係性ではより適切な言葉を選ぼうとする時、沈黙が生まれる。なので沈黙は真摯さの現れでもあると思う。

沈黙以外にも、笑顔や黙考の表情はもちろん、相手を見つめる眼差しや声のトーン、強弱や話すスピードなど、言葉以外の要素が相手との関係性を作っていくし表しているのだなと、今回の鼎談で特に感じた。互いに相手を尊重し信頼する御三方の間柄だからこそ、温かい空気が流れどっしりとした自然な安心感を観ている私たちも感じることができるのだろう。これってまさに「会って、話すこと」の真骨頂ではないだろうか。書いた文字のやり取りには含まれないそれらの要素は、自分が信頼し尊重する関係性においても同様に、互いの信頼や安心感をより高めることに一役を担っているのだと思う。

まだ終わりじゃない

実は今回の配信の前に次のような質問を送ろうと思っていた。

自分はひろのぶさん、豪さんと同い年なのですが、50歳を過ぎた今、これまでの人生を振り返って、やりたいことはほぼやったし、役目も果たしたように思います。学生時代の独身の友人には「まだまだこれからも攻めて生きないと」と言われたけれど、自分はもうそういう舞台からは降りて裏方として生きればいいのではないかとも思っています。一方で、自分で自分にスポットライトを当てる生き方を降りるような姿勢は、ふとした時に虚しさも感じます。御三方は同世代として今何を感じ、この先何を思って、何を目標に生きていきたいですか。
(出さなかった質問メールの概要)

けれども、経営者という御三方のお立場を考えれば、こんな質問はナンセンスで全く相応しくないと思い、結局送ることは控えた。

ところが配信の中に、この質問の答えになるような場面があった。

ひろのぶさんが幡野さんの展覧会を見に行って、自分が選んだ家族に対する思いを新たにしたと何度も話しておられた。また、今まで気づかなかったいろいろな責任に対してちゃんと向き合わないといけないと、52歳にして初めて分かったとも。

アニさんが50歳を過ぎて、昔仲が悪くなった人、疎遠になった人と自分から関係修復を試みていると話されていた。

この2つのエピソードを聞いて、人生を「攻める」のではなく、自らを変える(認識を新たにする、アップデートする)ことはできるのだなと実感した。

まだまだ自分を終わらせない。

「やることやった」「役目は終わった」「挑戦しなくていい」、じゃない。まだまだ更新できるのだ。
経営者や業界を牽引していく立場だから、というのではない。どんな立場であっても無関係に、柔軟に自分を更新できるのだ。このお二人のエピソードは凡人の自分にもちょっぴり勇気を与え前向きにしてくれた。


相談内容に向き合い披露してくださるエピソードの中には、直接的でなくても思いもよらない形で、今自分が抱えているモヤモヤを晴らしてくれることもあるのだとわかった今回の配信。でも次回以降は勇気をだして、また質問を送ってみようかな。うん。そうしよう。書けたら書く。


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