スナックとコミュニティ
昔からある言葉だけれど、最近「コミュニティ」という単語がやたらと目に付く。
社会人になってはや5年、学校というわかりやすいコミュニティを離れて随分経つからかもしれない。
ここ数年、所謂インフルエンサーたちが運営しているオンラインサロンが定期的に炎上してネットを賑わせているせいもあるだろう。
(某プ○ル関連のサロンの大炎上は記憶に新しい)
そんなことを思いながらゼミのOB Slack(これも一つのコミュニティだ)をスクロールしていると、先生の呟きが目に入った。
大学院時代のコミュニティ作りに関する話だった。
「毎週この日に、僕はここでランチを食べる。誰も来なくても。もし集まりたい人がいたら来るといい」(原文ママ引用することをお許しください)
これは、多くの院生が他の研究室の人との関わりを持たずにタコツボ化しつつある、という課題を解決するための取り組みだったそうだ。
最初は顔を知っている子がポツポツと来るだけだったのが、だんだん人数が増え、なんだかんだとディスカッションをするようになり、いつのまにやら一種のコミュニティが形成されていたという。
この呟きを見て、私が最近よく参加しているとある「スナックイベント」を思い出した。
元々高級レストランでサービスをしていて今はフリーで働く私の友人の女性が、不定期(コロナと緊急事態宣言の様子を見ながら大体月1)で開催しているイベントだ。
告知は彼女のSNS(インスタグラム)と参加者の口コミのみ。
失礼ながら彼女はインフルエンサーではなく、おそらくSNSのフォロワーのほとんどは彼女の友人。
告知も直前にストーリーを流す程度。
そのため、スナックに集まるのは彼女の友人と友人に連れられてきた人がほとんどだ。
街中のスナックと同じように、彼女は「ママ」としてカウンターに立ち、酒や料理を振る舞いながら客たちとお喋りをする。
そうするとそのうち、初めましての客同士も会話するようになる。
緊急事態宣言下ではなかなか言い辛いが、お酒も入っているため話が盛り上がり、ママそっちのけで話し込んでいる客たちも結構いる(私を含めて)。
ここらへんも普通のレストランとは違うなと思うが、何よりの特徴は客とお店(「ママ」)の垣根があってないようなものである点だ。
このスナックイベントには回替わりで「チーママ」が登場するが、チーママは彼女の友人たちである。
基本的には飲食関係者だが、そうでない方もいらっしゃった。
また、基本的にママとチーママの2人体制のため忙しい時間帯は人手が足りない。
その場合は、その場にいる客が「手伝い」をさせられる。
ちなみに参加率が高く勝手がわかっている(と認識されているらしい)私は「新規客へのメニュー説明係」に任命されている(たまにスタッフ側かと勘違いされる。一応客です)。
先生が呟いていた院生のコミュニティとこのスナックイベント、共通点は「来る者拒まず、去る者追わず」なところだと思う。
来たい人が勝手に来て、好きなように話して、従来のルールに縛られることなく自由に動く。
結局それが「コミュニティ」に必要なことなのではないか。
先生もSlackで「そののちこのランチミーティングは制度化してきちんと運用されることになったけれど、そうすると参加者がみるみる減って数年でなくなってしまった」と呟いていた。
このスナックイベントも、他レストランのようにもう少し厳しいルールを作ることもできるかもしれないけれど(会員制にするとか時間制にするとか色々)、そうすると今のような空間はきっと失われてしまうのだろう。
前述のオンラインサロンのように「コミュニティを作りたい!」という声はよく聞くし、実際にルールを作って(ものによっては参加費も取って)「○○するためのコミュニティです!」とやっているところも多くある。
それで上手く回っている例もあるだろう。
しかし個人的には「来る者拒まず、去る者追わず」スタイルが一番健全なのではないかなと思ってしまう。
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