ハイボールシンデレラ3〜僕が電車で流した涙〜
大学時代、僕には「ヒロ」という太った友人が居た。
ヒロは身長も割とある上に横幅がかなり広いため、かなり大きく「横幅がヒロ」という別名も持っていた。
ヒロはいつも食事をしていた。大学近くの食堂の人気メニューであった唐揚げ定食の大盛りを、一瞬でたいらげると、食後のデザートにラーメンを食べていた。
その後しばらくしてから、お腹が空いたと言ってコンビニでフランクフルトを2本つも買ってコンビニ前で食べていた。
気の良いやつだし、話も面白いため僕も含めた男からはかなり好かれていたが、
あまり見た目に気を使っておらず、着ているTシャツの英字プリントの部分がいつも伸びきっていたし、髪の毛が変な方向に伸びていた。
それに加えて、少し動くだけで汗が凄いため、あまり清潔感がなく女子には不人気であった。
大学2年生で、男女グループで遊ぶ事も多い中、入学当時はまだ童貞だと言っていた仲間も、いつの間にか彼女が出来ていたり、気付いたら遊び人になっていたりして、気付けば仲間内で童貞なのは僕とヒロだけだった。
「なぁユウ、セックスしてみたいよな。」
「え、あ、セッ?あぁ、セッ…」
「なぁユウ、俺は焦っているよ。」
「別に…僕はそこまで焦ってはないけど…。」
大嘘であった。
僕はかなり焦っていた。周りで童貞が、この「横幅がヒロ」と僕だけだなんて。
僕は小・中学生の時、かなりモテていた。
各クラスに5人は僕の事が好きな女子がいる程だった。
僕は「足がとても速かった」のだ。
ダントツであった。
いつもリレーの選手に選ばれては、圧倒的実力を見せつけて、運動会では女子からの注目の的であった。
様子が変わったのは高校生からだ。
中学ではあまりモテていなかったタツヤが急にモテ始めて、僕は学校1モテる男の横にいる無口で暗い奴へと成り下がってしまったのだ。
しかし高校に入っても、まだ好きといってくれる女子が居てくれて、少し付き合ったが「つまらない」との理由ですぐにフラれてしまった。
その後から、僕の女性からの人気は右肩下がり。女性と目を見て話す事さえ緊張してしまうようになってしまった次第だ。
20歳だった僕はセックスの経験がない事に深く悩んでいたが、ヒロの存在のおかげでまだ正気でいられた。
そんな時、悲劇的な出来事があった。
ヒロに彼女が出来たのだ。
それが僕達の周りでは衝撃的なニュースとして、大きな話題となった。
相手は、同じ大学の一つ下であるアキちゃん。
割と人数の多い大学だったので、学部が違うアキちゃんの事を見た事が無かったのだが、ヒロの彼女という事で仲間達と見に行った。
可愛かった。
低身長で華奢な、笑顔がとても可愛い綺麗な子だった。
ブスであって欲しかった。
僕の中でブスである事だけが救いだった。
僕はその日、バイトを終えて当時住んでいたアパートまで帰る電車の中で泣いてしまった。
僕は涙を流しながら、アパートの最寄駅を通過して、そのまま二つ隣の駅の繁華街で降りた。
そうだ、ソープへ行こう。
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