3月に読んだ本

 1冊ずつ感想書くのめんどくさくて放置してたらどんどん溜まっちゃったのでもう諦めてまとめて書きます!!!!!!!!!!!!

名前と人間(田中克彦)

 言語学という学問の対象から仲間外れにされつづけてきた『固有名詞』についての本なのに、固有名詞を並べ立てるだけの学問を「不潔な学問」と切り捨てて、いかに固有名詞が嫌いであるか、情熱を感じさせるほどに訴えるまえがきが、本当に秀逸。
 手順を踏んで論じていくっていうよりは、思いついたことを可能な限り掘り下げて書いてある、雑感と言えば雑感なんだけど、雑感ていうカテゴリーにはとても収まりきらない凄まじい本だった。この1冊に詰め込まれた知の総量がやばい。


数学する身体(森田真生)

 数学は、極めると文章すら美しくなるのか。
 タイトルには含まれてないけど、本文中で著者も触れてるように、これは明らかに岡潔という数学者について語るために書かれた本で、チューリングの逸話さえその道具に使っている。
 頭から終わりまで、ずっと静謐。不思議な本だった。


春宵十話(岡潔)

 後の世の人間にあれほど美しい文章を書かせる、岡潔という人間に興味が湧いたので。この1冊だけじゃまだちょっとよく分かんないな。
 相当な奇人である、という印象が強く、嫁は大変だったろうな…。


ことばと国家(田中克彦)

 『名前と人間』を読んだあと、そう言えばこの人の本まだ読んでないで積んでたやつがあったなって思い出して、部屋中ひっかきまわしてようやく見つけた。
 母語とはなにか、母国語という表現ではどうしていけないのか、今まで考えたこともなかったので衝撃を受けた。母語の『母』とは文字通りの母の意味で、母語とは、男たちが使う権力のための言語に対して、母から子へ口伝される土着の言葉だと言う。
 そうは言っても日本だと国語=日本語だからいまいち感覚が分かんないよなあ、と思ったんだけど、本文中で言及されてる「中世フランスは南仏の民族・言語を無視していた」っていう事実が、遠回しに今の日本の感覚と結び付けられてるんじゃないかって気付いて、うまい構成だなあと思いました。


生存する意識(エイドリアン・オーウェン)

 植物状態になってしまった人の一部は、意識があるにもかかわらず、肉体の牢獄にとらわれて、意識があることを表明できずにいる。怖い。めちゃくちゃ怖い。怖くて眠れない。
 脳波の変化を計測することで、植物状態の人にイエス・ノー式の返答をさせることができるようになった最初期の頃の、死にたいかどうかを本人に質問する場面、思い出しただけで涙出る。
 最新医療についての科学書であり、意識について問う啓蒙書であり、著者と元恋人とのドラマでもあるっていう、属性が多すぎる本だった。読んだあとなんにも手につかないくらい疲れたけど、読んでよかった。


世界の歴史<2> 古代オリエント

 今まで古代オリエントについて局所的に掘り下げた本しか読んでこなかったから、一旦頭の中整理したくて読んだ。
 歴史系でも科学系でもそうだけど、本にはざっくり分けて目録型と追究型があって、「最初に目録型の本を読んでざっくり全体像を把握してから、個別のテーマを掘り下げていく本を読むべき」ってずっと思ってて実際そうやって本を選んで読んできた。でも今回はじめて逆パターンを試してみて、こういうのもいいかなって、ちょっと考え方変わった。というか、目録型を読んで追究型を読んだあと、ある程度個別の内容が頭に入ったら、もう一度目録型に戻ってみるのも悪くないな、と思った。
 このシリーズ、kindleで手軽に読めてめちゃ便利。歴史とか地理とか、学生時代のいわゆる社会科の授業をほぼ寝て過ごした私にすごく優しい。


レトリック感覚(佐藤信夫)

 やっと読んだあああああああああ!この本何年積んでたか、もう思い出せないし思い出したくもない…。
 レトリックについての技術書というより、レトリックの概要や歴史についての本なので、文章を書く上で即戦力になることはほとんどなにも書いてないけど、それでもめちゃくちゃおもしろい。
 本文中の言葉を引用すると、「共有化されていない、標準化されていない認識を言いあらわす既製のことばは辞書にはのっていない。ゆうべ、あなたひとり《だけ》が、たった一回《しか》体験しなかったことがらには、名前がついていない。」だから「人を言い負かすためだけではなく、ことばを飾るためでもなく、私たちの認識をできるだけありのままに表現するためにこそ」レトリックというものが必要なんです。
 そうだよな…ほんとそうなんだよな…ぐうのねも出ないわ…。
 シリーズ(?)でもう何冊か出ててそっちも積んでるから、可及的速やかに読んでいきたい。


土 地球最後のナゾ(藤井一至)

 少し前に『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』を読んで、農業について興味が湧いて、その前にまず土だろ、と思って読んだ。
 「世界には12種類の土しかない」っていう衝撃的事実と、それを実際に見てみるために世界中で土を掘る行動力。やばい。すごい。いかれてる。最高。文体が軽くて、全く知らない分野の本なのにサクサク読めてよかった。
 これ読むまで、土壌が新しいとか古いとか考えたこともなかった。日本に住んでたら、地震も津波も豪雨も洪水も土砂崩れも当たり前にあるけど、世界規模で考えたらそういうことが全然起こらなくて、土壌が更新されない地域がたくさんあるんだよなあ。
 気温が高くて水にも困らないなら、どんどん農業すればいいと思ってた。でも気温が高いってことは微生物の活動も活発だから、地中の栄養素はどんどん消費されていって、土壌が更新されなければ土が枯れていくばっかりって、そんなことがあるんか…。
 amazonで農業関係の本探しても実践書ばっかりで、これ!っていう学術的な一般書が見つかんない。現実世界の本屋に探しに行くか。
 

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