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全ての原型バルナックライカ(Ⅲc)


バルナックライカⅢcを元に簡単にライカについて語ります。
ソースは浅めで自論推論が混じりますので、ご注意下さい。

最後に作例も一応載せますが、純正レンズは高すぎるのでロシアレンズを使用しています。
その程度の人間が語る内容だとご理解ください。

あらゆる元祖

ライカがどう言った面で原型と言えるのか語ります。

35mmフィルム

135フィルム FUJIFILM ネオパンSS

現在でも一般的にフィルムとして認識されている35mmフィルムは通称ライカ版と呼ばれています。

これは、ライカが35mmフィルムを採用したことが由来になります。

元々はコダックが製造していた70mmフィルムを半裁し、端部を繋ぎ合わせて倍の長さにしたものが始まりで、ライカ登場以前から、映像やスチルカメラに採用されていたため、ライカが元祖という訳ではありません。

何故そのフィルムがライカ版と呼ばれるようになったのか。

当時はフィルムの大きさがそのままプリントの大きさになるベタ焼きが一般的でした。
そのため、二眼レフに用いる中判120フィルムや8×10などの大判フィルムが用いられていました。
35mmフィルムというのは、小さなプリントやそこまで高画質を求めない映像などに用いられており、通常の映画用フィルムと同様にフィルムを縦流しで使う今のハーフサイズを一コマとしたものが多かったようです。

そのため、プリントをしても小さく、二眼レフなどに用いる6×6版と比べると面積比7.2倍をも差があるためスチル用としては不足していました。

そこで、ライカは35mmフィルムを横流しで使い、従来の倍のサイズになる24×36のサイズで撮影するカメラとして開発されました。

そして、プリントの品質の差を埋めるため、ライカはカメラと合わせてプリント時にフィルムにレンズを通して拡大させて印画紙に大きく焼き付ける引き伸ばし機をセットで販売しました。

これにより、35mmフィルムでも商用でも実用可能なプリントができるとして、小型軽量で機動性に優れ、主に新聞などの高画質がそこまで必要でない報道カメラマンなどに広く用いられるようになり、24×36のサイズをライカ版と呼ぶようになりました。

また、今日のフィルムの撮影枚数は36枚撮りとなっていますが、これもライカが当初40枚撮りで計画していたものの、小さなボディに入りきらなかったため、1割削った数字として36枚撮りを採用したのが由来になります。

レンズ交換式

L39マウント

現代でもデジタル高画素機では似たような事がされていますが、当時は大判フィルムを広角で撮影し、必要分だけトリミングすることが一般的でした。
ライカでは35mmフィルムを採用しているため、画質が低く、トリミングには適しません。
そのため、各画角に対応するレンズ複数使い分ける必要があったため、ライカⅠc型よりレンズ交換できるカメラに改良しました。

当時二眼レフ以上のカメラはレンズ交換が出来ないタイプが多く、35mmカメラはレンズ交換式という認識はライカが始まりだと言えます。

大きさ

言わずもながらカメラはフィルムよりも小さくすることが出来ません。
ライカは35mmフィルムを採用したことでカメラボディの小型化に成功しました。

しかし、性能向上とともにライカも大型化し続けました。

タイミングとしては、ファインダーや距離計の内蔵、ボディをⅢcの時にダイキャスト化したことや、M3で巻き上げレバーや高性能なファインダーを搭載した事などが挙げられます。

現在でも実用的?なカメラとして一般的であるⅢcやⅢfの大きさは、その後のカメラに大きく影響を与えています。

ライカコピーは言わずもながら、バルナックライカが登場してから40年近く経った後に、一眼レフの小型軽量化に成功したOLYMPUS OM-1はこのバルナックライカを意識したサイズで作成されてます。

幅や厚みはほぼ一緒

比べてみると幅は同じ136mmです。
また、カメラを握った時の重心や、シャッターへのストローク感などはよく似ており、かなり意識して作られていることがわかります。

時代は変わってSONY α6400と比べてみます。
型落ちカメラがメインの筆者から見れば最新式のカメラになります。

グリップ部からマウントにかけてのサイズが一致する
ファインダーの位置まで同じ

実に孫と子のような年代に差があるカメラですが、オートフォーカスの実装によりカメラは右手で構えるものになった関係で、左側を削っていますが、サイズ感という点においてはバルナックライカと変わりありません。

このようにバルナックライカのサイズはカメラ黄金比とも言え、後世のカメラに多大な影響を与えています。

実際に常用できるカメラか。

原型の設計が1910年代である100年前のカメラは実際に使えるのか。について語ります。

操作性

後のカメラと比べると根本的なスペックは劣ります。
フィルム装填はフィルムを予めカットし、底蓋を外し、スプールに巻き付けて装填する必要があります。
最新のフィルムカメラであれば2秒で装填が終わるのにライカでは慣れても数分は必要になります。
巻き上げもレバーではなくノブ式です。後のOLYMPUS PENが似たような構造ですが、後の写ルンです。のようにダイヤルを親指で素早く巻き上げられるのに対して、ダイヤルを上から摘んで捻るように回す必要があるため、ファインダーを覗きながら巻き上げることが出来ません。
連写する場合には専用のパーツを外付けする必要があります。
巻き戻しも指で摘まなければならず、巻き上げと合わせてやりすぎると指先がヒリヒリしてきます。

巻き上げノブ


ファインダーは構図を決めるビューファインダーとピントを合わせる距離計ファインダーが別になってます。
改良により隣接したことで素早く視点を移せるようになりましたが、それでもかなり面倒です。
戦後ライカコピーカメラの多くはこれを一つのファインダーに集約させていますが、結局この方式は最終型のライカⅢgでもそのままでした。

左が距離計、右が構図用

また、シャッターダイヤルもスロー側はメインダイヤルをスローに合わせてからさらに、ボディ全面にあるスロー用ダイヤルを変更する必要があります。これはスローシャッターが後付けであることが原因であると考えられますが、実際かなり面倒です。

シャッターダイヤルとスロー用ダイヤル

このように初期設計からの制約から根本的な操作性というものには不便さが付きまといます。

操作感

では、バルナックライカを使ってみて不便な点はどのように感じるのか。

筆者は必要な操作一つ一つがかえって心地よく思えました。

巻き上げや巻き戻しにゴリゴリとした引っ掛かりのような不快感はありません。
二重像も室内でもはっきりとして見えて扱いやすく、ファインダーも余分なものがないのでスッキリとしています。

一つ一つの操作が上質であり、カメラそのものの重量感とそのバランス。シャッターボタンの感触や、静かで上品なシャッター音が一種の中毒性を持っています。

カメラの性能は、スペック表には現れないものがありますが、そう言ったところを考えて作られていることが感じられ、カメラ好きが必ず最後にはライカに落ち着く理由が少しわかりました。

レンズ群

ライカLマウント

バルナックライカはL39マウントというスクリューマウントを採用しています。
世界的にライカはコピー品が作られたために、国内メーカーも含めてこのL39マウントを採用していることが多いです。
そのため、Canonやニッカ用のNikonレンズなどが使えます。

特に安価で手に入るのは戦後作られるソ連製のライカコピー用に作られたレンズ群です。

有名なのがインダスターやジュピターです。
戦後間も無く製造されたものは、実際にドイツのカールツァイツやライカから持ち出されたものが使用されており、ドイツ企業が独占していた特許は敗戦により無効とされたため、その後のコピーもライカやカールツァイツなどと引けを取らないものが多く作られています。
レンズは非常に小型ですが、写りは想像以上にしっかりしています。

中古で買うなら

バルナックライカの歴史は長く、2回の大戦を跨いで作られています。

筆者の所有するⅢcは戦中モデルが存在する型番で中にはナチス将校用などもあり、特別なものはとても高価なものになっています。
しかし、第二次大戦後半から直後にかけてのドイツは物資不足などにより外装のメッキの質が低いものがあり、剥がれや摩耗による錆が目立つ場合があります。
Ⅲc以前はボディがダイキャストではなくハンドメイドであるため、ボディの歪みなどが心配です。

普通に買うのであれば、製造が安定してきた時期に作られたⅢfがオススメのようです。
cとの違いはセルフタイマーとフラッシュシンクロ程度でシャッター速度などは特に変わりありません。
個人的には余計なものがごちゃごちゃと付いているfよりはcの方が好みです。
値段は一万円くらい違う気がします。
バルナックライカの相場は1万円程度から在りますが、貴重なものは青天井だと思います。

購入時の確認事項

ここまで数分で分解できる

購入前に確認するべきことは、外装の剥がれや部品の欠落がないか、ファインダー内の二重像がしっかり写っているか。直ぐにわかるものがまず第一。

次にシャッター速度が高速と低速(特に1秒)に変化するかですが、操作方法は間違えないようにしなければなりません。
多分壊れませんが、巻き上げダイヤルを回すのと合わせてシャッターボタンとシャッターダイヤルも一緒に回ります。
そのため、シャッター速度は巻き上げ後に設定する必要があります。
低速は、B-30の表示に合わせた後にボディ表面のダイヤルの上部のポッチを押しながら回します。Tは特殊な動きをしますので間違えないように1に合わせます。
テスト後は必ずロックされる30に合わせる必要があります。
このスローダイヤルの構造は結構繊細なものになっているため、15秒など全速確認したほうが良いです。

困るのは通常のカメラと違って裏蓋が開かないため、シャッター幕が実際に開いているのか確認が難しいです。特に1/1000などはテンションが狂うと先幕が後幕に追いついたまま走ってしまい全く露光していない可能性があります。

あと肝心なのはスプールがしっかりと入っているか確認したほうが良いです。これは、単体で買うと結構します。

基本的にかなりシンプルな構造になっているため、分解本が何度も出版されています。
そのため、細かく整備を行なわれている可能性が高いカメラですが、70年以上は経っているカメラになりますので、扱いは優しくしないと直ぐに壊れてしまうかもしれません。

ちなみに、本体より大抵レンズの方が高いので、まじめにライカで揃えようと思うとそれなりの覚悟が必要です。

まとめ

バルナックライカは、後のカメラに多大な影響を与える存在でした。
撮影には自分で行う範囲が広く、より濃密な撮影体験を得られます。
不便さはその一つ一つの質が下がるとただ面倒なだけですが、上質であることでその行為は快感にも似てきます。
最初は難しいかもしれませんが、機械の性能不足は人が優れれば補うことが出来ます。

現在でも製造精度に優れるライカは半世紀以上がとうに過ぎでも動く個体が多く、M型ライカに比べてもバルナックライカであれば比較的安価に手に入れることが出来ます。

名機と言われるカメラは持っているだけでも満足感があります。
ファッションの一部としても持ち出すだけでもカメラは十分だと思います。
決定的な瞬間は、その時にそのカメラを持っていなければ意味がないのです。
その点で、かっこよくて持ち出すが苦ではないバルナックライカはとてもオススメ出来ると思います。


作例

最後に作例です。冒頭に申したようにレンズはロシアレンズですので、本来のライカの描写ではありませんことをご容赦ください。

カールツァイツのゾナーコピーである3群6枚のジュピター8はよく写ります。

カメラ Leica Ⅲc
レンズ jupiter 8 50mmF2
フィルム oriental seagull400
現像ミクロファイン
自家スキャン

ここまでご覧いただきありがとうございました。

これからも写真関連のnoteを更新予定です。
また機会があればお付き合い下さい。

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