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【2022.06.21】尾崎コスモス『読書を通して自分の内面を知る』

自分が何者か分からないと『目標や目的』は持てない

◇私的要約

『自分はいったい、誰なんだろう?』

複雑な家庭環境で育った著者、尾崎コスモス氏(無料オンラインコミュニティ『書斎倶楽部』主宰)は、周りにいる大人のことが信じられず、やがて自分の存在についても分からなくなり、ずっとこうした悩みを持って生きてきた。

自分が何者かわからない。
何のために生きているのか。
何のために学ぶのか。
何のために働くのか。
何のために存在しているのか。

こういったことを考える時に必要な『基準』や『起点』がわからないため、どこから考えたら良いかサッパリわからなかった。

家に居ても、外に出ても、戦う相手だらけ。常に現実と戦っているため、誰が敵か味方かわからない状態に陥り、現実を生きるのに精いっぱいになってくる。そして戦い疲れてくると、考えることが面倒に感じてくるため、『漠然と毎日を生きる』ようになってくる。『誰かのために』『何かのために』生まれてきたことを証明したかった尾崎氏は、『漠然と年をとる』ことだけはどうしても嫌だったが、一向に解決の糸口を掴めないまま長い年月を過ごしていた。

尾崎氏に転機が訪れたのは、

『風立ちぬ 堀辰雄著 新潮文庫』

との出会いだった。
日本語の美しさ、表現力、言葉の奥行き、言葉の立体感、時間の流れ、色の表現力、心の移り変わり、感情の動き、そのようなものが全てこの作品には『言葉』という目で見える表現で書かれている。この作品との出会いは、尾崎氏に『言葉を知ることで、いかなる自分の気持ちも表現できる』=『感情の可視化』という衝撃を与えた。自分の中に沸き起こる、『何だかわからない今の感情』を言葉にできれば、一人で悩むという苦しみからも解放されるのだと気づいた。
『生まれてきた意味』や『生きている意味』を知ることができるのは、自分自身の心の声を形にできるか否である。自分自身と向き合っていく内省を行うためには、言葉を多く知り、多くの本に出会うことが最も大切なのだと尾崎氏は身をもって経験した。

そうやって苦しみを乗り越えてきた尾崎氏だからこそ、同じように苦しんでいる人がいるはず、その人たちの役に立ちたいという思いから『書斎倶楽部』という読書会グループを立ち上げることができたのである。

◇教育×読書

本書は、
第1章:尾崎氏が本の中に自分の居場所を見つけるまで
第2章:尾崎氏が本から何を学び、どう変化したのか
第3章:読書で自分を見つめることができる
第4章:書斎倶楽部メンバーからの声
第5章:読書の悩みに対する答え
第6章:読書ノートの書き方と効果
で構成されている。

どの章も若い世代にぜひ参考にしてもらいたいのだが、実践的にすぐに模範として取り入れられるものとしては、読書ノートであろう。
ここで紹介されている読書ノートというのは、いわゆる学習の基本型である。
・著者が本を出してまで言いたいことを読み取る         → 読解の基本
・著者が提案する問題提起に対して、あくまでも自分自身で考える → 問題解決の基本
・読書ノートを見返すことで本の内容を簡単に思い出せる     → まとめ方の基本
私は、読書ノートをとるということはつまり、授業を受けたことを自分でノートにまとめることと同じだと思っている。大事なのは、授業の板書を写すことではない。それをいかに自らの血肉とするために、ノートをまとめなおすという作業の中で思考を巡らせながら、自分のわかる言葉や表現で表せているかが大事なのだ。読書も同じで、ただただ読むのではなく、きちんと自分の感想を持てるか、そこまで踏み込んでとらえられるのかが大事なのだろう。読書ノートはそれをしていくためのツールなのである。かつて灘中学校では、中学3年間をかけて『銀の匙 中勘助著』1冊を読み上げる国語授業があったと聞く。その授業は、通読→寄り道→追体験→徹底的に調べる→自分で考えるという流れだったそうだ。まさに自分の血肉となっていく読み方だろう。若い世代にとっての読書というのは、触れていくことで言語力や表現力を養うことや読解力の錬磨に重きを置かれる。それはそれで重要なことだ。だからこそ、多読も大事だと思う。しかし、1つの作品をじっくりと味わうことも大切であるとも思う。
私自身、筆不精なこともあり読書ノートを書くのが苦手なのだが、これをどうにか克服し、その過程で得てきたものを体系化することができれば、若い世代の道標になることができるのではないかと思っている。教育とは、教え育てることでありつつ、教えられ育てられることでもある。私自身がまだまだ本から多くのことを教えられ、育てられている。それを、私が生徒を教え、育てるのに活かしていきたい。

◇私的感想

私も所属させていただいてるオンラインコミュニティ『書斎倶楽部』主宰の尾崎コスモスさんが書かれた本の紹介です。今まで、本を出版されている方に出会うことはありましたが、身近な方が本を出版されるという経験は初めてだったため、ただただ感動しています。
この本の中には、幼少期の辛い体験などがありのままに書かれてありました。それをさらけ出すのはかなり勇気が必要だったことでしょう。また、そこでの葛藤や、どうやって抜け出したか、どうやって本と向き合ってきたかというのは大変参考になります。尾崎さんの読書に対する真摯な姿勢はこうやって生まれてきたのだなと感服します。
『目標や目的を持てない人間』
私も少し前まではそうでした。確かに自分が何者かわからなければ、目標や目的なんて持てないですね。私は自ら進んで教育の場に身を置いている人間です。自分が見てきたことや感じたことを生徒に伝えていくことが、私の使命なのでしょう。『正義』の物差しは人それぞれ違うからこそ、何が正しくて何が間違いかはわかりません。ただ、私にとって『正しい』と思えることを生徒に伝え続け、そして、生徒にはそれを鵜呑みするのではなくきちんと『正しい』かどうかを自らの頭で考えていく力を養ってもらいたいですね。それがセレンディピティを生み出すに違いありません。今はそういう若者を育てていくのが私の目標です。目的はもっと壮大な野望がありますけどね。笑
書斎倶楽部メンバーの佐藤亜美さん、松本冴里さんの読書、書斎倶楽部に対する想いのページもとっても素敵でした。こんな素晴らしい方たちと、月1回読書会をともにできるというのは、本当に幸せ以外の何物でもないと改めて感じました。そういえば、広島県在住の塾講師も何やら良いこと書いていましたね。笑
尾崎さんに、そして書斎倶楽部に、私は生き方や価値観そのものを変えてもらえました。たぶん、尾崎さんに出会わなければ私はここまで読書をしていなかったと思います。どれだけお礼を言っても足りないですが、心から感謝しています。ありがとうございました。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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