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藤井孝彦『伝える準備』

発する言葉はあなたの未来も作る

私的要約

人生とは、誤解との戦いである。
コミュニケーションについて書かれた本が多いのは、世の人々が自らの発言で生まれる誤解と戦っているからではないか、著者、藤井孝彦氏はこのように述べる。
誤解のきっかけは、私たちが発した言葉である。使った言葉の補足できる環境があれば、多くの人が分かり合える。発する前に精査することがとても大事であるが、一方で、言葉は道具である。その道具をどう使うか、誰が使うかが大切で、言葉の力だけに頼っていると、会話に旨味やコクがなくなってくる。そんな時に、誤解や摩擦が起きやすい。ほんの少し伝える準備をするだけで、少なくとも自分の周りの雰囲気は変えることができる。その雰囲気が各所で広がれば、批判や暴言を減らせるはずである。どんな言葉を、どんなふうに使うかで、私たちの印象はつくられる。発した言葉が私たちを作るのだ。そして、発する言葉は私たちの未来をも作る。否定的な言葉で希望を綴ることはできない。
日々の一言を大切にすることは、私たち自身を大切にすること。『伝える準備』は私たち自身を大切にすることに役立ち、未来を作っていくのだ。

教育×読書

言葉のプロである、藤井孝彦アナウンサーの著であるこの本は、作文練習や面接練習に大いに役立つ。
言葉の選び方の視点もさることながら、やはり作文であれば読み手に伝えることを考える、面接であれば、面接官に伝えることを考える、といった当たり前でありながら、自分の想いを発信することだけに力点を置きすぎているため『伝える相手』の存在に視点がいっていない生徒に対して気づきを与えるきっかけになるところが、さすが『聞き手』に『伝える』ことを意識しているプロであると実感する。
自分の想いを言葉にできない子が増えている中で、藤井氏の『5行日記』は、作文練習の1段階目としてそのまま利用できるのではないだろうか。
『5行日記のすすめ』
① 『見出し』をつけて、その日を象徴する出来事を書き入れておく。
② 限られた文字数で記録するために、言葉を言い換えてフィットする『ひと手間かかった言葉』を入れる。
③ いざ日記を書くときに思い出せない日常のささやかな出来事を、『何気ない一言』でメモに書き留めておく。
言葉は、短時間で身につくものではない。
私たちが当たり前のように日常で言葉を使えるのは、生まれてすぐ周りの大人たちの言葉を聞きおぼえ、何度も間違いながら繰り返し使ってきたからだ。つまり、知らず知らずのうちにずっと練習する環境があったということだ。発達段階に応じて周囲にいる人間との関係性などから言葉も成長していくが、よほど周りの環境が素晴らしくない限り、それだけだと凡庸な言葉遣いになってしまうのだろう。『5行日記』のように毎日意識的に練習することこそが、場や人にピッタリとフィットした言葉を綴れるようになる確実な道なのだろう。

私的感想

今週末、大学の推薦入試がピークなので、生徒の面接練習をする日々です。
生徒の面接練習をしていく中で、『質問の意図を考えなさい』『相手の気持ちを考えなさい』というのを幾度となく繰り返してきました。その過程の中で、私自身も『この子にフィットする伝え方は何だろう?』と考えながら練習をしてきました。
結局は、『相手のことを真剣に考えた言葉』というのが答えなのかもしれませんが、ボキャブラリーがなければ、真剣に考えた結果、フィットする言葉がなかった、ということにもなりかねないなと感じています。
私たち塾講師は、大げさではなく生徒の人生を預かっているのだと思います。
それは、志望校合格や点数アップなどの教務的な面ももちろんなのですが、私たちのかける言葉が生徒を育てていっているという人格形成の面からもそう思っています。
身近にいる大人の一人として、生徒の成長を促せる存在でありたい。そのためには、私たち自身がしっかりと『伝える準備』をすることが大事なのだと感じました。
『否定的な言葉で希望を綴ることはできない。』言葉のプロの言葉は響きますね。
私は、生徒の希望を綴れるような塾講師でありたいと改めて感じています。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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