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グレッグ・マギューン(高橋璃子訳)『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』

私的要約

本当に重要なものごとを見極めるために必要なことは5つ。じっくりと考える余裕、情報を集める時間、遊び心、十分な睡眠、そして何を選ぶかという厳密な基準だ。

エッセンシャル思考になるためには、3つの思い込みを克服しなければならない。『やらなくては』『どれも大事』『全部できる』これらにうっかり耳を傾けようものなら、不要な物事の海におぼれることになる。
エッセンシャル思考を身につけるためには、これら3つの嘘を捨て、3つの真実に置き換えなくてはならない。『やらなくては』ではなく、『やると決める』。『どれも大事』ではなく『大事なものはめったにない』。『全部できる』ではなく『何でもできるが全部はやらない』。この3つの真実が、私たちを混乱から救い出し、本当に大事なことを見極め、最高のパフォーマンスを発揮することが可能になる。
今の世の中は、『全部手に入れよう、全部やろう』という考え方がすみずみにまで浸透している欲ばりの時代と言える。最優先事項が複数個同列に並んでいる時代とも言える。しかし、最優先事項とは、他の何を差し置いてもいちばんにやるべきことであるはずであって、『全部手に入れよう、全部やろう』とするうちに、私たちは知らず知らず何かを失っている。
『このタスクは、自分が今やれることの中でいちばん重要か?』この自問を繰り返し、『良くすることは、何かを削ること』『不要な細部は冷徹に切り捨てること』に徹していくことこそが余剰を削り、本質を取り出すエッセンシャル思考である。そして、本当に重要なものごとを見極めるために必要なことは5つある。
①じっくりと考える余裕をもつこと
②情報を集める時間をもつこと
③遊び心をもつこと
④十分な睡眠をとること
⑤何を選ぶかという厳密な基準を自分の中に持つこと
慣れ親しんだやり方に打ち克ち、これら5つからエッセンシャル思考のコアとなる考え方を身につけたとき、エッセンシャル思考のやり方は第二の本能のようにしっくりと体になじむことだろう。

教育×読書

エッセンシャル思考は、教育現場に転用しづらいテーマなのかもしれない。
国公立大学に進みたいのであれば、5教科の力を満遍なく伸ばしていかなければならないのは事実である。これは一見、『どれも大事』『全部できる』の非エッセンシャル思考のように思える。逆に私立大学では理系科目や文系科目に特化した力を伸ばしていけば良いため、一見エッセンシャル思考のように思える。しかし、この考え方はエッセンシャルではないと思う。
教育に関する取捨選択は、科目に優劣をつけることではない。(もちろん学習方針に関する濃淡は合ってもよいが。) それは、勉強の内容というのは教科や科目で区切り切れない複雑さで絡み合っているからだ。例えば、読み・書き・計算はすべての学習の土台である。これらの力は、教科としては国語と算数だが、これらの力がなければ当然理科や社会の学習など成り立たない。中学や高校で習う高等分野も同様に、他教科に及ぼす影響もあるため、学習教科を切り捨てれば良いという話ではない。
教育に関するエッセンシャル思考について5要素で考えるならば、
①じっくりと進路に関して(将来に関して)考える余裕を持つこと
②進路に関してや学習の計画などに対する情報を集める時間を持つこと
③勉強に対しても遊び心を持ち、楽しみながら学習していくこと
④十分な睡眠をとり、学習効率をしっかりと上げること
⑤今の自分には何の力が必要か、どうすればその力がつくかという厳密な基準を自分の中に作ること
であろう。そして、私たち塾講師がこれらの中で生徒に対して手伝える部分は、②③⑤である。私たちと様々な生徒たちの関わりの中で生まれてくる体験や知識をもとに作られていくメソッドを新たな生徒に還元していくことこそが、塾講師に求められていることであろう。

私的感想

自分の生き方、生徒との関わり方、そしてリーダーシップの取り方など、様々な点において『成果』と『時間』の関係性に焦点を当てた考え方を学べた一冊です。
エッセンシャル(essential)とは、『欠くことのできない、必須の、非常に重要な、本質の、本質的な』という意味の言葉です。ここ数年、私はものごとの中にある『本質』を考えることを大事にしながら様々なことを考え、取り組むことを大切にしていたので、素敵な本との出会いに感謝したいと思います。
書の中で最も驚いたのは、1日の徹夜や1週間の4~5時間睡眠によって『血中アルコール濃度0.1%分に相当する機能低下が起こる』とされているということです。私の睡眠時間は5時間以下なので、基本酒気帯びで集中力散漫な状態で日々を過ごしていたのかと思うと、改めて睡眠の質や量については考え直したいと思いました。
エッセンシャルな思考の下に、日々を過ごしていきたいですね。

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